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真赤なアスタラビスタ  作者: 面映唯
【泡沫汀の集合体、火花】
101/128

「裏門……で……」


 裏門で、確か私は声をかけた。黒い肩が張ったスーツを着た首藤の後姿。私の声で振り返る。いや、確かあのときは……。


「捨てたはずの二人がいた」


 首藤はそう言った。


「捨てたはずの……俺が自分の関係から切り離したはずの千紘と武田がいた。笑いながらこっちに手ぇ振ってやがった。なんだこいつらって思ったよ。そう思ったらさ、泣けてきて、」


「俺と千紘が抱きしめてやったんだ」


 私は、首藤の言葉を遮って思い出した過去を言った。あの日、私と千紘は首藤のことを探し回った。私は小学校からの付き合いだった人と話していたのだが、そこに千紘が来て「首藤くん探しに行こう」と言った。黒い父兄の間をかき分けながら探したのだ。誰もいない体育館。家庭科室。中庭。視聴覚室。そしてもう帰っちゃったのかなと私が溢したせいで、「裏門かも」と千紘は思い至ったみたいだった。校門昇降口付近は部活動に入っていた生徒たちで賑わってしまう。首藤は部活をやっていなかった。


 そして案の定そこに帰る間際の首藤がいた。


「ああそうだったな」と首藤は言った。「お前らがいつの間にか仲直りしてたこともうれしかった記憶がある」


 そうなのだ。あの日、夏休みの補習のときに喧嘩してからずっと話すことがなかった千紘と、卒業式では普通に話しているのだ。まあおそらく彼女は私のことは嫌いだが、首藤のためにと思ってのことだろうが。


「首藤は知ってたの?」


「何が?」


「俺と千紘が喧嘩したこと」


「詳細は知らないが、喧嘩したとは聞いたな」


 千紘は首藤に相談したのだろう。若しくは報告程度。


 私は、「懐かしいな。今でも千紘と連絡とってるの?」と聞いた。すると首藤は「ああ」と答える。それを聞いて私は躊躇わずに、「三好飛鳥ってなんか千紘に似てない?」と聞いた。「ああ似てるな」と首藤は言った。


「整形したのかな?」


 私が言うと、躊躇わずに「そうかもな」と首藤は言った。


「いやいや、返事適当過ぎない?」


「俺はさ、千紘と首藤は仲直りしたんだと思ったんだよ。卒業式のあの日、確かにそう思った。でも全然違ったな。連絡先こそ知っているが、あいつはあの後突然いなくなった」


 えっ、と私は言葉に詰まった。話の流れ雰囲気で納得しつつあった要点は、まだ解決していなかった。


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