表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
IBSの俺が異世界ダンジョンでトイレマップを作る /(IBS=過敏性腸症候群)  作者: 弥ぶんし
第1章:はじめての異世界ダンジョン(トイレマップ)
10/17

1-8. プロミネンス・レイ

「おっしゃーーーーーーっ!」


 完璧にお腹の痛みが引いた俺は清清しい気持ちでトイレから出た。

 ようやく……、ようやく治りました……復活です。


 とにかく治った以上、早く2人の所に戻らなければ!

 俺はダッシュでボスの部屋に戻っていく。



 ◇ ◇ ◇



【ボス部屋】



「すまーーーーーーんっ! 待たせた!!」


 自分なりに申し訳ない気持ちを最大限に込めて叫ぶ。

 2人は……大分苦戦してるみたいだな。

 ホントにすまん……。


 アイレスは……凄い格好だ。

 服を着せてあげたい。

 変態トカゲとかなんとか罵りながらピョンピョン飛び回って攻撃している。


「遅いわよーーーーっ!

 もう大丈夫なのーーーーっ?」

「ああ、問題ない」


 キラッっと輝くほどの爽快な俺の笑顔に安堵したのか、ファイアリザードマンに追いかけられていたアイレスは立ち止まり反撃を始める。

 しっかりと拳を構えた後、腕のモビルウェポンに素早くチャージを始める。

 それが完了した所で、思いっきり力を込めて広範囲にフレイムバスターを放つ。

 破裂する閃光は群れを全て包み、一撃で一掃した。

 その威力を見てるだけでも、相当実力があった事を実感する。

 しかし、あれだけの高出力であれば、おそらくMPの温存も考えずに放った一撃だっただろう。

 アイレスはドッっと疲れが出て汗が沢山流れてでてきていた。

 呼吸も一気に荒くなっている。


 ……それは、後の戦いを俺に託したという意味でもあっただろう。

 だがしかし、何故だか自然に最初に対峙した時ほどの緊張感は無かった。

 妙に自信が出て来たというか、全然怖くなくなっていた。


『おお? マナト! 何か凄いぞ!

 君のステータスが凄く向上している!

 なんでだ!?』


 ハロがはしゃぐように驚いている。

 そういえば、ダンジョンに入ったばかりの時よりも、身体が軽くて動かし易くなった気がするなぁ。

 レベルでも上がったのだろうか?


『あっ………………。そうか。

 君とのリンクに何か障害があるなと思ってたんだけど、

 これ多分腹痛のせいだよ。

 正確にいえば、それに限らず体調不良が影響してたんだけど、

 それがさっきので解決してたみたい。

 最初にステータスを測った時に500台だったのもその為だ。

 ……う~~~~ん。このバグも取り除いていかないといけないな……。

 ……――っていうか、腹痛を解消させていかないとそもそもダメか……?』


 説明から段々と独り言のようになっていくハロ。


『とにかく、今の君ならナイトミノタウロスなんて楽勝だよ!

