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IBSの俺が異世界ダンジョンでトイレマップを作る /(IBS=過敏性腸症候群)  作者: 弥ぶんし
第1章:はじめての異世界ダンジョン(トイレマップ)
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1-5. 魔法道具店主 ルイズ・アーヴェ 《出会い》

【冒険者ギルド・ダンジョン出発前】



「よっし! 初心者の装備は、こんなもんでいいだろ!」


 ジャージを汚したら困るという俺の話で、ライアスが用意してくれたお古の服に着替え直した。

 その上に、胴体と腕、足にプロテクターを装備する。

 シンプルな姿故に初心者感が凄く出てるな。


「そういえば、ダンジョンでトイレはどうしたらいいんだ?」

「へ? ……あぁ、一応携帯型トイレはあるぜ。

 使い捨てだから1回で消滅するが」


 あ、やっぱりトイレないんだ。

 使い捨てトイレ……いくらかあった方が良いよな、俺的には。

 相談しておこう。


「実は俺、お腹弱いから携帯用トイレは常備しておきたい」

「あー、なるほどな。

 そいつは大変だ。

 普通あんまり数用意しねぇから心配しないんだよな。

 とりあえずこんだけお金渡すから、そこらへんの店で必要な装備整えてきていいぜ。

 お金は、その分だけダンジョンで働いてくれればいいからさ」


 すまねぇ……すまねぇ……。

 俺は出発前に少しだけ街を探索する事にした。



◇◇◇~~~~~~~~~~~~~~~~~~◇◇◇



【魔法道具店】



 街を歩いていると、一際暗くて目立つお店らしき存在があった。

 ポーションの看板。

 全体的に暗めの外観。

 魔法使いがやっていそうなインテリア郡が並んでいる。

 うん。ここなら色々と使えるモノがありそうだ。


「こんにちわ」

「っぅ…………。

 ぃ、ぃらっしゃぃ……」


 挨拶をしながらお店に入ると、そこには同い年くらいの女の子がいた。

 彼女の声は、とてもか細いもので、どこかに隠れていたいという気持ちが表れているかのような声質をしている。

 …………怪しい店だったのかもしれないと、一瞬思わせるようなオーラが彼女にはあった。

 前髪で目が少し隠れている所が本人の暗さを描いているようで、お尻までありそうな長く黒い髪は横に膨らみ、ウェーブ状になっている。

 頭には逆さまになった三角頭巾のようなカチューシャを付けており、服装は全体的に、ローブ姿の全身に沢山のマフラーで覆うようにした布地の多さがある。

 それらは動く度にヒラヒラと揺れているが、同時に布の多さでゴワゴワしている。

 とにかく暗い少女だというのは、実際に暗い店の雰囲気と合わせてすぐに分かった。

 特に目付きがじっとりしており、若干クマになっているようだった。


「……ダンジョン用の携帯トイレってありますか?」

「……………………ぁ、ぁる…………待ってて……」


 俺が商品の場所を尋ねると、暗い少女の店主はお店の奥に入っていった。

 そして、魔法陣が描かれた5cmほどの正立方体を持って戻って来た。


「これ……自身の魔力で……使うんだけど…………。

 足りない時は……、アークライトがあれば……スイッチだけで起動する…………。

 一応、プライバシー用に……別空間になる隠蔽式のアレンジ加えてある…………」


 た、助かる。

 そんな便利な機能まであるのか。


「お腹…………弱いの……?」

「実は……。

 だから結構、数欲しくて……」

「……そっか…………大変だね……」


 心配されてしまった。

 ……まぁそうだろうな。

 トイレばっかり欲しいって言うのも微妙に恥ずかしかった。


「ぁ、ぁの…………。

 アナタの魔力属性って…………何?」

「えっと……水と光かな?」

『いや、正確には太陽だ』

「太陽…………?

 ステータス見せて」


 魔力属性を聞いてきた少女の店主との会話にハロは割り込んできた。

 ……この女の子は、ハロの姿見ても驚かないんだな。

 俺は彼女に言われる通り、自分のステータスを出した。

 ステータスが描かれたIDは、自身の手甲から自分の意志で自由に出し入れできる。

 自分の体内からカードが出る仕組みは最初見た時は気持ち悪かったが、慣れるとそうでもなくなった。

 体内の魔力と同化したり分離したり……まぁよく分からないが、害はない。


「……高いね、数値」

「うん」

「……職業の……欄は?」

(かみ)(つるぎ)

 この世界では例外(エクセトラ)だから記入はされてないけど』

「えっ……って事は…………、神の使い…………?」

『お、物分りが良いね!

