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少年と悪魔の天使狩り  作者: ぐーてん
第2章 悪魔崇拝者と天使信仰者
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双神殺しの槍

 ルシエルと共に部屋へ入ったキョウヤが目にしたのは血を流して床に倒れたまま動く気配の無い子供達とメローネの姿だった。



 何があったのか?

 どうなっているのか?



 混乱する思考を遮るようにして聞こえてきたのは、この世界に来て2度目となる天使たちによる汚らしい会話。

 それを聞いてようやく理解した。



 みんな死んでいる。

 そしてメローネも時間の問題であると。

 目の前の惨状に対して思ったことはただ1つ。



 あいつらを全員殺そう。



 ただそれだけだった。



 頭上で天使たちが話してる内容に最早驚きを感じることもない。

 天使とはそういう存在なのだ。



 ゲスな笑いを浮かべながら妹を連れて行った天使。

 事故を装って子供を殺そうとした天使。

 そして、自分たちを信じて信仰してきた人間を蔑ろにした挙句、子供を殺した黒幕である天使。




 いつだって幸せになりたいと願う人間ばかりがこんな目に合う。

 周りに迷惑を掛けないように配慮すればするほど、幸せは逃げて行く。



 追いかけて来るのはそんな自分たちを利用しようとする、不幸ばかり。



 信じる者は救われない。

 神なんて存在しない。

 それがこの世界の真実だ。



 なら、どうする?

 それが真実だとして自分に何が出来る?

 そんな世界すら変えてやる英雄にでもなるか?

 それが無理なら不平等の中で生きる子供を助けるヒーローにでも?



 馬鹿馬鹿しい。

 今の自分の心が求めているのはそういう、”良い話”じゃない。



 正直になろう。

 自分の心に。

 感情に。



 ただ、目の前で馬鹿笑いする憎い存在を殺したいだけだと。



 泣いて喚く姿が見たい。

 自分のした行いを懺悔して許しを請わせたい。

 あの子達が受けた不幸以上のものを突きつけて後悔させてやりたい。

 最大級の苦痛を味あわせて、その上で殺す。



 それが、今の自分が求めいる本当の欲求だ。



 抗う必要は?

