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彼の告白

「女の子になりたいんだ」

運転席の彼は助手席に座っている私の目を見ず、

真面目なトーンでいった。24年間生きてきて一番衝撃的な言葉だった。生涯きっと忘れることはないだろう。この言葉をきっかけに私の人生観が一気に変わることになったのだから。




晩秋の候、紅葉も深紅に染まっている。私たちは仲良くなった社員同士で紅葉を見に行くことになっいた。毎日会社で顔を会わせるが、出掛けるのは初めてのメンバーだ。

「すっかり、散っちゃってる木もあるねぇ」

同期のかなえが言った。


「そーだね。皆の予定合わしてたら少し遅くなっちゃったしね。」私が答える。


私とかなえ、後輩男子の結城くんと敏和くんの4人のメンバー、まるでダブルデートのようだ。もちろんそんな関係ではなく、私とかなえの「綺麗な紅葉が見たい!」というわがままを叶えてもらい連れてきてもらったのだ。しかし、直接は聞いてないが、かなえは敏和くんを狙っているような気がする。


「でも、完全に落葉する前に間に合ってよかったですよ。あっ、ほら!あっちの池の方とか綺麗ですよ!」


本日の運転手の結城くんが言った。さっきからケータイでパシャパシャと風景を撮っている。いや、私とかなえも撮っているのだが、最近の若い男性はそういうものなのかな。二人とも細身で髪が長めで、肌も白い。いかにも"最近の若者"って印象だ。お父さんが嫌いそうだなぁ。


「凜!何してるの?置いてっちゃうよ?!」

慌ててかなえの元に駆け寄る。「ごめんッ!」


すぐ考え事に集中しちゃうのは私のくせだ。

考えすぎて周りが見えなくなり、本気で電柱にぶつかったこともある。気を付けなきゃね。


「うわぁ、綺麗。。」「本当に。。」


大きな池のほとりに囲むようにある深紅の葉。

夕焼けの赤みがかった空と紅葉の映る鏡のような池。鏡池という名前は聞いていたが、まさにぴったりだ。この感動は皆も感じているんだろうか。


「今日風なくて良かったねッ!」


横にいた結城くんに話しかけた。____


先程まではしゃいで写メを撮っていた彼はケータイを下ろし、食い入るように景色を眺めていた。


「たしかに鏡池って納得っすね~!風なくてよかった!吹いたら鏡じゃなくなりますもんねぇ。」


後ろにいた敏和くんが答えた。まぁその通りだ。

私は写真を撮った。やはりこの景色の感動は綺麗にとれないな。半減してしまう。

気づいたら結城くんも同じような事をしていた。


「この綺麗さは写真には残せないよね。」


ニコッと笑って話しかけた。


「そうなんですよね!なかなか納得できなくて!やっぱ、目に焼き付けとくしかないですかねぇ」


不満そうにケータイを覗いている。感性が合うっていいな。価値観が似てるってことにもなるし、趣味とかも合いそうだ。ただの後輩としてしか見てなかったけど、こういう男性も付き合ってみてもいいのかもしれない。たったこんなやり取りで好感度が上がってしまった。んー、元彼と別れて1年近く。仕事に打ち込んできてしばらく彼氏なんていらないと思っていたけど、思ったより恋愛に飢えていたのかもしれない。いや、弟と同い年なんてあり得ないか。友達くらいになれたらいいな。


「そろそろレストランの予約時間ですよ!向かいましょう!」


ちょいお高めディナー。美味しいご飯。美味しいお酒。お洒落な店内。目の前には爽やか男子2人!


あぁ幸せ‼


たまにはこんなご褒美もないとやっていけないよね。

ワインとお肉をほうばりながら雑談に勤しむ。

至福の一時だ。


「ねぇねぇ。私年下でも良いような気がしてきた。」

考えいた事を先に言われたのでドキッとした。

「ウケる。私も同じ事考えてたよ。かなえ、敏和くんちょっといいなとか考えてるでしょ。」

「やだ、バレた?私分かりやすいかなぁ。」

顔が赤くなっている。とてもわかりやすいよ。

「いいぢゃん。可愛いよ。素直な感じが好印象!」

本音だ。私はプライドが高いせいかポーカーフェイスを装ってしまう。

「えー‼本当?ありがとッ、ってことは凜は結城くんいいなって思ってるの??ちょっと意外だ‼」

「元彼が坊主の元ヤンだからね(笑)でも彼氏候補とかではなくて仲良くなりたいなってぐらいかな。私男友達ってあんまりいないしさ。」

「そっか。たしかに結城くんって異性って意識なくしゃべれる感じだしね。そういう関係もいいかも」

「下心とかなさそうな感じだもんね。てかちょっとしゃべり過ぎたかも!早く戻ろ!」

ちょっと長い連れションになってしまった。

女性は長くても許されるのだ。化粧直しとかあるしね。


そのあとカラオケへ行き、結城くんが高得点連発という快挙をあげ、私のなかで好感度もあがってしまった。しかも、結城くんも私に優しく、よく誉めてくれる気がする。____

