第一話:魔王様は現実世界に転生したようです。
大変長らくお待たせしました!
「.....む.....」
目の前には機械質な建物がまるで空に向かって伸びた無数の竹のように建っていた。
「く、臭い...。なんだねこの臭いは...。」
鼻をつんざく刺激臭。目を凝らすと色々な食べ物の残りが入った大きめの袋に黒い鳥がたかっていた。
「冗談じゃないぞ!早く使者を遣わそう。」
究極魔法に魔力をつぎ込めたせいか、魔法が発動できない。魔王、ミラ・アディアス・アレキサンドラは魔法なしではただの少女、言ってみれば先週9歳になったばかりなのである。
「ぬぅ...。よし!こうなったら私自身で帰ってやるぅ!」
光を探す虫のようにミラは明るい方へと足を進めて行くと、そこには多くの人だかりが。その中央には男二人が熱唱している。
「私に見向きもせずにそこらの下僕を見るなど...許せぬ!」
ミラは憤激し、人混みに歩を進めた。
「おい!そこの下僕たち!よく聞けぇえぇ?」
少女は右手からきた男とぶつかってしまった。見た目からすると16になるだろうか、整った顔の青年がこちらをのぞきこんでいる。
「だ、大丈夫ですか?こちらの注意不足で...。」
「ええい!下々の人間が!」
「下々って君は皇族かい?正直言うとそんな風には...ね?」
「下僕は黙っているのだ!ってえぇ?私を知らないのか?」
ミラは驚愕した。いまに勢力を伸ばしつつ?ある魔王を知らないということがあるのか、とミラは思った。
「だいたい19時にこんな街中に来たら駄目でしょ?お父さんやお母さんはどこ?」
「父上はピタゴラス的な負の連鎖で、母上はバルコニーから落ちて死亡だ。」
「君のことはよくわからないけど信じることにするよ。とりあえず家に来なよ。」
「だ、誰が下々に助けられるか!私はいかんぞ!」
ーーあり得ない
ミラは真っ先にそう思った。ここに来てから何かおかしい。まるで世界がすべて変わったような...。
「ぐうぅぅーー」
なんというタイミング。不覚にもミラのお腹は音を立ててしまった。
「決まりだね。」
青年は笑みをこぼした。