 当然ない。

 我慢する必要性を感じない。



 自分がいつもの自分じゃないなんてことはわかってる。

 けどしょうがないだろ。

 理性を押し退けて振り切った針を、元に戻す気が、自分自身に無いのだから。


 許せないなら殺せ。

 2度と同じことを繰り返させないためにも。



 自分たちの存在が尊いものだと勘違いした馬鹿に。

 そしてその馬鹿を信仰して間違った道に進む、それ以上の馬鹿に。



 自分の受けた怒りと憎悪をぶつけてやれ。

 例えそれが、”悪い話”だとしても、そんなことは知ったこっちゃ無い。



 そうしたいからそうする。

 欲求のままに生きる獣のように、ただ力を振り回せばいい。

 少なくとも自分には、今の世界に納得がいかないと主張するだけの暴れ回る力があるのだから。







 キョウヤは掌に闇の扉を作ると、アダマスを呼び出そうとした。

 渦巻く闇はいつも以上に深く黒い色をしている。

 しかしキョウヤはアダマスの名前を口にしようとしたが、そこでふとある事を思い付いた。



 何も自分が奴らをぶちのめす必要はない。

 自分が求めていること、もしくはそれ以上の欲求が満たされればそれでいいのだ。



 そしてそれを叶えてくれる最適な存在がすぐ近くにいるではないか。

 実際に天使を圧倒的な力で打ちのめしてみせた少女の姿をした残虐非道な悪魔が。



 ルシエルに頼めばすぐさまそれを実行に移してくれるだろう。


 より確実に。

 より残酷に。






 キョウヤは唇の端を不気味に吊り上げると刻印を通してルシエルを呼んだ。


『ルシエル』


『私がやって構わんのか?』


 間髪入れず返ってきたルシエルの声。

 刻印を通してキョウヤの気持ちが伝わっていたのか、その言葉1つで全て察してくれていることがキョウヤにもわかった。



 理解の早い相棒にキョウヤは自然と笑みを浮かべていた。

 ただし、いつも以上に気味の悪いものだったが。


『出来るか?』


『愚問だな。契約者エニシはただ私に命じればいい。そうすれば、私が契約した悪魔として、契約者エニシの欲望を叶えてやる』


(イリノ)のこと以外でお前と契約してたことを嬉しく思うことがあるなんてな』


契約者エニシもようやく悪魔の良さに気付いたようでなによりだ』


 キョウヤは冗談めかしたルシエルの口調に、不敵な笑みで答えると早速、契約者として従える悪魔へ命令を下した。


「ルシエル、めいだ。上にいるゴミ全部、1つ残らず地獄に叩き落とせ」














 キョウヤの胸の刻印が赤黒い輝きを放つと、ルシエルの瞳が同じく赤黒く光始める。

 ルシエルは自身を黒い霧のようなものへ変えると、渦を巻きながらキョウヤの体を覆った。



 やがて霧が晴れて黒い炎がキョウヤを包み込むと、その中から現れたのはルシエル。



 全身を夜で纏ったかのような黒一色の黒衣。

 背中で揺れる翼は天使とは対となる漆黒の羽。

 闇を裂いたかのように伸びる黒髪は見ているだけで飲み込まれそうになる。

 瞳が血色に染まると、ルシエルの頬に赤みが増して行く。




「ふぅ、いい匂いだ」


 愛らしい小さな鼻をヒクリとさせるルシエル。


「肌で感じる血の香りと絶望の感情。嘲笑と失望。一瞬で私の気持ちを最高潮にしてくれる、お気に入りのシチュエーションだ」



 ルシエルの独り言にようやく天使の1人がその存在に気付く。

 徐々にどよめき始める天使たち。


「お、おい! あれを見ろ!」


「あ?何だよ?」


「何だじゃない!悪魔だよ!!」


「うわ!マジじゃん!」


「へぇ、最近は人間たちのおかげで数も減ったはずなのに、まだしぶとく生きてる奴がいたんだな」


「ん?あれってまずくないか?」


「何がだ?」


「完全憑依じゃね?」


「なんだそれ?」


「何で知らないんだよ!魂に憑依するやつだよ!」


「それってそんなにヤバいのか?」


「悪魔が完全に現世に干渉できるんだぞ!どう考えてもマズイだろ!!」


「え、でもそれって簡単には出来ないはずじゃ?」


「それをやってのけてるんだから、マズイって言ってんだよ!」


「じゃあ逃げるのか?」


「悪魔に背を向けるなんて俺は反対」


「そうだぜ。恥を知れよ恥を」


「なんでそんなに余裕ぶっこいてるんだよ!完全憑依した悪魔がどれだけヤバいか知らないのか!?」


「知らねぇよ。だいたい本当に完全憑依なのか?ただの肉体憑依の間違いだろ?」


「そうだそうだ。お前悪魔に対してビビりすぎな」


「情けねえなぁ」


「ああそうか。だったら俺は先にトンズラさせてもらうぜ」


「何だよ魂はいらねぇのか?」


「消されるよりかはマジだ」



 1人天井をすり抜けていく天使。

 それをじっと見ていたルシエルは呆れたようにため息を吐いた。


「やれやれ。私を前にして逃げられると思うなよ」


 ルシエルは天使を見据えたまま、気怠そうにじゅを唱え始める。


「我が名はルシエル。幾万の十字架を貫きし罪深き咎よ。千の血肉を捧げし我の望みを叶えたまえ」


 目の前に現れたのはキョウヤよりも一回り大きな闇の扉。

 それが2つ、ルシエルの前でうごめいている。


「出てこい。”コルベニク”、”ロギウス”」


 ルシエルの呼びかけに応じて闇の扉から現れたのは、地の底から無理矢理引き摺り出したような黒い塊。

 それが2つ。

 纏わりつく黒く血肉のようなものは、とてもこの世のものとは思えない。



 ルシエルが躊躇なく黒い塊に手を差し込むと、やがて現れたのは両端が二股に別れた2本の槍。


「久方ぶりだが、しっかりと私の言う通りに動くんだぞ、ロギウス」


 まるで駄々っ子に言い聞かせるようなルシエルの声。

 ルシエルはそのまま自分よりも大きな2本の槍を優雅に携えると、その場でクルリと回ってみせた。

 黒いスカートがふわりと浮くと、ルシエルはそのまま流れるような動作で両手に掴んだ槍を頭上へと投げ放った。



 2つの槍は互いに螺旋を描きながら、天使を無視して天井をすり抜ける。

 更に先に逃げた天使をも抜き去り槍は空高く舞い上がっていく。



 ルシエルは槍を手放した両手を頭上に置いたまま、ピタリとその場に止まると、自らが使役する2本の武器に向かって静かに命令を下した。



「偽りの翼を持つ者、全てを地にいつくばらせろ」



 心底面倒そうなルシエルの声。

 しかしその瞳に宿る赤い眼差しは徐々に鋭さを増していく。


 そして2本の槍が遥か上空で交わり闇が弾けたところで、ルシエルが再び命令を下した。




「撃ち墜とせ、双神そうじん殺しの槍よ」




3日以内を守れなかった自分がただただ情けない。

本当すいません。

また気持ちを新たに頑張りますので応援よろしくお願いします。

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