いや、調子に乗らないほうがいい。これは私が先輩だからだ。勘違いしてはいけない。

気づけば男女二人ずつで座っている。かなえも敏和くんの横で楽しそうだ。上手くいくといいな。


「そろそろお開きにしましょうか。明日も仕事ですよ。」


結城くんもなかなかポーカーフェイスが崩れない。

運転手だからお酒飲んでないのもあるが、もっと本音で話してみたいものだ。

順番に送ってもらう。一番目は敏和くん。ほろ酔いだ。

「明日遅刻しちゃダメだからね!」

次は私のアパートの方が近いのかな。。


「ねぇねぇ敏和くんの連絡先聞いちゃった~♪」

「あっそっか、私づたいの連絡だったもんね。やったじゃん。」


「えー!敏和のやつ。かなえさんといい感じなんですか!?羨ましいですねぇ。」


______


「結城くん!次かなえの家でいいよ。」

「えっ?凜いいの??」

「いいよ。早く帰って敏和くんに連絡したら~?」

「なにそれ!やめてよ!照れる!」

ミラー越しにニヤニヤしてる結城くんの顔がみえる。


「りょーかいです。上手くいったら教えてくださいよ~先輩!」


「ちょ!結城くんまで!やめてよ~この年で恥ずかしいなぁもう」

かなえは耳まで真っ赤だ。純情だなぁ。私が男ならかなえにするなぁ、敏和くんにはもったいない。


暗い道を結城くんの白い車が走る。かなえんちは郊外の畑や田んぼのど真ん中、街灯も少なくて知らない人がくると迷ってしまう暗いの田舎道だ。蛙や虫の音しか聞こえない。これはこれで風流で私は気に入っている。


「鈴虫の鳴き声がいい感じですね。」

「さっ着きましたよ、かなえさん!」


ありがとね~!とかなえが降りていく。

「うん。また明日ね!また仕事頑張ろッ!」

「おやすみなさい。」


「さっあとは高瀬さんだけですね。」

「うん。今日は運転手頼んじゃってごめんね。あとちょっとだけお願いね。」

「どうってことないですよ。運転するの好きなんで!」


年下男子に恋なんてしたくないんだけどな。

今思えばそう考えてる時点ですでに好きになってしまっていたのかもしれない。


「今日は楽しかったですね。」

「うん。いつも顔合わしてるけど、違う場所に来ると違う一面が見れてそれも楽しかった。」

「ですよねッ、敏和とかなえさんもなんかいい雰囲気になってるみたいだし、僕も高瀬さんの違う一面が見れました。」

「んー?なにそれッ、私普段とそんな変わないと思うんだけどなぁ」

「えー、そうなんですけど、新たな一面発見ですよ。意外と植物が好きなんだなぁとか歌手の好みが似てるかもとか。もっとサバサバしてるかと思ったら結構おっとりしてるなぁとか。」

「あらッ、新発見が結構いっぱいあったね」

「ほんとですね。」

ハハッ、と二人で笑い合う。

「というか。毎日顔合わしてるけどさ、仕事での一面くらいしか知らなかったって事だよね。飲みに行っても仕事の延長みたいな感じだし。」

「ほんとそうですね。もっとよく知りたいし、知ってもらいたいなって今日思いました。」

「ふーん?そうだね。また皆でどっかいこっか。」


結構しゃべる子なんだなぁとまた新発見。

とてもしゃべりやすくて男性っぽくないな。

女友達と話してるみたい。こんな男の子もいるんだな。

「。。あの、もうすぐ着いちゃうんですけど、僕もう少し高瀬さんとお話したいです。」

「へっ?」突然の申し出に変な声がでてしまった。

「あの実は高瀬さんに相談したいことがあるんです。」

「相談??あんまり悩まないタイプって言ってなかったっけ?」

「あっそうなんですけど。ちょっと聞いてもらいたいことがあって。」

「うん?もちろんいいけど。」

「ありがとうございます。ここちょっと入りますね。」


そういって彼はコンビニの駐車場に入った。

「ちょっとトイレ行ってきます。」


_________なんだろうか。

相談。。改まって二人で。夜。二人きり。あっダメだ、なんか緊張してきた。やだなぁ、いままで先輩風吹かしてちょっと上から言ったりしてたのに。急に女の子な自分が出てきても困る。。落ち着け~、落ち着け自分。真面目な相談だよ、どうせ。ねっ。

でももしかして告白。。いやッ、車の中で必死に自分を落ち着かせようとしていた。


ガチャ。「お待たせしました~。はいッ、良ければどうぞ。ミルクティ好きっていってましたよね。」


おおっよく覚えてるな。

「ありがとう。」ホットミルクティ、ちゃんと私の好きなメーカーのやつだ。両手で受け取り、ぎゅっと抱き締めるようにした。

「あったかーい。」

変に緊張したままだ。私はどんな顔をしているんだろうか。


結城くんは私をじっと見つめた。

バタンッ ドアを閉めて前を向いて座った。

「あの、ですね。相談というのは。」

緊張してる私の反面、彼はポーカーフェイスのままだ。緊張してるようにも見えない。落ち着いたトーンでポツリポツリと、話始めた。


「僕は悩みってぜんぜんないほうで、皆ストレス溜まるっていうけど、僕はよくわからないんですよね。そういう話すると周りに羨ましいっていわれて、終いには鈍感なんだとか言われちゃって。」


!?

そりゃあそうだろう。なんだ?!天然なのかな。。この子って私が異動してくる前にパワハラで有名な上司に目をつけられてたって聞いたけど。訴えれるのではないかっていうレベルで新人がよく辞めてしまう。

×こんな男の子もいるんだな。

◯こんな人もいるんだな。

に訂正しよう。人類的に希少価値だ。


その辺を突っ込みたくなったが、やめておこう。まだ前置きのはず、最後にまとめて質問しよう。


「それで、そんな僕でもひとつだけずっと抱えてる悩みがあって」

「うん。」



コンビニの方を見ながら彼はいった

「女の子になりたいんだ。」


予想もしてなかった言葉だった。

私のドキドキを返せ。ってとりあえず思ってしまった。




初めての投稿になります!誤字脱字や、乱文等あるかと思いますが素人作品ですのでご了承下さい。もしくはご指導、ご鞭撻をよろしくお願いいたします。BLGTsに関心があり、差別や偏見をするつもりはありません。むしろ応援したいと思い書き始めました。

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