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「え? 何言ってんの。これからご飯一緒に食べに行くんだよ? そのために来たんだから」
目をまん丸くして口角を上げてにんまり。隣の紗江は相変わらず惰性の苦笑い。首藤もちょっとびっくりしたようで言葉を失っている。
「中学の皆で集まらないの?」と私は聞いた。
「だって中学の友達あんまり面白くなさそうだし、話したいことはさっき全部話しちゃったからー、別にいいんじゃないかって思って」
「嫌でもそっちの集まりに行けよ。俺はこれ吸ったら帰る」
「やだー。新平照れてるのー? こんなかわいい二人だから? 正直じゃないなー」
そう明日香が言っても今度は、新平もそっぽを向いて煙を吐くだけだった。
「武田君は?」
いきなり話をふられ、どきっとした。紗江が私を呼んだ。私の名を呼んだ。あの紗江からだ。あの高校で崇められていたおしとやかな紗江も乗り気だったのかと驚く。
「首藤が行くならついていこうかな。一人だとなんか……ね」
だってよ、と明日香が首藤の肩を叩いた。たまらず、いてっ、と声が漏れる。「私たち車で来てるから一緒に乗ってこうよ。どうせ車で来てないんでしょ?」
なぜそれを知っている? と突っ込みたかったがなんとなく見透かされているような気がした。怖い怖い。首藤と目を合わせて二人で小さく手を広げたのは笑った。その程度の笑いで私はこの後長く続くであろう時間を、三人の他人と過ごそうなんて思ってしまうのだから、未来というものはしたたか恐ろしい。もっと恐ろしいのは、考えを改めてしまう自分自身と、そんな事をふっかけてきた彼女ら人間なのである。