三日坊主の創造主
何か書こうと思い立った。
テーマを決めて、内容の行方を決めて、しっかり構成した。
けれど所詮、すべての綴りはすべて戯れで出来ていて。
そんな迷い筆の先に、物語は崩壊する。
創造主は、しばらく手先で遊ばせておいた筆を起き、刻を見た。
「もう飽きた」
書きかけの物語は突然、切り捨てられた。
まず、時が止まった。
約束されていたはずの「続き」、が訪れず、登場すべき者たちが次の行動をとる間もなく、止んだ。
つなぎ目となるはずだった世界の円環がぼろぼろ崩れ、細かな空の欠片は弾けて空気に溶けて行く。たいていはそこで再構成すれば何とか世界の様相は保たれるが、創造主は再びそれを描こうとはしなかった。
原稿の何枚かが破られ、暖炉の中に放られればビッグバンが起きた。
くしゃくしゃと丸められたページの中で、机の落書きが鉛筆を喰っている。
午後の珈琲が沸騰して凍って、豆になった。
鳥かごの中のカナリアが最期の一声を残し、ビルになった。
子供でも大人でもない人間が、狂ったままケタケタ笑いつづけてはオイオイ泣きつづけている。
昼も夜も一緒くたに訪れて、咲くか枯れるか戸惑う植物は、すべてから耳を塞いで心を閉じた。
預言者が預言者を頼り、訪れたは自己嫌悪と過去への陶酔。会社員が離島に飛ばされ、昼ドラを見ていた主婦は英雄になった。
アイシテルも、スキもキライも意味を成さない。男女は出会ってすれ違い、一緒に帰って殺しあう。
すべてが平等で不条理で、山がありすぎて谷は深すぎて。
くるくる回りながら飛行機が着陸し、コンクリートの導きのままにコアに向かって、三回地球が爆発し、七度めに四角い星が出来た。何かが発芽して萎れ、おひたしになって食卓に並んだ。
人々のケラケラやオイオイの中に光がともったとすれば、終わりという救いだけ。何度も死んで終わって、何度も生きて苦しんだ。
顎が痛かろうが喉が枯れようが、それが存在意義だと信じて疑わない。
終わりがあることを考えずに何かが始まることすらわからない。
お祭り騒ぎで死んだように静かになり、また裸で泳ぎだす。
さて、書きかけの最後のページに起こったこと。
創造主の目に止まった言葉。それは恐らく彼か彼女か、頭の片隅で探していたようやくの解決。
その世界の、まだ秩序ある片鱗はやがて次に始まる物語へ受け継がれていく。
芯の通った秩序に戻るまで、紅茶を二杯、角砂糖一つ。スプーンでよくかき混ぜてから、沈殿した日々も飲み干し。
すべては筆先の戯れ、名も無き世界の、片隅での出来事。
end
昔書いたもの。まさに戯言ですww
書きかけの物語はその後どうなるのかなあ、なんて。