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優しい人間が馬鹿を見る世界。狡猾な人間がポジティブに生き残る。
それでも私は、優しい人間になりたいと思った。
どうか抱きしめて欲しい。その真赤な唇で。あなたにもあったのだ。真赤な唇が。それを見つけてはっきりする。
私は信じてみようと思った。私は好きになろうと思った。自分のことを。ナルシストだ、気持ち悪いと誰かに揶揄され嘲笑われたら、今度はそいつのことをナルシストにしてみたいと思う。
自己顕示欲で溢れて零れるくらいの世界に。
ボーンディスウェイ。彼女は今日もそう歌っている。そうやってどこかの誰かも、夕暮れ間近の薄月のように、透き通ってしまうくらいの日常を生きている。