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少年と悪魔の天使狩り  作者: ぐーてん
第2章 悪魔崇拝者と天使信仰者
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トラウマ寸前の記憶

タイトルを元に戻しました。

暫くはこのままでいくのでこれからもよろしくお願いします。

「なぁ、思ったんだけどさ、街の中心まで来たのはいいけど、それはそれである意味危険じゃないか? また聖騎士パラディンに出くわしたら逃げるしかないしさ」


 人の目を気にしつつキョウヤはルシエルと共に大通りを歩く人の流れに身を任せていた。

 朝も始まって間もない時間帯。

 にも関わらず、見渡す限り天使信仰者と思われる人たちが目に入る。



 どうやら彼らは朝早くから街の中心近くにある大聖堂に向かっているようで、今日は聖都の偉い人間が来るとのことらしい。



 立ち話をする天使信仰者からその話を聞いたキョウヤは、なんでこのタイミングなんだと愚痴をこぼしたい気持ちで一杯だった。

 偉い人間が来るということは、その護衛もいるということ。

 聖騎士パラディンが近くにいる確率は中々に高かった。



 しかしそんなキョウヤの心配をよそに、隣を歩くルシエルに危機感は感じられない。



「いや、逃げずに戦うという選択肢もあるぞ。逃げてばかりおらずに、攻めに出ることも大事だ」


 のんびりとした足取りのルシエル。


「お前、俺が勝てると思って言ってんのか?」


「湖での特訓の成果を見せてやればよいではないか」


「特訓て言われてもトラウマ寸前の記憶しかないんだけどな」


 言われてキョウヤは思い出す。

 あの地獄の日々を。



 そんなキョウヤに対してルシエルは呆れた様子で首を振る。


「やれやれ、契約者エニシは分かっておらんな。トラウマ寸前とは、つまり頭で覚えたのではなく魂が覚えていると言ってもいい。トラウマと違い、体が萎縮することもないから、いざという時は自然と体が動いてくれる」


