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真赤なアスタラビスタ  作者: 面映唯
【変わってゆくのはいつも風景】
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式の終盤にさしかかるとだんだんと人が外へ出ていき、ロータリーはまた人で溢れかえる。「写真なんかいらねえ」と吐き捨ててゴミクチャになった室内を出ようとした私だったが、「全体写真ぐらい取って行けよ」「奏ちゃんと一緒に映りたーい」と二人が言うので、そこはかとなくそれに応じた。


中学ごとに集まるこの成人式では、当然全体写真と言っても、その中学全体で撮ることになる。ステージに乗って撮るのだが、その撮っている間にも下のアリーナには人がうじゃうじゃいる。ぶっちゃけライブみたいにうるさい。あちこちからシャッター音と黄色い声が聞こえてくる。早く抜け出したい一心にさせられる。


当然高校の同級生の芦沢と朝田とは一緒の写真には写れない。それを知っていて朝田は私に写真に映れと言ったのか。終わってしまえばどうでもいいこととなった。


五つぐらいの中学が集まる中で、最初に全体写真を撮り終えた私の中学。私はそのまま外に出た。


全体写真を撮り終われば一応式はすべて終わりで、この後数時間後にホテルやら焼肉やらでの食事が始まるが、一、二時間は、この創芸館で青春時代を共にした顔見知りや友人たちとの会話でいささか、大いに盛り上る。


私には高校時代の友人で、一人気の合う人がいた。一方通行だったとしても今は誰でもよかった。その男にラインを送り、私は一人灰皿へと向かった。


ちょうど二面あるテニスコートが視界に入るくらいの位置にあった。来るときに会った女の子もそこでひたすら白球を追いかけてはラケットを振り、また走っては振り、とそれを繰り返していた。コートの隅は灰がかったごつい雪で覆われ、そこかしこにその山が散らばっている。よく考えれば今は冬だ。そんなことも忘れていたのか?


 微風並みの微風が鼻をかすめる。全身の気孔が膨れ上がったように感じる。こういうときに限って風が吹くのは何か意味があるのだろうか。


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