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第7話。魔術工房サンパーニャ。

読んでいただいてありがとうございます。


お気に入り登録2000件突破しました!

 『魔術工房サンパーニャ』のバイトが決まって2日目。


 俺は理解した。1日は、本当のところ異常に長いんだってことを。


 子供が楽しみなことを「まだかな~まだかな~」とちらちら時計やカレンダーを気にしながら待つ長さじゃない。あれはあれで長いが、過ぎてしまえば一瞬だ。


 バイトのことを父と母に話したとき、驚かれながらも快諾を貰った。

 妙に嬉しそうな笑顔が印象的だった。


 もっと家族との時間を大切にしろ、とか言われると思って多少の説得の準備はしていたので拍子抜けした部分もあるが。


 ともあれ、そうやって急遽決まった俺のバイトなんだが。


 朝、最近恒例になっている朝ごはんを作り、それを幾つか昼の分として包み、家を出る。


 着いたのち、まず始めたのが店の片付け。

 汚いとまでは言わないが、何をどうしたいのかが良く分からない。

 区分けもされていないし、様々な道具も出しっぱなし。

 これがこの店のスタンスなのか、とお姉さんに言うとそんなことはないっ! と断言された。


 散らかしたのはお姉さん自身のせいなのに何故片付けているかは。

 まあ、職場があまり雑然としてるのも何だしこの環境で物は売り辛いだろう。

 正直、物の上げ下げだけでも結構しんどいです。STRやVITをどれだけ上げても不自然じゃないかが気になる。

 いきなり筋肉が盛り上がり全身がごっつくなったらまずおかしい。

 とはいえ、9歳の頃の俺は何をしていたっけ?


 鬼ごっこ、かくれんぼ、山、遭難、熊、鷹、……一般的ではなさそうな記憶の方が多すぎる。

 思わず参考にはなりそうにない記憶ばかりで埋め尽くされそうになるが、何とか通用しそうな記憶を引き出し、分類する。

 そういや、一日中友達や弟と遊びまわってたことが多かったっけ。


 と、こうやって脈略のないことを考えるのもそろそろ限界だ。


 1日が長い理由? 薄々、というか気づいてるだろう? 客が、1人も来ないからだよ!


 元々お姉さんに1日どれくらいの客が来ていたか聞いてみた。

 お姉さんはご飯を持っていったり、時々遊びに寄るくらいで1日中過ごしていたわけじゃないから正確な人数は分からないそうだが、多いときはひっきりなしに客が訪れ、売り場……販売スペースと言った方が良いか?

 そこの半分程度の客が入ることもあったそうだ。


 両親が突如消え、最初の1週間は残った商品を買う客もいてそれなりに客足はあったが、完売するとそれもなくなり。

 お姉さんの作った商品を並べると当然だが客足は途絶え、今は遠方からわざわざ来てくれる人と俺のような一見さん。

 それと両親が帰ってきてないかを見に来る常連が時々、程度らしい。


 この規模の店にしては結構な客入りだったらしく、客の間でも評判の高い店だったのだろう。


 ここでこの店の構造を簡単にだがまとめよう。

 レンガ造りの1階建てで、販売スペースが10畳ほど。畳なんて当然ないがおおよそ15~16平方mくらいか。

 カウンターが入り口から見て左側、棚が入り口から見て右側に3棚ほど並んでいる。

 その隣には平台が1台置かれており、正面奥にはさらに奥に繋がる入り口と、その両脇を固めるように置かれている平台がある。


 なお、採光用だと思われる穴が入り口のドアの上のほうに左右に1つずつ設けられていて、日本家屋で言う虫籠窓のようなもので封じられている。いや、名称は絶対違うんだろうけど。


 それと、奥が作業スペースだ。こちらは販売スペースの半分の5畳ほど。材料や道具が所狭しと並んでいたのでお姉さんと協力して出来る限りの整理はした。

 重い丸太や石は流石にどうとも出来なかったが。


 あとは小さいがしっかりとした造りの炉と作業台、幾つかの椅子に休憩するときにお茶でも入れるんだろうか。かまども、こちらも小さいが置かれていた。流石に窯はないようだ。


