1-Epilogue. あなたに会えて
ギルドから今回の報酬を受け取った俺は、ルイズの魔法店にやってきていた。
あのトイレを形成できるマジックアイテムを譲って貰えた事へのお礼をしに来たかったから。
「ただいま! ……じゃねぇ。
こんにちわ」
「あっ……ふふっ。
おかえりなさい……」
何やってるんだ俺は。
いくらここの居心地がいいからって、「ただいま」はないだろ……。
ルイズからも笑われてしまったし、ちょっと恥ずかしかった。
「あの、あの道具を譲ってくれたお礼をしに来たよ。
おかげでダンジョンも攻略できたしね」
「えっ……別に……いいのに……」
「ううん。凄く助かったから。
感謝の気持ちも込めて」
本当に助かった。
ルイズがいなければダンジョン攻略できなかったというくらい。
…………本当に。(真剣)
ポケットからお礼の品を探り出し、
感謝の言葉を言いつつ、それをルイズに差し出す。
「ありがとう。
……えっと、色々あって代金の500万全部です」
「ぇっ……?」
今回の報酬のほとんどを彼女に渡した。
あまりの金額に意外だったのか、少し絶句するルイズ。
それからすぐにスッっと肩を下ろすように気持ちを落ち着けて話を再開する。
「いいの……?
こんなに……大丈夫……?」
「もちろん!
凄く助かったよ!
是非受け取ってほしい」
「………………………ぅん。
ありがとう……」
ルイズがするこの温かい笑顔。
ハロに似ている。
この温もりに包まれると、心が安らいでくるから、居心地が良いって感じてくるんだろうな。
でももう用事はないし、このまま居座っても迷惑だろうから、アイレスの待つ家に帰る事にする。
すると…………。
「あっ……。待って」
ルイズに呼び止められた。
なんだかもじもじした様子だ。
「あのね…………。
実は……君が最初の……お客さん……だったの…………。
本当は……他人が怖くて……辛くて……怖くて…………。
……でもね……、君が優しくて……、普通に……接してくれて…………。
それに……とても……喜んで……くれて…………。
私に……とっては……、それがただ嬉しくて…………。
…………えっと…………。
……来てくれて…………ありがとう…………。
君に会えて良かった」
恥ずかしげにゆっくりながらもしっかりと、ルイズは今の言葉を俺に伝えてくれた。
泣いてはいなかったが、少々涙まじりに思えた。
正直、何を言わんとしているのかはハッキリとは分からなかった。
……でも、伝えたかった事は分かる。
きっと――――、昔何かあったんだろう。
彼女は、それできっと、ずっと不安ながらも、あの時俺に一生懸命接客してくれてたんだ。
そういった勇気を出すのは大変だっただろう。
そう思うと、ルイズはとても胸が苦しかったのかもしれない。
でも良かった。
別の意味でも、ルイズの助けになれていて。
俺もルイズに救われている。
だから俺もこう伝えよう。
「俺もだよ」
自分ができる精一杯の思いやった笑みで答え、俺は店を後にする。
気持ちを受け取ったルイズが見送ってくれる微笑みが少し涙を浮かべていて。
それは、彼女の周りが真っ白になるくらい、お月様のようにほんのり輝いていて美しかった。
-〔第一章 ここからはじまるトイレマップ〕- END //
ここまで読んでくれてありがとうございました。
初めて書く作品なので、どこまで上手く書けたか分かりませんが、精一杯書き上げました。
異世界転生・転移という流行りのラノベアニメが好きな事も書く動機になりました。
いつでも気軽に感想とか貰えると嬉しいです。
本当は、別のお話が最初のアイデアとしてありました。
神に創造され、神に意識以外の身体を全て奪われた少年。
彼は、自分の身体を作る為に色々な別世界へ飛んでいきます。
その世界で、別の姿を借りて冒険するお話を書こうと思ってました。
また別のテーマとして、世界の”勇者”という存在が誇りある称号ではなく、蔑まれるようになってしまった意味を知っていくというのも展開的にありました。
……が、何故かダンジョンの中で便意と戦いながらトイレで世界を救う物語というコンセプトを思いついたら、先にペンが進んでしまいました。
腹痛というのが、誰の身にも身近だからでしょうか。
ちなみに自分もIBS患者です。
過去治療を長くしていましたが、一切効果がでなく困っている生活を続けています。
最初に書いた便秘死は、わりかし実体験を元に作っています。
それでも凄く死を身近に感じる体験だった為、
マジもんのイレウス(腸閉塞)患者の人だったら、かなりの激痛でしょうね。
お腹が痛くなりやすいという事で、社会的な生活に悩んでいる人は沢山いると思います。
調べによれば、大体日本で1/10くらいがIBS疾患を持っているとか。
そういった人がこれを読んで元気になってくれたり、この作品をキッカケにIBSという病気の認識が世間に広まって、精神的にも大変な心身症なんだなという事を知ってもらえれば助かるなという想いを込めました。
第二章、高速魔法が使える小さな女の子のシューが揃って主要パーティが全て揃うと思います。
ですが、仕事や私事、ゲーム制作を続けている事もあり手一杯で、次はいつ更新できるか分かりません。
1節ずつ投稿……なら定期的にできそうです。
ですが、章完結を考えると、どう区切って更新するかが悩み所になっています。
今後とも、ちょっとエッチでおバカな展開を多めにしていきたいので、その為にはもっと話を進めていかないとですね。
pixivでもイラストを描いて活動しているので、よろしければそちらもご覧になって下さい。
https://pixiv.me/bnc_dot
それではまた次回。
よろしくお願いします。