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真赤なアスタラビスタ  作者: 面映唯
【隠したくて隠したんじゃない】
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 そんな幼少期に私は戻れない。だが、落としてきた忘れ物を拾うことはできそうだった。少しずつ進んできた道を戻り、拾って、拾い集めてまた確かなものを身に着けていく。


 ミナトと話して初めて変わってみようと思った。今までは変われればいいな程度で、いつの間にか弱い自分を認め始めていた。


 そんな自分に嫌気がさす訳ではないが、もっと変わってみようと。ミナトは変わった。私を捨てた。好きな人を、芸能人のような憧れに成り下げた。


 私は小学生がスポーツ選手に憧れるのと同じように、自分を変えてみようと思った。二十代でピアノを始めた日本のロックスターの曲を聞き漁った。


 そんな矢先だった。




 私は自分を信じてみようと思ったのだ。だから、あの未明島にいる三好飛鳥という女性を、整形した千紘だと信じてみようと思ったのだ。


 正面から聞いてみたかった。回りくどく遠回しに聞くのではなく、「千紘だよね?」とその一言を言ってみたかった。


 夏休みもまだ後半に差し掛かっていない。私はまたあの漁船に長い間揺られることとなった。私は幼少時代に戻ったかのように興奮を抑えきれなかった。千紘どんな顔するかな、なんて言うかな、とポジティブな妄想ばかりに時間を費やし、この間より船に乗っている時間は長く感じられなかった。船酔いすらしない。


 島に船が近づくと、人影が見えた。薄くぼんやりと立つ姿。近づくに連れて輪郭がはっきりとして、それが八巻さんだということがわかった。私は役所に行って三好を呼び出して驚かそうと思っていただけに、邪魔が入ったと一瞬思うが、別にプランが変更しただけだと、すぐにしゃんとする。


 船が陸に寄る。降りる。


「八巻さん、また来ちゃいました。それで千紘、あ、いや、三好さんは……」


「それがなあ……」


 やけに虚ろな表情だった。何かあったのかと思い聞いてみると、「ちょっと案内するね」とだけ言われて島のどこかへと連れていかれることになった。その道のりは、数回通っただけだというのにはっきりと覚えていた。先日来たときの宿までの道のりだった。


「本当はこちらからお招きしようと思っていたんですけど、武田さんの方から出向いてくれるって言うんで……」


 なぜお招きする必要がある? と真っ先に思った。心がモヤモヤしたまま宿につくのだった。


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