 そして、これが一番肝心だが片付けながらここが元々何の店だったかを聞いた。

 お姉さんが作ったものは恐らく自分が作れそうなものを選んで作ったのだろう。

 本来はもっと多方面か特化していたに違いないとあたりをつけたのだ。



 お姉さんから聞いてやっと理解した。『魔術工房』の意味を。

 魔術工房、それは魔術品と呼ばれる道具を生み出す職人が構える工房のことを指す。

 それを聞いて魔具と何が違うのか、と聞くとお姉さんはきょとんとした顔をするが、何故か得意げに説明を始めた。

 曰く、魔具は魔術を扱うための道具であり、特定の属性を使える魔術師のためにあしらわれた一品物であり、魔術品は魔力を持った人が作り出せる魔法のアイテム、らしい。

 その説明じゃいまいち理解は出来なかったが、唯一残っていた、というかお姉さんが父親から貰った腕輪を見せてもらった。


 守護の腕輪


 銀で出来た腕輪。安息の願いが篭められている。

 重量2。 DEF+1 MDEF+2 耐久【46/50】

 スキル『プロテクトLv.4』使用可能。


 鑑定した結果がこれであり、お姉さんにも聞き魔術品の意味がようやく分かった。

 これは、耐久の分でなら誰でも魔術の使える品なのだ、と。


 ただ、これを持っていても魔術ギルドには加入できないらしい。


 それが何故かと言うと、魔力を持たなくても魔術品は使えるが、自分にあった属性の魔具を持たないと魔術は使えないからだそうだ。


 随分と乱暴な理論だと思ったが、世界ではそれが普通らしくお姉さんはそんなこと考えるなんて変わってるね、と笑っていた。


 作れる職人も、魔具を作り自分で魔術を使えれば魔術ギルドに加入できるが、魔術品を作れるだけでは駄目だそうだ。

 その理由は魔力をもつ人間が作れば誰だって魔術品を作れる可能性があるから、だそうだ。


 実際この町にも他に何箇所かそういった工房が開かれており、魔術品は安ければ銀貨10枚からで手に入れられるほど一般的に流通しているものだそうだ。


 何かすっげえご都合主義だな、と呆れはしたものの世界がそうであるのならそれを否定する理由はない。


 ちなみに、魔術品を作る職人のことを魔術職人というらしい。

 ならギルド加入させろよ、と言いたいところだが、属性のある魔法を使えるものが魔術師と定義されており、魔術品で使えるものは武器を利用した技のスキルや無属性など、魔術師として認められるもの以外のスキルしか発現しないため住み分けがされてしまっているらしい。



 結果、俺は魔術師でありながら知らない間に魔術職人となってしまっていた。

 きっとおやっさんにはバレてるんだろうな。



「では、これからの魔術工房サンパーニャの基本方針を決めたいと思います!」


「え? これからってどういうこと?」


 本気で分からないのか首を傾げるお姉さんは可愛らしいが、今は気にしないことにする。


「お姉さんは今のままじゃ魔術職人にはなれそうにない。基本が出来てないからな。

 だから、まずはどんな方法で金稼ぎをするかを決めたいと思う。ある程度の資産がないと出来るものも出来ない。

 材料すら集められないのはお姉さんにとって死活問題だろ?」


「確かにそれはそうだね。それで、どうするの?」


「まずは、手軽に作れてそれなりに効力のあるポーション作りだ。

 ガラス瓶はそれなりに価格は必要となりそうだが、ポーションそのものの材料費はほとんどかからない。

 工房に幾つかガラス瓶も置いてあるし、元々作ってたんじゃないのか?」


「うん。お父さんが言うには色々な人が買っていくから常に置いてるって。何度か作ってるのは見たことあるよ」


「ならまずはそれを作っていこう。家とかに残ってたりしない?」


 残っていればそれを元に作っていったほうが良いだろう。

 俺のこの前作った初心者向けのものでもいいが、工房を構えている人だ。もっと質の良いものを作っていただろう。


「うん。少しだけならあるよ。疲れて帰ってきたとき家でそれを飲んで寝てたりもしたから」


「よし、ならお姉さんはそれを取ってきてくれ。俺は精製のための準備をするから」


 元気よく飛び出していったお姉さんだが、こけたりはしないだろうか? 怪我をしなければ良いんだが。

 まあ、俺も準備をしよう。用意するものはすりこぎとすり鉢。そして鍋に漏斗(ろうと)と紙だ。

 精製とは言っても成分を滲み出させるものだから料理とほとんど変わらない。

 お茶やコーヒーを淹れるのと一緒だ。

 水はこの店の近くにある共用井戸を使えば良いし、材料は効果を見た時点で判断すれば良いだろう。


 幾つかレシピはある。それに呼応するような材料も何とか見つけられるだろう。

 ついでに、ポーション用のガラス瓶自体は試験管のような形をしていて、コルクのようなもので蓋をする。

 試験管立てのようなものが幾つもあるし、販売するときはそこに立てておくんだろう。


 息を弾ませかえってきたお姉さんの抱えた袋の中には同じ種類のポーションが5個。これが家にあった全部らしい。


「お姉さん、これがこの工房で売っていたものと同じもの?」


「うん! 人気だったんだよ! 銀貨1枚もするんだけどすぐ売れちゃうの」


 なみなみと詰まった赤い液体を持って笑うお姉さんの顔に嘘はない。

 けど。これの効力は、どうなんだろうか?