「……自然とね」


 もう一度キョウヤの脳裏をよぎるのは、ルシエル主導による拷問の数々だった。

 思い出しただけでも体がピクリと反応してしまう。


「まぁ確かに条件反射では動きそうだな」


 キョウヤは冷や汗を感じながら、ただただ苦笑いだった。








 暫くイルミナから渡された十字架のペンダントを手掛かりに、キョウヤは人混みから離れながらも先を目指して歩く。

 十字架の輝きは徐々に輝きを増している。

 イルミナの話が本当ならこの先にミユがいることになる。



 そして一際眩しい輝きを放つ十字架に導かれてキョウヤが辿り着いたのは、街の中心を飾るに相応しい立派な教会だった。


「お、一応それっぽい場所に着いたぞ」


 ここへ来るまでに見かけた教会に比べると、どれだけこの教会に重きを置いているかが一目でわかる。

 精巧に彫られた彫刻や目を奪われるような壁画の数々。

 どこか人を寄せ付けない雰囲気を醸し出しながらも、誰でも入れるようにとの配慮か、扉は開いたままとなっている。

 周囲に人の姿はなく、どうやら大聖堂の方へと集まっているようだ。


「全く、いつ見ても吐き気のする建物だな」


 ルシエルが露骨に顔をしかめながら素直な感想を口にした。


「あれ、さっきまで反応があったのに消えてる」


 キョウヤは持っていた十字架の予想外の反応に戸惑った。

 ゴール直前まで来たはいいが、肝心の十字架はゴールが無くなったことを意味していた。


「移動したのではないか?」


 教会の扉の前で立ち止まってしまったキョウヤと周囲を見渡すルシエル。


「もしそうなら一瞬で移動したことになるぞ」


 十字架を軽く振ってはみるが結果は変わらず、光は輝きを失っていた。

 それはつまり対象がここにいないことを意味する。


「まぁ所詮は詐欺天使の加護だからな、はなからアテにはならんさ」


「あ、また輝き始めた。一体どうなってんだ?」


 頭を掻きながら悩むキョウヤ。

 するとそんなキョウヤの耳と刻印、両方に突然シエルの声が響き渡った。


「『契約者エニシ!!!』」


「え?」


 ぽかんとしたキョウヤの目に映ったのは、教会の中から飛び出してくる一瞬天使かと見間違えるほど天使に似た赤い髪の少女だった。

 身に纏う白い布に天使の羽。

 振り上げた両手には光を帯びた白刃。

 それだけ見ればつい呆気にとられてもおかしくなかったキョウヤだが、しかし次に少女の口から出たかなり物騒な言葉にキョウヤは目が覚めたように、瞳を見開いた。


「穢れし魂に浄化の光を!!!!」


 自分の胸目がけて飛び込んでくる少女だが、キョウヤはそれを受け止める訳にはいかない。

 何故なら少女が狙い澄ましたように自分の首めがけて剣を横一線に躊躇なく振るったから。



 キョウヤは、咄嗟に相棒の名前を叫んだ。


「アダマス!!!!!」




 キィン!!




 金属同士がぶつかり合う甲高い音がその場に響き渡った。

 間一髪のところで首が斬り落とされるのを漆黒の棒で防いだキョウヤだが、少女はそれすらも想定内だったのか、更に追うように一振り二振りとキョウヤの体を切りつけようと剣を振る。



 しかしそのどれもをアダマスを巧みに操り防ぐキョウヤ。

 合計10連撃をキョウヤに放った少女だが、その攻撃は全てアダマスによって阻まれてしまった。

 刹那に近い一瞬の攻防。

 傍から見ればキョウヤのその動きは棒術を極めた達人のような動きにも感じられた。


「おぉ! 中々見事な反応ではないか」


 ルシエルの感心するの声も今のキョウヤには聞こえてはいなかった。


「なんだよこいつ、いきなり……!」


 息つく暇もなく少女が再びキョウヤへと襲い掛かる。

 再びアダマスを使って少女の剣撃を受け止めるキョウヤだが、その時自分の脇を白い翼を持った男がすり抜けるようにして出て来るのが視界の端に見えた。


「私はこのままあの女の後を追う。そいつの浄化は任せたぞ!」


 薄っすらと聞こえた男の声。

 キョウヤにはあの女のことが誰なのかはわからなかったが、ただ自分を浄化したい事だけはよくわかった。

 そして浄化が何を意味するのかも、それは身を以って知っている。

 つまり、自分を殺そうとしているのだと。


「りょーかい!」


 少女は元気な返事と共に更にヒートアップするようにキョウヤを斬りつけにかかる。

 しかしキョウヤは再び自分目がけて放たれる斬撃を、今度は器用に体を移動させながら、または指先でアダマスを操りながら、少女の攻撃を捌いてみせる。


「なんだ、やればできるではないか」


「呑気なこと言ってないで、なんとかしろよ!」


「そうは言われてもな。私が自ら手を出せるのはあくまで魂への憑依のみに限られておるし……」


「なら憑依してもいいからなんとかしろよ!!!」


 声を荒げるキョウヤの顔目がけて光り輝く剣が突き刺そうとして来る。

 それをアダマスで振り払うキョウヤ。


「なら憑依するか? しかし正直なところ、すぐに私が力を貸すのはどうかとも思うのだ。これから先、似たようなことはいくらでも起きるであろうし、その度に私を頼られては先が思いやられるぞ」


