その9
「妾は寝るぞ。灯りを消すのじゃ」
「あ、うん」
立ち上がり、壁に付けられたスイッチを切り替え部屋の電気を消す。
しかし、まいったぞ。
「…僕はどこで寝よう」
「なにを言っておる。妾の横で寝ればよかろう」
少し眠そうな声でそう言うと白子様は少しだけ壁際に寄り、スペースを空けてくれる。
これはシングルベッドなんだよなぁ。
いくら詰めてもらえてもどうしても身体は密着してしまう。
でも、こんな寒い夜だ。
布団も被らず、寝れば風邪をひいてしまうことは間違いない。
どうしたものか、と一人悩んでいるのを察してか白子様は、
「妾は寒さに弱い。密着して寝るのは妾にとって暖も取れるしちょうど良いことなのじゃ。遠慮せず横にくるといい」
そう言った。
おずおずと遠慮がちに布団に入れてもらう。
やはり二人で寝るには少し小さく、どうしても僕の身体半分ははみ出てしまう。
「ねぇ…白子様…」
「んぁっ♡…な、なな、なんじゃやめよ! 耳元でこそばい」
「い、いや、もう少しそっちにいけないかと思って…」
寝ているかと思い、顔だけ横に向けて小声で話しかけてみたのがいけなかったのか、ちょうど耳に息を吹きかける形になってしまったらしく白子様はちょっとエロい声をあげた。
「わかったから耳元で話すのはやめよ」
そう言って少し怒ったように詰めてくれる。
ぴったりとくっつく白子様の身体は信じられないぐらい柔らかく暖かく感じる。
女の子の身体ってこんなに柔らかくていい匂いがするんだ…。
異性と寄り添って寝る。
これが初体験なのは言うまでもない。
それはそうだ。
こんなことを何回か経験していれば僕はとっくに童貞を卒業している…はずだ。
「あ、ありがとう」
「…とっと寝ろ。この『すけべ』が」
白子様はそれだけ言うと寝返りをうって壁の方を向いてしまう。
すけべかぁ…そうかもしれないな。
今、横に寝ているのは神様だが、見た目は同い年ぐらいの女の子である。
例え、歳が僕より数百も上でも何度も言うが見た目は同い年ぐらいの女の子なのである。
長い髪から香るシャンプーのいい匂いとか柔らかい肌とかさっきのエロい声とか僕を誘惑する要素はたくさんあって、事実僕の心臓はバクバクと先ほどから鳴り止みそうにない。
どうか、白子様以外の神様、僕にラッキースケベをください、お願いします。
手を握り、星に願いながら僕は目をつぶった。
興奮のためかなかなか寝つきは悪かったが、やがて意識はいつの間にか微睡みの中へ落ちていった。
こうして初めてだらけの一日を僕は終えた。
ラッキースケベの方は特に起きなかった。
神様っての非情な方である。