 赤色ポーション

 HPを50回復する。重量1。


 いやいやいや。俺は謀られてるのだろうか? そういえば、父が前俺が作ったポーションが銀貨20枚で売れるとか言っていたような気がするが。


「お姉さん、これ飲んで良い?」


「残り少ないけど、ソラくんなら大丈夫だよ」


 ちなみに、バイトをすることに決まってからお姉さんの俺の呼び方はソラくんになった。

 まあ、呼ばれ慣れているし綺麗なお姉さんにくん付けされるのは悪い気はしない。


 とりあえず、一口飲んでそのまま瓶をカウンターに置いた。

 まずい、今何かしようとすると吐きそうだ。


 それだけ味は悪い。それに喉越しも最悪だ。喉に張り付く感じしかしない。

 恐らく、これは赤いということもあり何処にでも生えているゾーダ草を使っているんだろう。

 ゾーダ草は一年中何処にでも生えている草で、鮮やかな赤が特徴だ。

 似たような色でソータ草という草もあるのだが、こっちは毒草なので注意が必要だ。

 どちらも森を散策している時に見つけたもので、鑑定したものだから間違いない。


 ちなみに俺が前作ったポーションの原料であるリーンの草と雫花も何処にでも生えている草でリーン草がHPを、雫花がSPをそれぞれ回復してくれる。


 アイテムボックスの中にも大量に入れてあるし、ひとまずはそれを使うべきか。


「どうしたの? 大丈夫?」


「……苦い」


「そりゃそうだよ。ポーションはみんな苦いの。でも、飲まないと死んじゃう時に苦いから飲めないなんて言えないよ」


 そりゃ確かに。けど、こんなのを何十本もがぶ飲みできないだろ?


「みんな、どれくらい買う?」


 少し片言になっているのは、あまり口を大きく開けて長く話していると吐きそうだからだ。


「うーん……猟師さんは5本位かな。前に出て直接獲物を仕留める人とか、騎士の人は20本も買うんだって。凄い人はもっと買うって。

 そんな人はうちじゃなくて商人さんの所で買うみたいだけどね」


 値段はともかくとして、高々50しか回復しない回復アイテムを、それだけ少ない量しか買わないのは不自然だ。


「何で、そんなに少ない?」


「少ないって……ポーションは大きな怪我さえしなければ回復してくれるから20本も買う人はすごいんだよ?

 そんなにかさばらないけど、気をつけないと割れちゃうし」


 ガラスだからな。そんなに耐久性もないだろう。


 だが、俺ですらHPは5000を超えている。どうやって補っているんだ?


「もっと効果の高いポーションは出回ってる?」


「幾つかあるみたいだけど、高級品だよ? そんなの一部の騎士さんかすっごく強い旅の人しか買わないんだって。

 あ、でも今ここにはないけど青いのが銀貨3枚で売ってるんだって。確か……効果は赤いやつの倍以上だって言ってた」


 となると、青色ポーションでHP回復100以上ということか?

