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真赤なアスタラビスタ  作者: 面映唯
【枝分かれした結びめ】
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 そんな一件があり、今に至る。明日香と紗江、首藤の三人は、裕子の差し金だった。ファミレスで会って以来というものの、音信不通だったのだが、数日前に事を見透かしたかのように「未明(みめい)(じま)に行くんでしょ?」と連絡があり、続けて「明日香も連れてきな。あのままじゃ後味悪いでしょ?」と、これまた事情と私の性格を知っているかのようなメールが届き、画面の文面からその口ぶりが伝わってきた。


 相澤と桑原、明日香、そして美菜と私の五人で行くはずで、そのつもりだったのに、今朝、


「あ、言い忘れてたけど紗江と新平君も連れてくから~」


 と明日香からメールが来た。


 そのメールから、まだ怒っているんだな、ということがよくよくわかった。


 謝ろう、でも少し楽しくなりそう、え明日香が来るのか、紗江も? 首藤も? そんな風に計画がかわるがわる変化していったので、私の心は休む間もなかった。というか、よく首藤来たな。断るだろう、普通。


 こんな大勢で遠出するなんて。みんなが皆、等しく親交がある訳ではないので、バスツアーとでも解釈していればさほどおかしくも思えないのだが、元々の果たしたい目的を明確にさせたとき、どうもなんか違うように思えてならない。私は遊びに行くのではない。なのに裕子はそれを促した。


 私のことを心配していたのではなく、実はまだ私に対して怒っていて、どうにでもなってしまえとキャスティングしたのか。


 でも、一番気にかけているはずの千紘の怒りを誘うようなこと、させるだろうか。


 そもそも、本当にこの島に千紘がいるのだろうか。未明島。沖縄のもっと下。沖縄から船で二時間近くかかる孤島。人口千人未満。こんな島。旅行とは到底言い難い。


 しかしさることながら、奇しくも未明島唯一の小学校で、ちょうど夏休みのイベントがあるようだった。そのイベントが、一応島活性化のためにと本州の人間たちの参加も可能にしている催し物だった。実際は、船に揺られながらこの島にたどり着く人間は、数えるほどもいない。見る限りでは我々だけの様だった。


「イベントってオリエンテーリングなんでしょ? 中学以来だ。なんか楽しみ」


 美菜はそう言った。


 波風に揺れる美菜の髪。その間から顔を出した真っ白いおでこ、整った厚めの眉。鼻の出っ張り、唇の膨らみ。顎の高さ、ほのかな頬の色。


 私は何をしにこの島に行こうとしているのだ。


 不器用なのだ。次から次へと視界に入るものを思考回路によって美化される。いつも思う。考えるのは一つだけにさせてくれ。



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