「言っとくけどこちとら実践なんて初めてだし、今だってアダマス使ってあの女の攻撃を防いでること自体奇跡に近いぞ!!」


「意識しなくとも体は動く。特訓の賜物だな」


 緊張感の感じられないルシエルは腕を組んでうんうんと頷いている。

 その瞳には薄っすらと涙も。

 まるで自分の育てたヒナが巣立ちする姿を見つめる母親のような表情だった。


「トラウマ寸前の記憶のせいで怖くて体が勝手に動いてるんだよ!!!」


「あら、お喋りなんてえらく余裕ね!」


 少女が若干の苛立ちを込めて剣を握り締め直すと、力任せにキョウヤの腰を薙ぎ払おうとする。

 光の尾を引く少女の攻撃をアダマスで防いだはいいが、衝撃までは抑えきれなかったキョウヤはそのまま教会奥にある教壇へと打ち付けられてしまった。



 中に人はいないのか、砕けた教壇がガラガラと崩れ落ちる音だけが教会の中に響き渡る。


「痛って……!!」


 崩れる教壇を背にキョウヤは熱を持つ自分のお腹にそっと手を這わせた。

 内側から感じる疼く痛み。

 この感触と痛みを自分はこれまでの経験からよく知っている。

 数秒後に血が流れだすことも。


「マジかよ」


 ぱっくりと開いた自分のお腹にキョウヤは思わず意識が遠のきそうになった。

 自分の体に刻まれたありえない程の傷の深さ。

 それでもどうにか意識を保つことができたのは、瞬時に傷痕を隠そうとする黒い霧のような存在がみえたから。

 まるで傷痕なんてなかったと主張するようにキョウヤの傷口を塞いで見せる。


「胴体を切り離したつもりだったのに、よくその程度の傷で済んだわね」


 純白の羽根をふわりと羽ばたかせながら少女は膝をつくキョウヤの前へと降り立った。


「いや、これって致命傷なんじゃ……」


 自分の体に何が起きているのかわからないキョウヤ。

 普通だったら死んでもおかしくはない傷だ。



 そんなキョウヤの疑問に答えるようにして、黒い煙のようなものが自分の隣で渦巻いていることにキョウヤは気付いた。

 やがて姿を現したのはルシエルだった。


「私の呪詛が流れている肉体を普通の体と思うなよ」


 当然とばかりにそう語るルシエルにキョウヤは思わずツッコミたくなった。

 まず自分の体がこんな人間離れしたものに変わっていたなんてことは初めて聞いた。

 出会った時からそうだったが、肝心な説明を全て後回しにするルシエルにキョウヤはただただ呆れていた。


「そりゃあなんとも頼もしいこって」


 しかし今のこの状況ではそんな人間離れした体が役に立ってくれている。

 でなけ自分はとっくに死んでいただろう。


「だから思う存分戦っても簡単に死にはせんぞ」


 ルシエルは簡単そうに言うが、これまでまともな戦闘経験なんて皆無なキョウヤにはまともに戦えるかどうかは怪しい所だった。

 ルシエルのトラウマ寸前による特訓のおかげで辛うじて条件反射で体が動いてはいるが、自分から攻撃となると話は別だ。


「どう考えても俺1人でなんとかなる相手じゃないだろ」


 目の前に立つ少女は攻撃してくる様子はなく今はじっと自分を見ている。

 時折隣に視線を巡らせていることから、ルシエルがそこにいることはわかっているのかもしれない。


「厳しいことはわかっているが、そんなことでは妹を生き返らせることは叶わんぞ。契約者エニシの妹に対する気持ちはその程度か?」


 ルシエルの静かな激にキョウヤはハッとさせられた。

 確かに妹を生き返らせることが簡単でないことは理解していた。

 そのために立ちはだかる困難は何があっても打ち破ってみせるとも。



 言われてみればルシエルの言う通りかもしれない。

 この程度のピンチですぐにルシエルを頼っていてはきっと先が持たないだろう。

 憑依により魂への侵食が進めば、妹を生き返らせるために必要な自分の魂が無くなってしまうのだから。



 キョウヤは自分が目指す道が簡単でないことを改めて自覚すると、決意を新たにアダマスを握り締めた。


「わかった。なるべく俺1人で戦ってはみるけど死ぬ一歩手前の時は頼む。それまでは自分で何とかしてみるよ」


「おぉ、さすがは我が契約者エニシだ。了承した」


 キョウヤは立ち上がるとアダマスを少女に向けて構えた。

 しかし少女の方は先程の勢いはなく、今は剣は下げたまま何かを考えるようにして自分の顎に手を当てていた。

 そして確認するようにキョウヤへと声をかけてきた。


「ねぇ、さっきから悪魔と会話してるみたいだけど、貴方の契約した悪魔ってもしかして知性があるのかしら?」




毎日更新は自分には難しいようなので、目指せ3日以内更新!

を目標に暫くは頑張りますので応援宜しくお願いします。


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