 とっとと倒しちゃえ』


 考えるのを止めたかのような素振りに切り替わり、ハロは楽しそうに言った。

 確かに言う通り、今のスッキリした俺ならなんだか倒せそうな気がする。


「グオオオオオオオオオオオオッ!!」


 俺の戦意を感じ取ったナイトミノタウロスが、こちらを向かって大きく吠える。

 ダンジョンの壁が振動するほどの轟音。

 それを合図とするように、俺は剣を構えて相手を見据える。

 相手も呼応するように剣を握る力が強くなる。

 ナイトミノタウロスは、そのまま力任せに突進しながら剣を一閃してきた。

 俺はそれを跳んで避けるが、休む暇もなく次々に剣戟が繰り出される。

 攻撃が当たる心配が少なくなったおかげで、平然と回避ができている。

 だが剣が当たるより注意すべき点は、突風のような剣圧。

 その風で近付けず、運が悪ければ身動きを塞がれ直撃する状態であり、

 反撃がし難い状況だった。

 そんな戦闘の中でなんとか剣を振るうも、決定的なダメージになる事はない。


「どうしようハロ?」

『ブーストスキル使えばいいよ。

 そうすれば相手の剣風による効果が気にならなくなる。

 一応敵のあれもスキルみたいなもんだから、射程範囲から離れれば良い』

「スキル? どうやって使う?」

『イメージしてブーストッ!って叫んでもいいし、念じても使えるよ。

 ただ、使う度にそれをやらないといけない。

 わかった?』

「魔法とは違うのか?」

『違うね。

 スキルは属性依存ではなくて職業依存だから。

 基本スキルは誰でも習得できるけど、その他は必要条件がある』


 なるほど。

 とにかく、ハロが使えると言っている以上、俺には基本スキルが最初から備わっているのだろう。

 流石、神の剣というべきなのか。


「ブーストッッ!!

