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「増田ちゃん? 武田ってあんな子のこと好きなの?」と相澤。
「まあ武田にはお似合いかもね」と桑原。
「まあまあ、とりあえず声のボリューム下げようよ、ここ人いっぱいいるし」と、私は宥める。
学食には人だかりができていた。入ったとたんに香る匂いが、ここは学食だと言っている。かつ丼ラーメンうどんカレーの匂いが混ざると体臭と化すみたいだ。そんなことは一年も大学に居れば嫌でもわかることなので、あらかじめテラスに置かれているアルミ製の机と椅子を確保しておく。今日は、二限に講義のなかった桑原がこの場所を確保してくれたみたいだった。
「で、珍しいね、武田ちゃんと一緒に飯を喰らうなんて。もう卒業まで無いかと思ってたよー。俺たちはこんなにも武田のことを愛してるっていうのに、君は全然振り向いてくれないんだからー」と桑原が笑いながら言う。
「でもほんと久しぶりよねー。入学してからは結構この三人で行動してたのに。最近講義が一緒じゃなくなったせいか、あんまり会わなくなったし」とスカートを気にする相澤。
「そうそう。武田が勝手に一人で決めちゃうからさ」
「それはごめんて」