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真赤なアスタラビスタ  作者: 面映唯
【私の幻】
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非日常体験は、臨機応変に対応しづらくなる。事がうまく運びすぎると逆にあとはそこへと落ちるだけなので怖くなる、とスポーツ選手が言っていたのを聞いたことを思い出すが、偶然と偶然が重なってしまうと、私は逆にそれを必然なのだと感じてしまう。増田さんが彼氏に振られた次の日に、私はたまたま「この後暇ですか?」と口を滑らせて彼女とここにいる。運命、とまでは言えなくとも、非日常的な高揚感と二次元ではない、目の前で起きているという現実感、リアルにとても自分を抑えられるような人間ではない私。


 冷静になれ。昔は言葉を選んでコミュニケーションを取っていたが、今ではもうそんなことはない。言葉を投げかけられてから数秒あくその時間に私が見つめている目線が、「睨んでいて怖い」と言われたあの日から、私は言葉のコミュニケーションに置いて、視覚に価値を置くことにした。頷いたり、視線を目ではなく少しずらしたりと。


元々、間髪を入れずに返答して会話することはできていた。それをそうさせなくしていたのは、どこかの誰かさんの「言葉は選びましょう」という言葉を鵜呑みにして感化されていたからだった。社会を軽視している今、もうそんなものは必要なくなった。


バイトの男性が真っ白なコーヒーカップを運んでくる。決まり文句を流暢に並べ、表情豊かにお辞儀して去って行く。


私たちは、運ばれてきたものをそれぞれ啜る。


「ほんとはさー、彼のことが好きだったかもよくわかんなかったんだけど、いなくなってみたらそれはそれで悲しいっていうか。でも寂しいってことは好きだったってことかもしれないじゃん?」


「それは……」


人間特有の感情に促されてんだろ、とは言えず、飲み込んだ。飲み込めるんだ?


「ん?」


話が途切れたせいか、彼女が怪訝そうに窺って来たので即座に反応する。


「それはさ、やっぱり今まで彼のことを大事に思ってきた裏返しなんじゃない? それか、自己嫌悪が強いとか優しすぎるとか……?」


たどたどしくも臨機応変に対応できたことには満足感がある。この頭の片隅にある違和感に手を出して掘り下げるとしたら、満足は不満へと逆転。


「大丈夫とかって言ってくれないの?」


 彼女は俯いた。


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