 色々仮説は出てくるが、答えにはならない。今は関係ないのでひとまず置いておこう。


「とりあえず、作れるだけ作ってみる。それを露店で売ろうと思うんだけど、露店って何か許可は必要なのか?」


「うん。この町で露店を出すときは商業ギルドでの登録が必要だよ。出す場所は何処でも良いんだけど、許可証がないと売っちゃいけないの。

 1エークで銀貨2枚。エークの頭に登録して、途中だったら分割だよ。でも、お店あるのに何でお店で売らないの?」


「店はこの通り客は来ない。売れるものがあるわけじゃないからな。いつ客が来るか分からないなら、人の集まる中央通りで売ったほうが良い。

 それで店の常連は話を聞いてくるだろ? それが常連同士の横の繋がりもあるだろうからポーションを欲しい常連客は買いに来る。

 その間に他のものも作れるようになれば店に客足だって戻ってくる。

 なら、お姉さんが今商売をしなきゃいけないのはここじゃなく、人の集まる場所だ」


 善は急げだ。幸いにもポーションは作るのは難しくない。

 多少時間はかかるが、ポーション作りは店で、ある程度できたら日にちを決めて広場で売れば良い。なら、まずは材料集めか。


「じゃあ、早速俺は買出しに行きたいんだけど。お姉さん、お姉さんの生活が苦しくならない程度で店の運転資金はどれだけある?」


「税金を払えるだけしか残ってないよ。それを考えないなら金貨2枚と銀貨20枚くらいだけど」


 少し考えてお姉さんが出した金額がそれだ。

 流石に俺の小遣いから店のものを買うつもりはない。それをすればお姉さんは堕落しかねない。

 お姉さんには無理をしない程度で店をどうすればいいか、考えて欲しい。


「じゃあ、銀貨10枚を買い物用に使いたい。もちろん、店のものであって俺個人じゃないけどさ」


「それくらいなら店におつりとしてあるから大丈夫だよ。すぐ行くよね?」


「あ、お姉さんは留守番して欲しい」


 そそくさと準備をしようとするお姉さんを止める。


「うん? でも、買い物行くんだよね?」


「そうなんだけど、2人ともいないのは拙いだろ? 俺は店番できないし。俺が品物は用意する。

 あ、ポーション用のガラス瓶って何処で買えるんだ?」


「そういえばそうだね。何処で売ってるかわかんないけど……ベディおじさんなら知ってるんじゃないかな?」


「分かった。なら、お姉さんは留守番しててくれ。……ご飯は置いてくよ」


 期待している、という表情は鞄の中だった。せめてそれくらいは俺に向けて欲しかったのに。


「うん! 気をつけてね。途中で転んでも泣いちゃ駄目だよ?」


「泣くことはないとは思うけどね。けど、良いのか?」


 うん? と首を傾げるお姉さんは本当に分かっていないらしい。


「俺に現金渡していいのか? お姉さんを利用して騙し取ろうとしてるかもしれないぞ?」


 そんな輩は少なくないだろう。ただでさえ美人で能天気なお姉さんだ。悪い男が近づかないとも限らない。


「ソラくんにならお金くらい盗られても平気だよ。それに、ソラくんなら大丈夫。信じてるから」


 美人の笑顔はずるい。恥ずかしくて何も言えなくなる。


「……行ってくる」


 出来る限り不満そうに言うと、満面の笑みを浮かべたままのお姉さんから銀貨10枚を受け取り、ベディの工房へ向かうことにした。





「ほお。サンパーニャで働き始めたのか。で、ポーション用のガラス瓶は何処で売ってるか、か」


「はい。昨日から……です。場所、知って、ます?」


 ついついため口になりそうな言葉を引っ込めて話すから途切れ途切れで我ながら辛い。

 こういった相手にはついつい気を許しがちだが、それは俺の事情。相手は快くは思わないだろう。


「ああ。グルンダの工房で作ってる。場所が分かりづらいからな、俺も一緒に行ってやろう」


「悪い、です。地図、とかあれば1人で」


「会った時から思ってたんだが、もう少し肩の力抜いて喋れんのか? ミランダと話してたときは自然だったろうに」


「口、悪いので……駄目、です」


 やはりあの時の会話は聞こえていたんだろう。まあ、普通に話してたから当然といえば当然だろうが。


「子供がそんなことで気にすることはない。ちっと位口が悪かろうが俺は気にしないぜ。というか、そうしなきゃ案内もせんし場所も教えん」


 このおやっさん、本当に良い性格してんな。


「分かりました。これで平気ですか?」


「今度は敬語かよ。本当にお前、平民のガキか?」


「ええ。ただ、お姉さんのように接するわけには行きませんよ。それで、工房は遠いんでしょうか?」


「あー。別に俺は気にしやしねえがな。まあいい。昼を食べた後で構わんか?」


「ええ。平気ですよ。俺もどこかで食べる予定でしたから」


「またあのパンあるか?」



 俺の食事は全部おやっさんに持っていかれ、俺はおやっさんのおごりでパニーニになった。

 ……今日のオムレツは自信作だったのに。


 そんなトラブルはあったものの、おやっさんに紹介されたのはサンパーニャで使っているガラス瓶を卸しているという工房だった。

 工房主のエイナという女性はミランダのご両親がいなくなったことも聞いていたが忙しくミランダのところにいけないことをしきりに気にしていた。

 その旨を伝えることを話すと、ようやく商談というか金額と何時納品するかを聞いて来たため、1つ銅貨20枚という話だったので、30個、銀貨6枚を支払いそのまま持って帰る事にした。


 ついでに話していて分かったことだが、ポーションはガラス瓶という割れやすいもので出来ている割には使う人間の扱いはぞんざいで、時には丸々割って駄目にしてしまうこともあるらしい。

 前衛でそれだと命の危険もあると思うのだが、あまり動かない後衛やバックアップが持ち歩くため必要最低限だけ持っているので何とかなっているとの事。


 おやっさんはこのまま残ってエイナと何か相談があるとのことなので、礼を言ってそこで別れた。



 その後は、ハーブとして売られていた乾燥したリーンの草と雫花を見つけ、購入。

 後は面白そうな効果が期待できそうなハーブも買っておく。ノノノ草やシャララ草。

 いかにも何かしてくれそうな名前の草だ。

 果物も林檎に限らず甘いものを何種類か購入し、両手一杯になったものを持ち帰る。

 あと、大き目の革があったからそれも幾つか購入した。ついでに色々と必要そうな道具も揃えておいた。道具類は露店だけではなく幾つかの店も回ったが、


 流石にガラス瓶と薬草は鞄に入れておいた。薬草でクッション代わりにするようにしたし、割れていないから問題なかった。



「ただいま、お姉さん」


「おかえりっ! ソラくん」


 俺が戻ってきたことにほっとしたような表情をし、駆け寄ってくるお姉さん。何だかんだ言っても心配だったんだろう。


「随分買ったねー……けど、果物あるよ?」


「まずいポーションなんて作りたくないから。これから作るけど、今は平気?」


「う、うん。大丈夫、だよ?」


 何だか妙に心配そうだが、俺の腕を心配しているのだろうか。

 まあ、作っているところを見たこともないだろうから仕方ないのだが。


 ぎりぎりだが、残ったお金はお姉さんに返した。お駄賃でいいよ、とお姉さんは言ってくれたがそうもいかない。こういうことはきっちりとしないといけないのだ。


 今回は乾燥したリーンの草だけで作る。ほとんどの人はSPを使うこともないだろうし、雫花は必要ないと判断したからだ。

 雫花を使うことにより相乗効果もあるので本当は使ったほうが良いのだが、今回は様子見だ。


 リーンの草をスリコギとすり鉢ですり潰し、液体っぽくなってきたら同量の水を沸かし、沸いたところで入れる。

 その時点で色は緑から黄色く変化する。

 ただ、臭いがきついので置いてあった絞り機で切った果物を絞り、その絞り汁をろ過し、果汁だけを入れる。

 お姉さんは信じられないものを見るような目で俺を見るが、今は無視する。


 暫く煮詰めた後、きつい臭いがなくなったのを確認して、漏斗に紙を張り、ろ過する。

 本来は直接瓶詰めするのだが、今回は試作品だ。ポーションの瓶を再利用することは考えていないので木のコップに注ぐ。俺とお姉さんの分だ。


 そして出来上がった液体を鑑定すると、


 特製ポーション(黄)

