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灰色のアスファルトを燦燦と太陽が照らし始め、外に出るのが億劫になってから少しが過ぎた頃、私たちは連絡船に乗っていた。フェリーに乗ったことはあったが、小さな漁船と言ってもいいだろうこの船には、当然乗ったことがない。こんなに揺れるなんて。吐き気がした。
潮風は肌に優しく、太陽の日差しは私に冷たい。波打つ水面がキラキラと光っているも、日差しが強すぎて趣がない。かといって他に眺めるところは見当たらない。変わらず波は立つし、風景も遠くに見える地平線と水平線。しょうがなく四方に広がる海面と地平線を眺めていた。
「こんなに人数が増えるなんてねー。ちょっと賑やかすぎない?」
船の淵に肘をついていた私の隣に近づいて来たのは、美菜だった。
増田さんの下の名前。増田美菜。それが彼女の名前だった。
あの一件から、私と美菜は学校でもちょくちょく話すような間柄になっていた。本心は突かずとも、どこかでそのことに対してわかりあっている。実際はおそらく私の机上の空論に過ぎないのだが、偽造とも正常とも呼べそうなそんな関係性を肌で感じ、好んだ私は良好な親交を深め、良質な関係性、いわゆる恋人という形を保っていた。
「そ、そうかな?」と私は答える。
事実、賑やかすぎた。
相澤と桑原は、相変わらず仲がよさそうだった。
明日香と紗江、そしてその前方で首藤が腕組みをして甲板に座っているなんて。
どうしてこうなったのか。