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少年と悪魔の天使狩り  作者: ぐーてん
第2章 悪魔崇拝者と天使信仰者
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女の子が覗いたもの

 キョウヤが孤児院を出る数時間前。

 まだ陽も顔を覗かせない暗い朝。



 街の中心にある教会の近くに1人の女の子が姿を現した。

 小さな赤い髪留を付けた10歳前後の女の子。

 人気の無い街できょろきょろと小さな目をせわしなく動かす女の子は、どうやら誰かを探しているようだ。



 アテもなく静かな街を歩いているようだが、そんな女の子の耳にある男の声が聞こえて来た。

 それはすぐ近くにあった教会。

 女の子は気になって落ちていた木箱を使って窓から中の様子を覗き込んでみた。

 すると中には白いローブを身に纏い、頭に白い布製のターバンのようなものが巻かれた男が教壇に立っているのが見えた。

 目の前には震えながら寄り添う4人の子供たちの姿も。



 男がこちらに気付いた素振りはない。

 しばらく女の子が中の様子を見守っていると、突然、窓の外まで聞こえてくるほどの声で男が自己紹介を始めた。


「えー、皆さんおはようございます! 私は天使信仰本部司祭のアロンです。この世界で暮らす貴方達なら一度は耳にしたことがあるでしょう!! そう、神に愛されし男の名を!!!」


 女の子はビクリとしながらも中の様子が気になったようで、そのままじっと男と子供たちを見ていた。


「この度、貴方達に集まっていただいたのは他でもありません! この中で私と同じ神に愛されし選ばれた者がいないかどうか、それを見定めるためです!! 貴方達は罪深い存在です。悪魔を崇拝した、もしくは契約した人間を親に持つ。親の罪は子供の罪。親がその命を賭して償おうとも、その全てが償えるわけではありません!!」


 男の言い方が気に食わなかったのか、女の子は怒った表情で男を睨み付けた。


「貴方達が何もしなくても、その血は穢れ、汚れ、周囲に腐敗をもたらしています。浄化が必要です。今すぐに。その命を持ってして! しかし選ばれた人間。即ち神に愛されし人間にはその必要はありません。何故なら神に愛されているからです。神に愛された。つまり神に認められた存在はいかなる理由があろうとも我々に否定することは許されません。重罪です。死罪です。生きる価値はありません」


 男の言葉が難しすぎるのか、女の子は今度は不思議そうに小首を傾げた。

 男は得意げに言葉を続ける。


「それほどまでに神に愛された人間というのは尊き存在。ならばどのようにしてその他大勢の人間から見極めようというのか、不思議でなりませんよね?」


 男の問いかけに女の子も不思議に思ったのか首を縦に振ってみせる。


「神の寵愛を受けた者。それが誰なのかを我々人間が判断することはそれ自体がおこがましい行為です。神に認められた存在なのですから、神に等しい存在と言えます。ではどうやって探すのか。気になるところでしょう。答えは簡単です。自らの前に現れた死を前にしてそれを避けられることができるかどうか、ただそれだけです!!」


 両手を広げて天を見つめる男。

 その姿はまるで自分の言葉に酔いしれているようにも感じる。

 女の子は男を見ながら眉根を寄せた。


「神に愛された者はいついかなるときであっても、死に負けることはありません。なぜなら神に愛されているからです!! “死”、たかだかその程度のものに負けるはずがないのです!!! ですので今からあなた達に死を与えます。普通では避けることができなであろう死を!!」


 はっきりとそう言い切った男から何かを感じ取ったのか、女の子は不安な表情を浮かべながら一歩後ろへと後ずさりする。


「怯える必要はありません。痛みを感じる前に終わります」


 言葉の意味を理解してか女の子は更に一歩後ろに下がると、そのまま木箱を踏み外して転げ落ちてしまった。

 強く打ったお尻をさすりながら立ち上がろうとする女の子の耳に男の声が聞こえて来る。


「さあ、祈りを捧げるのです!神に、そして天使様に」


 天使と言う言葉に女の子が目に見えて苛立ちを覚えたのがわかる。


「主よ! どうか罪深きこの者らに、神のご加護を!!」


 男がそう叫んだ直後だった。

 突然目を覆いたくなるような眩しい光が窓から溢れ出してきた。



 いったい何が起きたのか。

 中がどうなったのか。

 その様子を見ていなかった女の子にはわかるはずもなかった。



 しかしわからなくて正解だっただろう。

 僅かに流れて来た血の匂いが意味すること。

 その事実を女の子が直視するにはあまりに幼過ぎた。



 女の子は飽きてしまったのか、それ以上は窓を覗きこもうとはせずにそのままこの場を後にしようとする。

 しかしそんな女の子の行く手を塞ぐようにして、1人の聖職者と思われる人間が立ちはだかった。

 白いローブに胸には十字架のペンダント。

 腰には煌びやかな剣も。



「“選別”を覗き見るなんてイケない子ね」


 フードを被っているためその顔は見えないが、声から少女のものであることはわかった。

 女の子が少女の十字架を見ると怯えるようにして反対側へと逃げる。


「あら、これが怖いの?」


 胸の十字架に指先を添えると、少女は面白そうに女の子を追いかけた。



 女の子は懸命にその場から逃げようと必死に走り続けるが、しかし目の前には更に複数の十字架を下げた人影がいた。


「悪魔と関わりのある子供よ。捕まえてちょうだい」


 少女の命令に複数の人影が一斉に女の子へと襲い掛かった。



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