 HPを150回復する。 重量2。


 重くなったのは木のコップに入れたからだろう。瓶に詰めれば重量は他のものと変わらないはずだ。

 それにしても、今回も特製ポーションになってしまった。この世界にないレシピだからだろう。


「では、試飲と行こうか?」


 ごくり、とお姉さんが喉を鳴らす。喉が渇いているからではなく、緊張しているからだろう。


 一口目は恐る恐る舐めるだけだったが、驚いたように目を見開き、ごくごくと飲み干す。

 俺も飲んでみよう。口当たりは悪くない。むしろ、ミックスジュースに近い味だ。

 その割りにジュースにはないポーション独特の身体を癒す力が全身に巡っていくのが分かる。


「美味しい! でもちゃんとポーションになってる! ソラくん天才だよ!」


 天才は言いすぎだと思うが、俺もこれはいけると思う。


「最初ハーブを潰して煮出した時はどうなるかと思ったんだけど、何でこんなのが出来るの?」


「薬草を潰してその成分を抽出するのがポーションだろ? 後は味を調整するために果物を入れただけだよ」


 またもお姉さんが首を傾げる。どうかしたのか、と聞くとお姉さん曰くポーションは生であり、加熱することはないそうだ。

 だから苦くても何とか我慢して飲むし、どろどろしたものを無理やり流し込むからあまり多用はしないそうだ。

 だが、一本あればほとんどの傷は回復してくれるし、万全の体調にしてくれる。

 だからみんなまずくて臭いポーションでも愛用しているそうだ。


 ついでに、これが赤色ポーションの3倍の効果を持つものだと教えたら驚かれた。

 そんなものは超高級品で市場では出回らないものだそうだ。


 さて、これを市場に流すかどうかが問題だな。これの半分の効果であれば問題ない。

 ちょっとだけ割安感を出せば市場を大きく荒らすこともなく売れるだろう。

 販売数を制限すれば儲けも出てサンパーニャの名前も知れるだろう。


 だが、これをこのまま出すのはまずい。

 きっと今更なんだろうが俺は少々規格外れらしい。

 少なくとも一般的な所からは外れているだろう。それが具体的にどうずれているか分からないが、ずれていることは認識しておいて問題ないだろう。


 俺にとっては初心者ポーションでしかないこれでも、この世界では高級品。

 売るにしても、ある程度の実力者に回すしかないだろう。それも、信頼の置けそうな。

 ともなると、効果をあえて落とすか素材を変えて作り直すしかない。

 とはいえ、何でこれだけの効力があるものが単なるハーブとして出回っているんだろうか?


 考えても仕方ない。出来てしまったものは出来てしまったもので仕方ないのだ。

 残る草でもどういった効果が出るか、それを確かめた上で判断しても良いだろう。





 結果、出来たものは特製ポーション、白、水色、黄緑、緑、赤、桃の6種類だ。

 効果はそれぞれ順に、白【HP80回復】水色【HP250回復】黄緑【HP50、毒を回復】緑【HP50、麻痺を回復】赤【SP50回復】桃【SP150回復】と言った具合だ。