 そうだよ! その通りだ』

「誰の加護?」

『太陽神そのもの。

 他は、主にハルウォート・ウェスキィの眷属だよ』

「……Halo……。ウェスキィ……。

 慈愛と豊穣の神か」

『凄い! その通りだ! よく分かるね』

「うん…………凄いね、君」


 ハロがいつになくハイテンションだ。

 自分を知っている相手に出会ったからだろうか。

 最初は怪しさを放っていた彼女も、話せば話すほどに表情が柔らかくなってきていた。

 褒められた時には少しキュンとしてしまった。


「…………じゃあ、こんな物よりも良い物あげる…………」

「?」


 そう少女の店主は言い残し、また店の裏側に入っていく。

 そして再度、自分達の前に別のアイテムを持って戻ってきた。

 楕円状になっている金色の金属の枠に、中心には丸い青色の宝石が組み込まれている代物。


「これは形成式(クリエイトタイプ)のマジックアイテム……。

 携帯式のトイレは使い捨てで効率が悪いから……、

 君みたいなタイプは……、

 半永久的にいくつも使えるこっちの形成式を使った方が良いと思う……。

 中には……、さっきのトイレの形成陣を組み込んであるけど……、

 本来は、形成陣さえ変えていたら……

 他の物も作る事ができるクラフト系の魔術……。

 これは、クラフト系の職業と、錬成に膨大な魔力を必要とするんだけど…………。

 …………太陽である君の魔力と剣特性だったら……

 ……問題なく扱えると思う…………」


 …………マジか!

 トイレ問題が一気にして解決したぞ。

 これでダンジョンの各ポイントに設置していけば、トイレ問題を解決させていきながらマッピングができるな。

 一石二鳥というやつだな。


『よかったね、マナト。

 解決した所で早くダンジョンに戻ろうよ』


 まったくだ。

 ハロの言う通り、支払いを済ませて、早くアイレス達の所へ戻るとしよう。


「お代はいくら……?」

「500万」

「えぇ…………」


 高過ぎる。

 ……携帯式のトイレで我慢するしかないみたいだ。


「でも…………いらない。

 売れないもの。……それ」

「えっ、いいの?」

「うん…………。

 君なら…………、もっと良い物くれそうだから…………。

 後払いって事で……」

「ありがとう!!」


 天使か!

 …………天使か!


「いいよ…………頑張ってね」


 先ほどまでの暗い表情とは一変、ほっこりした笑顔で見送ってくれる少女の店主。

 かわいい…………。

 さきほどまで怪しいとか思っていた気持ちが吹っ飛んでいった。

 この世界に来て出会った中で、一番の天使だと思う。

 ホントに。


「あと……リターンクリスタルも渡しておくね……。

 何かあったら…………これで戻ってきて…………。

 腹痛の薬もおまけ……」

「リターンクリスタルって?」

「ダンジョンのどの階層にいても……、

 地上に設定したセーブポイントに戻って来れるアイテム…………。

 急な体調不良とか……、危険な状態になったら使う…………。

 お守り変わりに、いくつか持ってる人多い…………」


 何から何まで、本当にありがたいお店だ。

 俺は今凄く感動している。


「じゃあ、後で絶対お礼しに来るよ。

 名前聞いてもいいかな……?

 俺はマナト。クダリ・マナト」

「私…………、ルイズ…………アーヴェ…………」



 ルイズ・アーヴェ。

 覚えておこう。

 この一件以来、この店には、ずっと通っていようと決めた。



------------------



■用語解説



【リターンクリスタル】

 ダンジョンを専門に探索する冒険者ルイン・エクスプローラーには必須アイテム。

 一瞬にして地上へ戻る事ができる。

 魔力消費も必要としない。

 主に敵の毒魔法などを受けた事によるマイナス症状の悪化や、急病・重傷などによる緊急時に使う。

 その為、1個くらい持っていないと命に関わる。

 単純に家に帰るのが楽だからという理由で持っている人が多い。

 使い捨てで、一度使ったら消滅する。

 冒険者の間では、「リターンクリスタルを持たぬ者、ダンジョンに入るべからず」という言葉が有名。

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■〔最弱最強の主人公……は、結局最弱だった件〕
■〔お前が神だと? そんな俺は魔王だが? そんなことよりおっぱいだ〕
以上の短編作品もありますので、是非観てください。
期待値があれば、連載化も視野にいれる事ができます。

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