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少年と悪魔の天使狩り  作者: ぐーてん
第2章 悪魔崇拝者と天使信仰者
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夜な夜な

「おい、一応聞いておくけど、俺が夜な夜な出してるっていったいなんの話だ?」


 ルシエルはキョウヤの恐る恐るといった質問に刻印を通して答える。


『ん? それは勿論、人間の健康男児が溜まった欲情はを吐き出すために行う……』


 そこまで聞いたキョウヤは、ルシエルと同じく声には出さずに刻印を使ってかぶせ気味に話を止めた。


『ちょ、ちょっと待て。何でお前が知ってるんだよ!? “拒絶”は完璧のはずだったろ? お前は直接見ない限り俺が何してるかは知れないはずじゃあ……』


 湖でのやり取りを思い出すキョウヤ。

 契約していれば相手の心の中を覗くことができるが、拒絶を使えばそれを防げるとルシエルからも聞かされていた。

 だから自分がいつ何を、いや、ナニをやったところでルシエルに知られることはないはず。

 なのにこの悪魔はまるで全てを知っているかのような口ぶりで話しているではないか。


『あのだな契約者エニシよ。私が契約者エニシの傍にいて一度も気付かないとでも思っていたのか? 夜な夜なご丁寧に拒絶までしてゴソゴソしていれば何をしているかなど、大方の予想はつく。契約者エニシとて健全な男だ。溜まれば出したくなるもの』


 どうやら拒絶以前の問題があったことにキョウヤはがっくしと項垂れた。


「そんな契約者エニシの気持ちは悪魔である私でもよぉく分かっておる。私とて100年ぶりに味わった魂への憑依だ。あの快感を一度味わってしまってはもう辛抱ならん。契約者がいないなら諦めがつくものの、こうして今契約者(エニシ)の魂へと飛び込めばいつでも味わえる。契約者エニシならわかってくれるだろ?」


 遮るものが無くなった愛らしい唇で興奮気味に同意を求めるルシエルだが、当のキョウヤまるでこの世の終わりのような表情をその顔に貼りつけていた。


「ん、どうした契約者エニシよ?」


 心配するようにルシエルがキョウヤの顔を覗き込む。


「ごめん、ちょっとそっとしといてくれ。今すっごい自己嫌悪でしばらく立ち直れそうにないから」


 歩くのも億劫な様子のキョウヤ。

 思春期の心に負った精神的ダメージは計り知れないものだったようだ。

 そんなキョウヤの気持ちを理解したのかしてないのか、ルシエルがまたしても問題発言を口にしようとする。


「ああ、そうだな、まさか契約者エニシがあのような……」


「やめろぉ!! いいか!? 2度とこの話題には触れるな!? 2度とだ! 今度肉体にぐらいになら憑依させてやるから、これ以上この話をするな! カスリもするな!? わかったな!!!」


 全力でこの話を終わらせようとするキョウヤにルシエルは引き気味に了承した。


「そ、そうか。契約者エニシがそう言うのなら私に異論はないが」


「それと、これから毎日(メイ)の特訓をするからな」


 契約した悪魔を従わせる力。

 それは相手の記憶操作にも及ぶ。

 どうやらキョウヤは何が何でもルシエルの記憶から自分がナニをしていたのかを消し去りたいようだ。


「私としてはメイよりも、まずはアダマスを完全に扱えるよう、呪術の特訓をしたいのだが」


 唇を尖らせながら不満そうなルシエル。


「そっちはそっちでやるからいい。とにかくメイをマスターしてお前の記憶からその忌々しいものを消してやる」


 それを聞いたルシエルは面白そうにキョウヤの言葉を噛みしめながら、からかうように言い放った。


「ほぉ、それは中々楽しみだな。地獄を統べる王たる私の記憶を操作とは。本当にそこまで従わせることが出来たなら、私は契約者エニシに惚れてしまいそうだ」


 悪魔の表情を浮かべながらルシエルがその白い頬を僅かに朱に染める。


「悪魔に惚れられてもなんも嬉しくねぇよ」


「力を使えば契約者エニシ好みの年齢に姿は変えられるぞ。例えば妹と同じ年頃の女児とか」


「だから俺はロリコンじゃねぇ。何度言わせればわかるんだ」


「いい加減素直になればいいものを、夜な夜なあれだけ……」


「黙れ」


 キョウヤが静かにそれだけを口にした。

 滲むように輝くキョウヤの胸の刻印。

 途端にルシエルの口が一文字に紡がれて話すことが出来なくなってしまう。

 暗い表情でルシエルを睨むキョウヤ。

 その顔が物語っている。

 それ以上無遠慮に喋ればどうなるのかを。


「お前、その話はするなって言ったよな? 天使の前に先ずはお前から狩ってやろうか?」


 凍りよりもなお冷たいその口調にさすがのルシエルもそれ以上からかうことは許されなかった。


「じょ、冗談ではないか」


 口元を引きつらせながら苦笑いのルシエル。

 そしてそんな2人のやり取りに一切気付いた様子のない女の子が、不意にその足を止めると笑顔でこちらに振り返った。


「着いたよ!」


 女の子の声に我に返ったキョウヤ。

 2人が下らない下世話なやり取りを繰り広げている内に、どうやら目的地である孤児院へとたどり着いたようだ。



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