 お姉さんと相談し、現状市場で出回っているものを考え特製ポーション白、黄緑、緑を流通することに決定した。

 ちなみにそれぞれの味は1つの果物を使ったため、白は桃、黄緑はみかん、緑はオレンジ味だ。

 似たような果物であって、それそのものではないのでご注意を。


 他のポーションは製法だけレシピにして保管することにした。売るわけにはいかないし、破棄するのももったいない。

 お姉さんは俺が持っていればいいとは言ってくれたがそういうわけにはいかない。あくまで店のお金を使ったものなのだから。

 お姉さんは俺に甘い気がする。どうしてだろうか。


 そういった話し合いも終わり、まずは全て銀貨1枚と銅貨70枚で売ってみて様子を見ることにし、3種類のポーションを10個ずつ瓶に詰め、蓋をした。

 少し割高なのは飲みやすいからだ。安くしすぎて今までのポーションに戻れないとなるとそれこそ目も当てられない。

 人は一度高い水準に上がるとなかなか低いところに戻れないからだ。


 それともう1つ、商品を作ることにした。それはポーション用の保存ベルトだ。

 ガラス瓶で割れやすいのにいい加減な保存をするから割れる。なら、多少いい加減でも割れないような保存方法を考えれば良いという理屈だ。


 使うのは大小様々な革。ある程度大き目のものは買って来たが、やはりそこは大きさがバラける。

 そこで、まず型を作りそれに対して切り取っていく。型を作るのは俺の体格では小さすぎたのでお姉さんに協力してもらった。……お姉さんの香りにほんわかしたのは内緒だ。

 そして、切り取った革を縫って強度を高め、上は太く、下は細くした革を左右5本ずつ縫い合わせていく。

 そこに斜めになるようにポーションを差し込めるようにした。

 動いても外れず、けれど抜くときは楽に抜けるようにするのは少し難しかったが俺が作るのは基本的なものだけで良い。


 いずれはこれも広がりもっと良いものが量産されるだろう。俺が作れるのは精々最初の一工程だけ。

 改良するのはそれが得意な人がすれば良いと思う。


 2セット、お姉さんと協力しながら作り終わったのは日が沈みそうな時間だ。

 作っている最中は色々なことを喋った。特にたいしたことは話してないが、家族以外とこんなに長く話すのは村長以来か。

 作業自体は大変だったが、少し楽しかった。

 商業ギルドで露店の登録もしたかったが、こんな時間ではもう受け付けていないだろう。

 寂しそうなお姉さんを残して帰るのはやはり胸が痛むが、ここはまだ越えてはいけない領域だろう。



 というわけで、今日の出来事を帰って父と母に話した。

 その中で分かったことだが、母はどうやら俺のことを心配していたらしい。父は信用していたそうだが。

 世界は俺が思っているほど万能でも強くもないとのこと。そうは思わないが、ある面ではそういうこともあるのだろう。

 やはりまだ実感はわかないが、それで何か悔やむことがあるといけない。心がけはするようにしておこう。


 また、商業ギルドには父も付いて行くそうだ。保護者同伴でなくても良いとは思うが、念のためらしい。

 俺とお姉さんでは不備があったら困る。お姉さんが了承してくれれば、という条件で父に了解を伝えた。


 色々と今日はしたはずだがあまり疲れていない。ポーションを試飲で飲みまくったせいだろうか?

