表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

SKのお話

レベル30以下でドラゴンを倒せ

作者: 紅藤


 !クエスト発生中!

幻影のドラゴンをレベル30以下で倒した者に追加報酬!

依頼者:謎の組織幹部

報酬:精霊の雫5個+ダマスカス5個(追加報酬)


 例によってスカイアドベンチャー、SKは、クエストを受けることを決心した。

 エントリーするのは、シーフなリーダー、舟長。回復も使える魔法使い、無属性魔法使いさん。みんなを庇う騎士、剣士。いざというときは即死で一撃、アサシン。物理攻撃は任せろ、斧戦士、の五人だ。

 つまり、いつものメンバーである。



「のこのことクエストに釣られてやってきた愚か者め! 依頼主はここにやってきた愚かな冒険者は蹴散らしていいと言っていた。つまり、貴様らは嵌められたのだ!」

「そんなことだろうと思いましたが、やってきました」

「倒したらちゃんと素材寄越せよ?」

「はいはい二人とも、敵の台詞を遮らないの。長くなっちゃうでしょ?」

「もう十分長いぜ。あくびが出そうだ」

「なら、さっさと倒しちゃいましょう、そうしましょう」


 いつも通りで、倒す気満々である。

 幻影のドラゴンは、そんな彼らを鼻で笑いつつ、そっとレベルを確かめる。今回の冒険者は……なんとレベル27! 確かに30以下で、とは言ったが、ここまで嘗められているとは。

 幻影のドラゴンが本気を出すと決心した瞬間である。


「その程度でワシを倒そうとはいい度胸だ! 始めから本気を出してやろう」

「はいはい本気ね」

「手間が省けてむしろ好都合だぜ」


 スカイアドベンチャーも負けてはいない。啖呵を切り、さっそく戦闘準備にかかる。

 1ターン目の行動が決まった。


「トランス」

「剛力」

「マジカルバリア」

「ヒーリングエリア」

「オレは魔法使いを『守護』するぜ!」


 誰も攻撃しないのは様子見か。幻影のドラゴンとしてはその余裕を吹っ飛ばしてやりたかった。

 ドラゴンの攻撃が来る。ドラゴンの尻尾が光らず唸る、シャイニングしないただのドラゴンウィップだ!

 ドラゴンウィップは尾が鞭のようにしなり、全体を攻撃する一般的なスキルだ。レベル27の冒険者ぐらい、図体もステータスも大きいヴィジョンドラゴンなら一撃で葬れるはずだった。


「へ、屁でもないわ!」

「女の子が屁とか言うのは良くないね」

「若干声が震えてるのは気のせいか?」


 余裕の態度は継続中で、誰も倒れてはいなかった。魔法使いのダメージは、剣士が肩代わりしてゼロである。何故に君は怯えてるんだ。もっと仲間を信用したまえ。

 2ターン目に入ってもパターンは同じである。ダメージパーソナリティーである魔法使いと斧使いが本気を出せるのは、3ターン目から。それまではどんなに敵が怒っていても耐えるしかない。


 トランス。剛力。フィジカルバリア。ヒーリングエリア。魔法使いを守護。

 ドラゴンの攻撃。ヴィジョンファング。己の名を冠した攻撃で斧戦士にアタック。しかし、効果はいまひとつのようだ。

 そして待望の3ターン目。


「死ね、フォースエッジ!」

「過激だなぁ、ベルセルクアタック」

「魔法使いさんを守護!」

「星の輝きを、ラッキースター」

「はいはい、ヒーリングエリア」


 本気の魔法使いと斧戦士の攻撃が、アサシンのスキルによって強制的にクリティカルになる。クリティカル攻撃は防御力を貫通する。つまり、何にも軽減されない生まれたままの威力が、ヴィジョンドラゴンに襲いかかることになる。

 幻影のドラゴンのHPは尽きた。


「その耐久、その威力! いったいどうなっておる。ただのレベル27ではないな! イカサマか!?」

「システムに言え」

「やはり貴様のスキルでは、単純にレベルの隣にある数値しか読めないようだな」

「死に逝く敵にならヒントを与えてやってもいいかもしれない」

「転生システムというのを知ってるかい?」


 転生とは、特殊なアイテムをつかうことで、ステータスそのままにレベルを1まで戻すことができる、再強化方法だ。

 高レベルで行き詰まり、なかなかレベルが上がらなくなったそこのアナタ! 是非、転生システムを使ってどんどん強くなろう!


「ま、まさか。貴様らの本当のレベルは……」

「そうだ、」

「327だったと言うのか! それなら勝てぬ訳だ……。いや、ワシはそれを言い訳にはせぬ! いつか、貴様らもほふるべき強さを得て……や……」


 最後の台詞も言えなかったドラゴンは光の粒子になると、天に向かって昇っていき、やがて消えてしまった。


「勝手に倒れた……」

「ホントは177なのにな」

「100レベ転生なんてやってられっかよ」

「精神にきちゃったのかな?」

「悪いことしたか」


 勘違いしたまま昇天したドラゴンを慮って、それぞれが言葉をこぼす。しかし、一通り冥福を祈ったらあとはいつも通りである。

 スカイアドベンチャーは、冒険者であるほかにトレジャーハンターでもあるからだ。


「さて、お宝お宝」

「よし、素材素材」

「似た者同士だよね、この二人」

「まあ、ドラゴンの巣っつったらお宝だもんな」

「へそくりも探さなきゃ……」

「へそくりがあるのはドラゴンではないような……?」

「何の話してやがる。さっさとパクってずらかろうぜ」


 おまえらは盗賊か何かか。

 とにかく、ドラゴンの巣で武器や防具やアイテムを回収した彼らは、ウキウキ街へと帰り……。当然の如く払ってもらえなかったクエストの追加報酬にプンスカするのであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