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ホテルを出ると、薄い青空が閑散としたホテル街にはもったいないくらいの隙間を埋めていた。この辺りはまだ人波がなく、まばらであった。
「タクシー乗ってきなよ。金出すし。疲れてるでしょ?」
私がそう言うと、彼女は優しい顔でうんと頷いた。
気まずさはないのに、彼女と早く離れたかった。一緒にいた時間が長すぎた。人間になってしまう。耐性がついてしまう。抗体ができてしまう。新しい自分になってしまう。
適当に歩きながら、見つけたタクシーを拾う。
「ありがとね」
「うん、また」
彼女は乗用車みたいなタクシーには見えない車に連れ去られたようだった。ウーバーか、って。