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真赤なアスタラビスタ  作者: 面映唯
【不純と謳われる所以】
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いつの間にか二人で眠ってしまったようで、目が覚めたときには隣でミナトが寝息を立てていた。カーテンからは薄い朝の日差しが射していた。起こさないようにと注意を払いながらベッドを出たつもりだったが、床に足を付いた拍子にどうやら起こしてしまった様だった。


「……どこか行くの?」とミナトは半開きの瞼で上半身を起こした。膨らんだ髪の毛を、手ぐしで整えている。


「どこにもいかないよ。心配しないで」


本当はこのまま家に帰ろうかとも一瞬頭を過ったが、彼女を見ていたらそんな思考は消えていた。これぞ正に潜在意識とでも言おうか。と思ったりもするのだが、それはいい格好したいだけの良い訳で、単純に今の彼女から離れたくないと私自身が拒んだだけだろう。それほど視覚からのミナトの情報は私の内面に届いたようだった。離れたくないと思わせられるのだ。


「じゃあ一緒に寝てようよ」とここに来なよとでも言うようにミナトは布団を開けて私を呼んだ。立ち尽くしていた私は、迷うことなく彼女の懐に入って布団がかぶさる。


半開きの瞼で微笑むミナトは、本物だった。

愛を確かめ合うかのように唇を寄せた。


「へへ。またキスしちゃった」


そう言って彼女は私を抱きしめるのであった。


心臓の音。肌の触れ合い。感触。髪の毛から仄かに香るシャンプーの匂い。間近に見える頬、瞳、鼻、口。じっくり見ても、昔みたいに「鼻の形が惜しいな」とか「目がちっちゃい」なんて初対面で他人の外見を見定めるようなことは思わなくなっていた。


「もうちょっとしたら学校行かなきゃ。今日月曜日だし。ミナトも仕事あるでしょ?」


「あんなとこ行きたくない。ずっとソウタと一緒に居たい」


すでに大分肌が触れ合っているにもかかわらず、ミナトはより身体を縮こまらせて私を寄せ付けた。頬を擦りつけてくる。嫌悪感はない。寧ろ、多分恋しい。


「ずっとこのままでいるのが幸せなのかな?」


「私は幸せだよ」


「胸張って言えるってかっこいいな」


疑似であることを忘れられるくらいに。素性を知らない誰かと一緒にいることに目を塞げるくらいに。


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