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「悪いな、待たせちまって」
「ええ、でもまあ、いつもお世話になってるのでこういうこともたまにはあって当然かと」
相変わらずのサングラスとガタイのいい身体にタンクトップ姿だった。初めて見たら野郎に見えるかもしれない。
「その後ろの子、可愛いな」とにんまり。柔らかい口調は下心を隠すのには打って付けなので、とても野郎にだなんて見えない。近所のおじさん。
私の後ろに隠れていた増田さんは、横に出るようにお辞儀をする。
「お前本当に連れてきたのな。初めて会ったときはひよっこみたいに怯えてたのにもう女を手懐けるスキルを身につけたんだな。感心感心」
「不謹慎ですね」と私が言うと彼女は「あの、私は何をすれば……」とボスに尋ねたので、私とボスの会話はそこで途切れる。
「お、おうそうだな。とりあえずそこの机で書いてもらいたいことがあるんで……」そう言って二人は奥のテーブルへと場所を移した。