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真赤なアスタラビスタ  作者: 面映唯
【エピローグ】
127/128

 私は叫ばずとも、運よく自分の中の一つの苦しみから抜け出すことができた。頭の中を満たしていた不都合が消えた。良くも悪くも運だった。だから、昼間からホテルに行ってセックスするしか愛情表現がなかったような、愛を知らず、誰のことも信じられない人間はもう辞めているのかもしれない。


 だけど。


 苦しみが晴れた何かが変わった世界にも、いつか自分で思ったように不都合はちゃんとあったのだ。


 たとえ人生の選択をやり直したとしても、それはまた別の後悔を生む。悲しんでいた人間を笑顔にすることができても、今度は今まで笑顔だった人間を悲しませてしまうような気がするのだ。私も含めて。


 皆が笑顔だったあの頃。昔のことをよく思い出す。目に見えない人を想像することでしか感じられなかったあの頃。知ってしまった今。現実に不都合を感じると、あの頃はよかったなと懐かしむのだ。人間、昔話を酒でも飲みながら話すときは、気分がいいものだ。明日香も紗江も相澤も首藤も桑原も。裕子もボスも。そして美菜も千紘も。


 千紘に限っては最近よく同じ夢を見る。この間久々にお誘いのメールが届いて浮かれているからだろうか。整形はやっぱりお金がかかるようで、忙しい合間を縫って自分と会おうとしてくれている。単純に嬉しかった。『嬉しい』と言えるようになった。


 その最近よく見る同じ夢は、成人式の日の夜に見たあの夢だ。私の消したかった忌まわしき記憶である。だがその夢は、あの頃見たものよりもうちょっと続きがあるのだ。


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