 でぇぇええ!?」


 スキルを発動させ足に力を入れて跳んだ……のだが、

 思ったよりも加減が必要なようだ。

 あまりの速度に思わず変な声で驚いてしまった。

 一気に距離がとれてしまい、むしろ相手から離れ過ぎな場所まで来ている。

 勢いあまって壁に着地していた。

 だが、もう使用感覚は掴めた。

 このまま三角跳びのように跳ねながら攻撃が繰り出せる。

 ブースト。ブースト。ブースト。

 攻撃の際、攻撃を避ける際、距離を取る際、常にブーストを使い続け高速移動する。

 素早い移動で死角に入られて攻撃を受け続けているナイトミノタウロスは、そのスピードに翻弄されている。

 それでもまだ倒れない所を見ると、今までの敵より相当タフであり実にボスらしい。


「どうやって倒そう……」

『めんどくせーから、プロミネンス・レイで一撃でやっちゃおーぜ』

「プロミネンスレイ?」

『超強い太陽魔法のレーザーみたいな。

 …まぁ、いわば必殺技だ。

 詠唱を教えるから、それに続いて避けながら繰り返してくれ。

 一撃で倒せるぜ』


 ハロの提案を受け、俺は体勢を立て直す。

 ナイトミノタウロスは、先程と同じ行動パターンで攻撃してくる辺り、あまり知性は高くない方なのだろう。

 力任せな戦い方だ。

 それを見切っている俺は、軽々と飛ぶように避けながら、ハロの詠唱に対して続いて詠唱する。


『我が太陽よ。その輝きを(つるぎ)(とも)せ』

「我が太陽よ。その輝きを(つるぎ)(とも)せ」


 持っている(ヤイバ)に黄白い光が灯る。

 持ち手が熱湯のように熱くなっていく。

 必殺技の発動に備え、腰の方でワキで抱くようにグッっと剣を構える。

 腰を落とし、魔力(ちから)を込めた。


生命(いのち)を護る清浄なる炎は(けが)れる事なき。

 太陽の裁定により悪を区別する』

生命(いのち)を護る清浄なる炎は(けが)れる事なき。

 太陽の裁定により悪を区別する」

『放たれる光は、一切の不浄を許さず。

 灼熱の直線――――プロミネンス・レイ!!』

「放たれる光は、一切の不浄を許さず。

 灼熱の直線――――プロミネンス・レイ!!」


 詠唱が終わると同時に、構えていた剣を前方へ突き出すように思い切り振る。

 唱えている内に大きくなっていた光が、突き出した方向へ光熱線となって射出される。

 部屋全体を白くするくらいの強い発光が辺りを包む。

 威力の反動で俺は身体が軽く地面へ押し付けられ、衝撃でダンジョン全体が沈んだように感じられた。


 その光は、ナイトミノタウロスの心臓を一撃で貫通させ、胸にぽっかりと綺麗な穴を開けた。

 巨体は時間が静止したように立ったまま、黒い煙のような物を出して消滅していく。

 衝撃で天井の岩の小さな欠片や、石が擦れてできた砂埃もパラパラと静かに落ちていっている。

 ドロップしたアイテムは数多くあるが、

 その中でもアークライトの宝石は、今日見た中で一際でかく目立っていた。


『な? こんなもんだぜ』


 当然だろ? と言わんばかりのハロ。

 だが、その優しみが溢れる笑顔には母性を感じる。


 俺は自分で発動された魔法の威力に少々驚いていた。

 これすげぇ威力なんだな。

 他の魔法とは格が違った。

 もはや一般的な兵器を超える認識だ。


「す、すっごーーーーーーいっ!」


 しばらく呆然としていた向こう2人。

 その中のアイレスが俺に向かって駆け出してきた。

 そのまま抱きしめるように両手で俺の両手を包み込んだ。

 顔は期待に満ちて頬が薄赤くなっている。

 目は、星が輝いているようにキラキラしていた。

 

「さっきの太陽魔法でしょ!?

 マナト太陽魔法使えたの!?

 あはーーーー!

 やっぱりマナトをパーティに誘って大正解だったわーーーーっ!」


 喜びを全身で表現するアイレス。

 正直、色々と抜群のボディが揺れて、目のやり場に困ります。

 戦闘で出来たボロボロの衣装の隙間から、チラチラと裸が見えている。

 とにかく肌色が多い。


 しかし、太陽魔法とはそんなに驚かれるくらい凄い物なのかが気になった。

 ハロに聞いてみる事にしよう。


「ハロ。太陽属性ってそんなに凄いのか?」

『ん? ああ、そうだね。

 太陽と月といった天系は、魔法属性の中でも最上位に位置する。

 特に太陽は地球を照らしているだろ?

 むしろその恵みで生命全てを支えていると言ってもいい。

 つまり、神の力だ。

 太陽属性を扱えるのは神くらいなもんだよ。

 人で使える人は、まったくと言っていいほどいないんじゃないかな』

「神? 俺は神の剣だからって事?」

『うん、そう。正確には適性が必要だ。

 その適正が君は抜群だった。

 まぁ、元々太陽の眷属だから太陽属性が付いているのが当然なんだけど』


 神の事情やらは詳しく知るよしもないが、神にしか扱えない魔法というのなら、あの驚き方も頷けるか。

 …………――ん? いや。

 魔法店のルイズだけはあんまり驚いた素振りもなかったな。

 まぁ、感情を表に出す人ではないから、そんなに驚くようなキャラにも見えないけど。


 各々がそれぞれに行動している中、ライアスが爽やかな笑顔で、俺に改めて挨拶を交えるように話しかけてきた。


「マナト。撤退した時は正直不安になったが、太陽属性持ちか。

 すげぇな!

 改めて、是非これからもよろしくな!」

「ああ。

 ……だがそんな事よりさ……」


 そんな事より気になる事がある。

 俺は視線をアイレスに向け、続いてライアスもその方向へ向く。


「アイレスは着替えた方が良いな」


 俺からの呼びかけに、アイレスはハッっと目の前の現実に目を向けた。


「あっ。

 ………………。

 …………誰か布貸してくれない…………?」


 目線を下に向け今の自分の姿を確認したアイレス。

 たはは、と照れながら頬から漫画汗を垂らすように誤魔化し笑いをしながら、

 自分の姿を腕で隠せるだけ隠した。

 地べたにへたり込んだ後に前に出した片手は、布を欲している様子がよく表われている。

 エロい姿ではあったが、先ほどの強力なモンスターとの激闘の後では、その間の抜けた所は、とても和む光景だった。


------------------



■用語解説



【スキル】

 魔法がMPを消費するのに対し、スキルの使用に制限はない。

 属性が関係しない技である為、戦術の工夫の為に取り入れる。

 基本スキルは誰でも習得できる。

 だが他のスキルには様々な条件がある。

 その条件の主な1つが職業。

 主に、シーフ系やクラフト系の技量が必要となる職業が、魔法よりもスキル習得を重視する。

 一度習得したスキルは、職業が変わっても、ステータスから消去しない限り忘れる事がない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

■〔最弱最強の主人公……は、結局最弱だった件〕
■〔お前が神だと? そんな俺は魔王だが? そんなことよりおっぱいだ〕
以上の短編作品もありますので、是非観てください。
期待値があれば、連載化も視野にいれる事ができます。

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