 ステータスの問題もあるが、暫くはポーションを色々と作ってみるのも良いかもしれない。

 配分次第では効果の変化も期待できるだろう。


 そういえば、意図せず母に言ったポーション売りになるということが現実味を帯びてきた。

 思わず笑ってしまったが、今日は気持ちよく眠れそうだ。




 翌朝、こっちに来てからは珍しく早起きしている父と朝食を取り、一通り準備をしてサンパーニャに出勤した。

 お姉さんは見慣れぬ大人が来た事で客が来たのかと喜んだが、俺の父と知ると一転してわたわたとし始めた。


「い、いつもソラくんにはお世話になってます! あ、わ、私はミランダと言いますっ!」


 腰が折れるんじゃないかと思うくらい、一気に背中を曲げて頭を下げるお姉さんに父も苦笑する。

 ウサギは骨が弱いのだ。無理をするなといいたい。


「元気な子だね。僕はトニー、ソラの父親をやってます。これからも息子をよろしくね」


 妙な言い回しだが、まあ一応は店主になるのだろうから正しいのだろう。


「お姉さん、父がギルドに付き合ってくれるそうだけど平気?」


「えぇっ?! そんな、悪いですよ!」


「一応何かあったとき困るからね。ミランダさんはどこかギルドには所属しているのかな?」


「鍛冶師ギルドにはお父さんの勧めで入っていますけど……その、私あまり上手くなくて……」


「鍛冶が出来るなんて凄いじゃないか。ああ、だからここは魔術工房なんだね」


 うんうんと頷く父。魔術工房がどういったところか知っているようだ。

 魔術師の知り合いもいるというし、そういった方面に明るそうだ。


「お姉さんも父にあまり遠慮する必要はない。父はこの数日暇をしていると母も言っていた」


「こら、ソラあまりそういうことは言わないように」


 父親の尊厳というものだろうか? 暫くは良いといえど、働いた方が良いと思うのだが。



 そういったやり取りを見てお姉さんも落ち着いたのか、父の同行に了承し3人で商業ギルドへ向かうことにした。




 道中、ギルドのことも少し説明を受けた。


 ギルドは前にも説明を受けたが、それぞれの職業ごとの組合だ。

 魔術ギルドや狩人ギルド、建築ギルドや向かっている商業ギルドもそうだ。

 ギルドに加入する条件は1つ。それぞれの職業についているかその資格があるか、だ。

 たとえば魔術ギルドであれば魔術師であること、父の就いている狩人ギルドは猟師として実際に活動していれば猟師でなくとも入れるし、お姉さんの鍛冶師もそうだ。


 ただ、商業ギルドは何かを売っていれば加入できるし、ギルドに加入していなくてもお金を出せば露店は開ける。

 加入していれば店を開くときや売るときに融通してもらえるし、実績を残せば特定の商品を安く仕入れることも出来る。

 お姉さんの父親が商業ギルドに加入しているそうで、今回はお姉さん自身も加入する予定だ。


 ついでに、俺が入ろうとすると魔術ギルド、鍛冶ギルド、錬金術師ギルド、商業ギルドと4つのギルドに加入できそうだ。

 なお、ファンタジーものとしては有名な冒険者ギルドだが、実はあれには加入条件がない。

 つまり誰にでもなれるのだ。その分、他のギルドと違い助成的なものは少ないため加入者は他のギルドに比べ絶対数は少ない。


 ただ、旅するものにとってそれは有効だ。

 銀行の利用、数は少なく質はあまりよくないが提携している宿の優先的宿泊権、そして提携ギルド同士での情報の共有。

 色々なところを回る冒険者が多いため、その町では手に入り辛い道具や素材も入ることも少なくないため需要は多い。

 ただ、安全に国や街道を行き来する手段がほとんどないため好き好んでなる人間は少ないとの事。


 交易を行う商隊を守るのは基本的には傭兵。そこの住み分けもある程度だが、出来ているらしい。


 そんなことを父から聞きながら商業ギルドに到着する。サンパーニャから各ギルドが密集した地域とは離れている。

 おおよそ、話しながらとはいえ30分ほど着くまでにかかってしまった。


 なお、各ギルドは他のギルドに重複して登録できるためか基本的な構造はほとんど変わらない。

 入り口を入って左に受付カウンター、素材の売買は2階、3階は裏方のギルド職員の部屋、などだ。

 入って右側はそのギルドによって若干変わるがほとんどは待合所だ。生産系ギルドでは作ったものを展示している場合もあるそうだ。


 商業ギルドは、流石商人御用達といったところか。受付は一杯だし、待合所もそこそこに人がいる。

 お姉さんが言うにはこれでも少ないほうだそうだ。



 散々待たされてかかった時間はおおよそ20分ほど。

 まるで病院にかかったような感じだったが、お役所だったりするような場所ならそんなものだろう。

 簡単な説明を受け、お姉さんは登録をし、露店の出店許可の札を貰う。この札は盗難防止の符もかねており、なくさない限り有効なのだそうだ。

 ちなみに、複製をしたら罰則対象となるらしく絶対しないよう強く言われた。




 父はこの後用事があるから、と商業ギルドを出たところで別れ、俺とお姉さんは露店で適当に食事を買い、サンパーニャへ戻った。

 買ったものはサンパーニャで食べることにした。お姉さんが立ち食いはあまり好きじゃないといったからだ。

 毎日が祭りのようで俺は楽しいのだが、ここは雇い主に従おう。

 串物は食べ歩きが一番美味しいのに。



 そして、食べ終わった後また幾つかのことを決めることにした。

 1人にどれだけ販売するかということとどれくらいの頻度で露店を出すかということだ。


 1人につき今回は3本、今後は一度に販売する量を100本にし、1人5本限定にすることにした。

 頻度は1週間に2度、最初と3日目。この世界の1週間は6日なのでそれくらいがちょうど良いだろう。



 そう決めると、お姉さんと一緒に今度はグルンダの工房へと向かった。

 出るときに中央広場で出店中、という書置きをドアに引っ掛けておいた。これで問題ないだろう。


 目的はお姉さんを工房主に会わせる事と、定期的にガラス瓶を卸してもらう契約を結ぶためだ。

 エイナは工房にお姉さんが来た事に喜び、様子を見にいけなかったことを謝罪した。

 お姉さんがそれで使い物にならなくなったので、仕方なく俺が交渉。

 一週間に一度250ずつ、1つ銅貨18枚で仕入れる契約を結んだ。

 安くなったのは定期的に一定量を仕入れることでグルンダの工房も収入が大きくなるからだそうだ。

 もしそれを打ち切る場合は1ヶ月前に連絡をし、最低半年は仕入れることを書面で交わし不備がないことを確認してから今日の日付を書き込み、契約した。


 そして中央広場に向かい、場所を確保する。

 偶然空いている場所をみつけ、隣に念のため確認を取る。偶然にもその隣の人は俺がこの町でお土産を買ったときのお姉さんだった。

 とはいえ、あの時の俺は今の俺の姿じゃない。簡単に挨拶だけをして露店の準備を始めた。


 地面に広げた布に試験管立てを置いてポーションを挿す。その隣にポーション用のベルトを置き許可証兼防犯の符を置き、準備完了だ。


 とはいえ、俺もお姉さんもそういった呼び込みは素人。

 適当に声をかけはするものの何と言って良いか分からず、座り込んだままお客が来るのを待った。


「お? サンパーニャの嬢ちゃんじゃねえか。どうしたんだ、こんな所で」


「あ、ええっ!? あ、のその。えっと」


「今日は臨時でポーションを売りに来たんです。サンパーニャは一時休業中です」


 慌てるお姉さんを他所に、サンパーニャの常連らしき、猫の獣人の兄さんに対応をする。


「ほー。ジェシィがいないからって随分と苦労してるみたいだな。で、売り物はこれか? 随分と見たことのない色をしてるが」


「お姉さんが頑張って作った特製ポーションです。

 白は赤色ポーションより体力を大きく回復、黄緑は体力回復に解毒、桃は体力回復に麻痺を回復です。1つ銀貨1枚と銅貨70枚ですよ」


「ちょっと高いな。で、こっちの革は何だ? 腰に巻くものみたいだが、変な飾りをつけてるのか?」


「これはサンパーニャの新商品で、ポーションを装着できるものですよ。これは飾りではなく、ポーションを挿して使うものですよ」


 実際に一本ポーションを挿してみる。


「こりゃ面白いな。ふうん、簡単には動かないみたいだな。こっちは幾らだ?」


 抜き差しをしたり、振ってみたり。男は興味を持ったみたいだ。これはいけそうか?


