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少年と悪魔の天使狩り  作者: ぐーてん
第2章 悪魔崇拝者と天使信仰者
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路地裏で女の子と二人っきり

「えっと、どこまで一緒に歩けば……」


 それからどれぐらい歩いただろうか。

 気付けば大通りから外れた暗い路地裏をキョウヤは少女と共に歩いていた。

 人々の喧騒が遠くに聞こえ、嫌な静けさがその場を支配している。


「まだ少し心配なので、もう少しだけお願いします」


 少女にそう言われてキョウヤは渋々ながらも歩みを進める。

 しかし歩けば歩く程人の気配はなくなる一方。

 嫌な予感がキョウヤの背中に冷たい汗となって流れ落ちていく。



 何かマズい気がする。

 そんな不安を払拭するためにおずおずと少女に声をかけるが、返ってくるのは鈴を鳴らしたような少女の落ち着いた声。

 今更断る事の出来ない少女の雰囲気に、言われるがままキョウヤは路地裏の奥へと進んで行く。


「えっと、もうちょっと人混みの多い所の方がいいんじゃ……。ここだと何あったときにマズイと思うけど……」


 キョウヤの言う通り、人の少ない路地裏では何かあった時に助けを呼ぶことが出来ずにマズいだろう。

 ただ、長い一本道を歩いているのと、その人の少なさから変な男が付いてきていないと言うことだけはわかったが。


「いえ、すぐ近くに『聖騎士パラディン』の方がいる教会があるので何かあればすぐに駆けつけてくれます」


 聖騎士パラディン

 知らない言葉にキョウヤが頭の中でクエスチョンマークを浮かべる。

 少女に聞き返そうとも思ったが、この世界では知っていて当たり前のことを逆に知らないとなると、それはそれで変な目で見られるかもしれない。

 なのでキョウヤは一番手っ取り早い方法でその言葉の意味を調べた。


聖騎士パラディンて何なんだ?」


 キョウヤが心の中で問いかけた。

 するとルシエルのやや面倒くさそうな声が頭の中に響き渡った。


聖騎士パラディンは天使信仰者で構成された治安部隊のようなものだ。一人一人が中級天使以上の加護を付与された武器を持ち、悪魔崇拝者を独断で処罰する権限を与えられている少し厄介な連中だ」


 ルシエルの説明を聞いたキョウヤは安堵した。

 そんな心強い人たちがいるならそれを理由にさっさとここから離れてしまおうと。


「そうなんだ。じゃあもう大丈夫そうだし俺はこれで……」


 そう言って少女の腕から逃げようとするキョウヤだが、しかしその腕がビクともしない。

 少女が腕に力を込めてガッチリとキョウヤの腕を固定していた。

 少女の胸が更に自分の腕に押し付けられていたが、その感触に喜んでいられるほど今のキョウヤには心の余裕が無かった。


 どう考えてもヤバイ。

 絶対に何かある。

 キョウヤの男としての直感が警鈴を鳴らして逃げろと告げている。

 しかし時すでに遅し。

 キョウヤの直感は正しかったが、逃げられなければ意味は無かった。


 トン。


 それは路地裏の曲がり角を曲がった直後のこと。

 少女が突然組んでいた腕をほどき、キョウヤから一歩後ろに下がったのだ。

 結果少女の前に出る形となったキョウヤ。

 キョウヤは少女に自分の背中を押されたことは理解したが、咄嗟のことに状況が全く理解できないでいた。


「あの……」


 向かい合う形で少女に声をかけようとしてキョウヤは気付いた。

 自分の背後にある巨大な壁の存在に。



 次第に自分の置かれた状況が見えたきたキョウヤ。

 どうやら自分はここに誘い込まれたらしいと。

 日の当たらない薄暗い路地裏。

 人の数も少ないうえ、自分がいるのは路地裏の奥の奥。

 更に死角となったこの場所では自分に何かあっても誰も気づかないだろう。



 ここまで来れば、変な男に付け回されていたと言うのが嘘だということぐらいはキョウヤにもわかっていた。

 こんな場所、襲ってくださいと言っているようなものである。



 そして今、キョウヤは助けを求められた少女に逆に襲われるかもしれないというシチュエーションに陥っている。

 相手は自分と同じ年頃の少女。

 見た目は非力そうだが、この世界では天使や悪魔の存在がある。

 何をしてくるかわからない。

 そもそも何が目的かもわからないが、自分にとってよろしくないことは確かだろう。

 最悪はルシエルに助けてもらうしかないな。

 そう思いキョウヤはルシエルに視線を移した。



 しかし当のルシエルは少女の後ろにいて、何故かニヤニヤしながらこちらを見ている。


「あいつ、こんな時に何で笑ってるんだよ。大体何でそっちに……」


 戸惑うキョウヤをよそに、少女がおもむろに自分の胸にぶら下げられた十字架にそっと触れた。

 そして良く通る澄んだ声でキョウヤに声をかけた。


「天使信仰に、興味はありませんか?」



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