0-1. ひきこもりは、お腹が痛い
初めて書く作品です。
アニメで冒険しているのを見る度、普段トイレってどうしてるんだろう?
と、自然に悩んでしまっていた事が書くキッカケになりました。
自分もよくお腹痛くなる事が多く、その経験から悩みながら書いてます。
作中でも、腹いてーとか、ウンコ・トイレとかいうワードが頻繁に出ると思います;
空は快晴、のどかな街並み……。
辺りはゲームのような幻想的な中世の風景が広がっている。
ここで過ごす人々の暮らしは、景色と相まって暖かみを感じる。
非常に好感が持てる風景だ。
主にレンガできた建物が沢山並び、
赤色の屋根と薄黄色い肌の外壁が灯のように明るい。
手入れの行き届いている青々とした木々も自然と清潔感がある。
施設の多さや、この建物と人口の密集具合からして、
ここはおそらく都会レベルだろう。
そんな街の中で俺は――
(ウンコしたい!)
俺は初めて異世界に来て、さっそくトイレを探していた。
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過敏性腸症候群《Irritable Bowel Syndrome》――
略称:IBSと呼ばれる。
この病気は、検査をしても炎症や潰瘍といった器質的問題が見つからない。
にも関わらず、大腸の機能に異常が起こる症状の総称。
特に不安を感じる事により、腹痛が発作的に発生する。
放屁や便秘、下痢が慢性的続く症状だ。
原因は、精神的なストレスと見られている。
未だハッキリとした治療法はない。
腹痛発作は、特定の場所や状況によって発生する事が多い。
例としては、通勤電車や会議、試験中といった所。
それ以外の何でもないような所でも症状は出てくる。
(また腹痛が起こってしまうかも?)という予期不安によって発生する事もある。
このせいで、外出や日常生活すらもままなくなってくる。
その為、生活の質が著しく下がり、日常において支障をきたす。
また、この悪循環から鬱など別の症状まで併発する恐れがある。
意外かもしれないが、日本人の人口の内、1/10人はこの病気にかかっているらしい。
つまり……学校で30人クラスであれば、
その内の1~3人くらいは、よくお腹を下しているという事だ。
そんな病気に――俺はかかっていた。
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【異世界転生前、自宅】
「ああ~~、お腹が痛い気がする~~」
今日もお腹が張っている。辛い。
俺は名前は、下 真十。
23歳無職だ。
高校卒業後、ずっとひきこもり生活を送っている。
――いや、大学行きたかったよ?
でなければ就職したかった。
でもさ……、しょっちゅうお腹痛くなってたら、まともに外も出れないじゃん?
人生終わってる。
というわけで、無事ニート生活なのだ。
死にたい。
――いや、何言ってんだ。
生きろよ俺。
頑張れよ。
でももう無理だよ、頑張ったもん俺。
病院で診察を受けて検査もした。
医者に処方された薬を言われた通りに飲み続けたさ。
8年以上続けても、ほとんどの薬で効果は出なかったが。
ネットで病気の治療法も何度も検索した。
でも大して有益な情報もなかった。
そんな中で、よく見る情報が……。
『死ぬような病気ではありません』
『治るよう頑張りましょう』
『病気とうまく付き合っていきましょう』
『不安を感じない生活を送りましょう』
…………。
できれば苦労しないんだよなぁ……。
勧められている食事や薬は、先生が処方した通りのほとんど試した事がある奴ばかりだった。
ネットで薬の評判を検索しても、やはり明確な改善に繋がっている報告はあまりなかった。
高校もこの病気の所為で不登校気味だった。
だが、それなりに明るく振舞っていたので友達はいた。
しかし、思い返せば地獄だった。
小中学では、大便をする=大罪レベルだ。
学校で大をするという行為は、からかわれ晒し上げられる。
今では、それも大きな社会問題だ。
実際にそれが原因で不登校になる子供も比較的多い。
さらには胃腸科の病院へおかしな注文をしてくる人もいるらしい。
ウンコをしなくなる治療をしてくれと。
それは流石に無理だろ。
高校になってからは、大をするにもからかわれる事は少なくなった。
周りは大人になっているからだ。
それである程度はマシになったが、やはり腹痛に悩まされる事自体が辛かった。
遠足・体育祭・文化祭・修学旅行・受験……。
色んなイベントがある度にやりたくなかったよ。
何故ならば――――――――、
ウンコしたくなるからね!!
あぁもう死にたい!
なんなんだよ!!
何でお腹痛くなるんだよ!?
ウンコ出るんだよ!?
まったくもって意味が分からねーよ!!
治る方法が見つからない以上、俺の精神はもう限界だった。
人生詰んでて涙が出る……。
ウンコも出る……。
それはそれとして……今日も今日とてお腹が痛い。
なのでトイレに行く事にする。
「腹いてぇ……」
しかし、今日の腹痛はいつもと違っていた。
いくらお腹に力を入れても大便が出ない?
……様子が変だ。
そう感じた瞬間、先ほどまで感じていたわずらわしい痛みが激痛に変わった。
何だろう?
直接腸を握りつぶされるような、または内側から腸壁が破られそうな感覚だ。
痛みの度合いとしては……、アレだ。
男なら金的レベルで痛い。
それ以上かもしれない。
「――――――――――!!」
いててててててててててててて!!
頭の中で痛みを叫ぶ。
あまりの苦しみに声が出せない。
「ぅえ! お”え”!! ……うえぇぇ……!」
呼吸ができない。
腹痛の痛みが直接喉と頭痛に来たかのように伝わってくる。
頭痛はガンガンする。
喉が詰まり、吐く事も吸う事すらも叶わない。
腹痛にその症状がプラスされているので尚更相当苦しい。
とにかく吐き気が酷い。
(あっ…死ぬ)
やばい状態だと直感で分かった。
痛みが引いてきたかな? と感じた時には既に意識は薄くなってきていた。
一瞬の事だっただろうが、時が遅くなったように感じた。
痛みを感じないのは、気絶に近付いている状態だからというのを咄嗟に理解できた。
(俺の人生、何もできずにゲームオーバーかよーーーーっ!!
マジでトイレしかなかった人生で終わるのかよーーーー!?
やだーーーーっ!!)
そんな俺の心の叫びも虚しく、
視界は段々と暗くなり、トイレの中で俺の意識は途絶えた……。