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真赤なアスタラビスタ  作者: 面映唯
【思い違いと同情】
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 ファミレス内は、家族連れや白髪の男性、薄い短髪の女性たちで賑わっていた。子どもの声や雑談が、ファミレス内の雰囲気を作っていた。


 裕子はまだ来ていないようだった。前髪を横に(まと)めたウェイトレスに待ち合わせの主を伝え、私は何も注文せずに待っていた。


 程なくして裕子は現れる。窓側の席に座っていた私は、会計のある入口に目を光らせていたのですぐにわかった。顔に見覚えはない。だが、ウェイトレスに何か話す姿とウェイトレスが私の方を手で刺していたので、すぐにわかった。


 こちらに向かって歩いてくる。ベージュのコートの下は灰色のニット。身体の輪郭がくっきりとしていて、ウェストの細さと胸の膨らみが理解できた。ワイドパンツで脚が長く見えるのも然り。高校卒業から二、三年過ぎたが、人は成長するみたいで。


「久しぶりだね。私のこと覚えてる?」


 外装と隔たって、髪型は地味なものだった。サラサラに照明を反射させる黒さでもなく、整髪料で丸みを帯びる訳でもなく、少しふっくらとした癖毛を窺えるミディアムヘアーだった。


「ごめん。正直顔はちょっと……」


「まあそうだよね。あんまり話さなかったし」


 逡巡するが、私が彼女と話した記憶は一つたりとも見当たらなかった。



 とりあえず何か頼もうか、お昼は食べた? そんな言葉につられて彼女はたらこのパスタとコーヒー、私はありきたりなキャベツのサラダを注文した。


「え、それだけでいいの? お昼食べてないんでしょ?」


 そう聞く裕子に、私は「最近食欲がないんだよね」と答えてしまった。食欲がないのは今だけであったのに。


 想像していたのとは少し違う雰囲気だった。裕子自身のことは全く知らないが、高校時代に千紘とよく一緒にいたということは知っていたので、絡みやすい人柄ではないのかなとなんとなく思っていたが、事変わる。


 千紘ほど温厚で人柄がよく、絡みやすい人は高校時代にいなかった。誰にでも声をかけることができ、自己主張が強いことには変わりないが、それでも人望が強かった。顔が広かった。廊下で彼女が私の知らない人と話しているのを見かけるたびに、そう思った記憶がある。「あ、この人とも知り合いなんだ」「え、全然性格違くない?」と感心したり訝しんだり。軽音部の強面の男子や、目が隠れてしまって前が見えているのか定かではない男子、一歩間違えばギャルでもおかしくない化粧の濃い女子や、敷居が高そうな誰もが認める美少女とも話しているのを見かけた。


 第三者の目から見ても、誰にでも等しく接することができていた。


 今思えば、それが千紘の長所であり、千紘だったのだと思う。私は、つまらない表層に騙されていた。


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