「こちらは銀貨1枚です。お兄さんが最初のお客様なので、ポーションを買っていただけるようでしたらお安くしますよ」


「嬢ちゃん幼い割には中々商売上手いな。よし、なら俺が最初の客になってやるよ!」


「お兄さん男前ですね! ほら、お姉さんもお礼を」


「わっ! あ、ありがとうございます!」


「なら、この白と黄緑のやつを貰うか。あとこの革もな!」


「では、白色と黄緑とポーションベルト。あわせて今回は銀貨4枚でいかがでしょうか」


「おし。買った! ほれ、ちょうどだ」


「お買い上げありがとうございますっ。もしよければ他の人にも話してくださいねっ」


 銀貨4枚を受け取り、頭を下げ見送る。さて、これで最初の一歩目、と。


「すっごいあっさり売れちゃったね! でも、ソラくん女の子に間違われてなんで怒らないの?」


「客に怒る必要はないだろ? それでトラブルになるよりはずっとましだ」


 正直、少しぴくっとだけはしたけどね。けど、そんなことで俺は怒らない。

 前にバイトでやらかしたことがあるからだ。俺が首になるだけならともかく、他人を巻き込んだことがある。

 それで、少なくともバイトの最中は少々のことでは怒らないことに決めた。




 その後、3時間ほどで完売。3つ以上買おうとする客も中にはいたが、しっかりと話をして納得してもらった。

 ポーションベルトに至っては2人目の客で売れた。まあ、2つしか作っていなかったから仕方ないが。

 思った以上に需要はありそうだ。少しなら供給量を増やしても良いかもしれない。


 今日の売り上げは5270R(ルード)銀貨52枚と銅貨70枚分だ。


 ポーション売りとしてもそこそこの売り上げだそうでお姉さんは満足そうだ。

 元の量が少ないこともあり、非常識な売り上げにはならかなったようだ。少し安心する。


 すっかり寂しくなった露店を片付け、しまう。


 まだ日は高いが、売り物がなければ何も出来ない。サンパーニャに戻ることにした。


「ホント凄いよ! ソラくんすっごい!」


 お姉さんはさっきからその調子だ。こんなに順調なのが嬉しくて仕方ないのだろう。


「いいから、お姉さん。手止めないで」


 お姉さんには自分でもポーションを作れるようにしてもらっている。

 簡単なものだが、作れないと困るのだ。


 ついでにポーションの各レシピは紙におこしてはいない。

 一応盗難防止の意味を持つからだ。俺が覚え、お姉さんに教える。

 材料の質や気温の変化で若干変化するからだ。そこは料理と一緒だ。


 だから繰り返し作り覚える。その一歩手前の状況だが。

 お姉さんは不器用だ。お姉さんが作った道具を見れば分かる。

 だからこそ、単純なことからはじめ自分の出来ることを増やす必要があるだろう。


 出来れば魔術職人として腕を磨いて欲しい。正直、俺のためでもあるんだがそれ以上にお姉さんがこのままなのは忍びない。

 お姉さんのご両親が戻ってくればそれでいい。職人としての技を勝手に教えたことで怒られるかもしれないが、そこは甘んじて受け入れよう。

 だが、もしそうでない場合。お姉さんは生きる術を自分で磨かなければならない。

 他の工房で働くつもりがなく、ここを人手に渡すつもりがないのなら自分でその手段を持たなければならないからだ。


 なら、俺が出来る範囲で協力をしよう。

 少し、俺に似たところがあるこのお姉さんを。





 と、それで終わっていたなら良い話で済んだのだが。

 お姉さんの器用さはないにも等しいらしい。


 さすがに薬草を磨り潰すことには何の問題もなかったが、問題はその後だ。

 まず、分量を計らない。沸騰してから入れるようにいったものを待たない。

 加えるのは果汁だけというのに絞りかすも入れる。

 かつ、ろ過も半分近く一気にぶちまけ、紙が破れる。


 出来上がったのがこれだ。


 毒薬ポーション

 飲んだものに状態異常【猛毒】を付与する。


 ……どうしてハーブと水と果物だけでそんなものが出来上がる。

 別の才能でもあるんじゃないかと、本気で恐れたが恐らくは天性のどじなんだろう。


 暫くは俺が作ることを優先し、お姉さんには1つずつの工程をクリアしてもらうことにするとしよう。



色々と物語がこれで動き始め、るといいなと思っています。

とはいえ、今回も説明が多かったです。

ギルドのことやらポーションのことやら。

主人公の世界の見方が少し変わってきていますが、これがどう作用するかはこれからの展開を見ていただければと。


評価やつっこみ等ありましたらお願いいたします。


2011/9/15

誤字等を修正。ぽちょむきん様、独言様、エイトール様ありがとうございます。


2011/9/18

誤字等を修正。haki様ありがとうございます。

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