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真赤なアスタラビスタ  作者: 面映唯
【溶けてゆく雪】
38/128

殺人未遂。未遂で終わる。共謀罪。溢れ返っている。


ベビーの死体がコインロッカーに入れられているということがあるらしく、その異臭から鉄道職員が確認に入ったのだという。開けてみれば、ばらばらになった死体、そのままうずくまるようにして息絶えていた死体、いずれも外傷はない。鉄道職員にとってみれば、見慣れたものだろう。見慣れたものだろう、見慣れたものだろう。感じ慣れたことだろう。感じ慣れたことだろう、感じ慣れたことだろう。


見慣れる訳がない。非情が身につく訳がない。理性に決まっているだろう。


鉄道職員には見つかって欲しくなかった。母親に見つけて欲しい。そう赤子は訳もわからず頬を目を唇を、真赤にして泣き喚くのだ。



子育てのしにくい国。巷ではそう呼んでいるところもあるみたいだ。そんなことを聞いてしまえば、子育てなんて誰もしたくなくなるのが通常だが、私のこのときの考えは違う。


「もっと余裕があればな」


画面越しにそう呟いてみる。


だとしても逡巡してしまう。自分がもし仮に子育てするかしないかと問われたとしたら、九割方しない方へ傾いているのだが、残りの一割が捨てきれないでいる。パソコンに向かって言い訳染みた独り言をぶつぶつと呟くのだが、人生そんなものだったり、と人工知能が今後対応してくれそうだなと感じた。


興味のあることにはそれなりに追求して好奇心と欲を満たす方なのだが、この記事に関しては、掘り下げて追究するほど私の好奇心は揺すられなかった。実際、非情な無責任な行動に自分が嵌入(かんにゅう)できるくらい悲しむことはできる。大げさに言ってしまえばそんなことは簡単で、知った気にならいくらでもなれる。反感を買うかもしれないが、正直言うと、そうなってしまう自分を見ていられないもうひとりの自分が、どこかでひっそりと端の方に潜んでいたりする。


中途半端にことを放棄した私は、地べたに引かれた布団の上へと倒れる。溜息が出る。


「何やってるんだろう」


息をして、飯を食べて、偽造の女と付き合って、金をもらって、それを生活の足しにして生きている。


それに間違いはない。だがそういう意味で呟いた訳ではないだろう。明確な行先もないまま、不確定な、好奇心とは到底呼べない浅はかな暇つぶし。それに時間を費やしすぎて、自分のいる地点を凝視しすぎている。


私は気にしすぎている。気にしていないと装っている。異常な心配性。そうではないと装っている。このままで、数年前の顔見知りや知人たちは私のことをどんな目で見てくれるだろう?


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