第31話。鍛冶師のお仕事
結論としては当然すぎるが、無駄に混乱を招くだけのため今回のことは誰にも言わない。ということに落ち着いた。
本来ならジェシィさんにも相談すべきではないんだが、サンパーニャに居てもいいかどうかがそもそもの疑問だったため、話しても問題のなさそうなジェシィさんに話を通しておくしかなかった。
お姉さんは、良くも悪くも素直過ぎて腹芸や隠し事が出来るタイプではない。むしろ無理をすると体調を崩しかねない。
工房主たるお姉さんに言わないのはそれ以上に、お姉さんの性格上、このことでまた外野から面倒なことを言われた時に悩み続ける可能性があるためだ。
ジェシィさんはそこは気にしなくていいと言っていたが、お姉さんにはこれまで世話になりっぱなしだし負担をかけるようなことはわざわざしたくない。
そんな話を軽く30分ほどで切り上げ、改めてサンパーニャに戻ることにした。アリバイ、というか偽装工作も兼ね、幾つかうちにある材料を2人で運んだが、前に作ったキャリーカートを使っているためほとんどジェシィさんは手で上の荷物が落ちないように押さえているだけだ。
というか、ジェシィさんのリハビリもだいぶ進み、最近では物を持ったり掴んだりする位のことであれば特に違和感もなく行えていると言っているため、俺が居なくなってもどうとでもなるだろう。
そうなると俺がどこでどうしたらいいか、というかどこまでしていいかわからなくなるため色々保留にしている、というのが現状なんだが。
サンパーニャに戻った結果。それはある意味、俺がしばらくの間サンパーニャを離れていた結果があるともいえる。
それはある意味で当然であり、ある意味では意外でもある。しばらくの間で、サンパーニャで作られるようになったのはポーションと魔術品以外に、符が大量に出来るようになったらしい。符そのものは溶液に特製の紙を浸すことでほぼ出来る。
溶液は商業ギルドや鍛冶師ギルドでも取り扱っているし、紙も商業ギルドや、変わった所では紡績や大工などでも作るし、冒険者ギルドでも購入することが出来る。そういった意味では、特殊な溶液や紙という意味では錬金術師がトップを行くが、この町ではむしろ他のギルドから購入し、必要な分だけ決まったものを作る、ということの方がよく行われていることらしい。
魔術師はそれを魔術と認めていないためそれをどうにかすることはないし、曲がりなりにも上位としているらしい俺の領域にまでくるものではないが、一定の利益をもたらすことの出来るもの、らしい。
……一応、俺がレシピを作って渡したものだから、俺を無視してどうというものではないが、何だろうか。この胸に去来する寂寥感というか、何というか。
まあ、予約分もほとんど捌けており、一部俺がした方がいいらしい所だけは分けておいてくれたようだから、それをしているんだが、何というか、やりづらい。仕事に手抜きはしないし、選り好みはしないんだが、ジェシィさんはやはり俺の事が気になるのかチラチラ視線を向けて来るし、そんなジェシィさんが気になるのか、お姉さんも俺を見てくる。
仕事をある程度片づけて、昼時になったころ。外に食べに行くついでに、鍛冶師ギルドに寄ってくることを告げる。
今日は若手の研修を行う必要があるし、ギルド長にも話を聞いておきたい。
マイアにも話を聞く必要があるんだろうが、……あの姿を見られたと思うとしばらく顔を合わせるのに抵抗がある。
正直、あの時の事を客観的にでも思い出そうとすると割と頭が痛い。若干頬が熱い気がするが、きっと気のせいだ。
「あれ、ソラさん。珍しいっすね、風邪っすか? 王都帰りって聞いてましたけど、今年の風邪は長引くらしいっすよ?」
「……風邪じゃないから大丈夫だ。今日はお前か? 参加者は」
「あたしとミミン、それにラージの3人っす。今度こそ、ソラさんにぎゃふんと言わせてやりますっすよ!」
この怪しげな敬語のような何かを使うのは、鍛冶師見習いだ。鍛冶師ギルドに所属する中でもまだ1年未満で、そういう意味では俺と同期のようなものだが、年齢に関しては目の前にいるリリオラの方が上だ。
通常、15歳から見習いとして働く。お姉さんやリリオラのような家が商売をしている場合は特例としてもっと若くから店の手伝いを行う場合があるが、最初は本当に軽い手伝いだけだ。お姉さんは必要に駆られて仕方なく、ということで店番だけではなく店の切り盛りをせざるを得なかったということ自体、通常はないらしい。
そういった例外をおいても、職人が多いこの町でもやはり15歳を待って見習いから始める。だが、同じ初めで全く関係のない所から取った見習いがその家の直系子弟が全く手も出ない、ではその家の名誉にも関わる問題のため、見習い以前として手伝いをさせることもあるらしい。
ミミンはどちらかといえばそれ寄りで、15歳になった半年前から本格的な修行を始めているらしい。らしい尽くしなのは、全てこのリリオラから聞いた話だからだ。
リリオラとミミンは幼馴染、というかもっと小さなころからの遊び友達で、ラージはその保護者役だったらしい。
そういった意味ではトール達幼馴染集団と同じようなもののようだが、1人少ないだけで随分と違うようだ。
あの4人は上手く色々回っているっぽいが、こいつら2人は悪だくみの時こそ結託するが、それ以外はリリオラとミミンが頻繁に喧嘩をしてはラージに諫められる。ラージが鍛冶師になったのも、半分以上こいつらの舵取りのためだろう。
「ソラさんをぎゃふんと言わせるのはこの私よ!」
と、話をすれば影、というか出番を窺っていたミミンが飛び出してきた。さっきから『気配探知』で引っかかっていたから俺には何の効果もないが。
「はぁっ? ミミンがこのソラさんをぎゃふんと言わせるなんて10年早いっすよ! ソラさんも何か言ってやってください! っす!」
「……じゃ、今日中に鉄のインゴット100本、純度は99%で打てたら驚くな。素材は置いてあるから、自由に使ってくれ」
愕然とするリリオラにミミン。こいつらの今の腕で昼から今日のここの使用期限までとなると、精々打てて10本。純度はよくて80~95%といったところだろう。
「いやいやいや! そんなの一流の鍛冶師でも無理っすよ!」
「そうよ! そんな無理なこと言われても! そもそもソラさんだって出来るんですか?!」
無理だ無理だと言い張るリリオラとミミンを黙らせるため、置いてある中でも粗悪な鉄鉱石を適当に拾い上げると炉に火をくべていく。
温まったそれに砕いた鉄鉱石だのの材料を投下していき、蓋を閉め密閉する。それで一定の温度で維持させることにより不純物が流れ落ち、鉄が出来る。
その鉄をさらに取り出し、ハンマーで打つ。それでできた板鉄をさらに加工して延べ棒にする。炉に一度で入れられる量は決まっているが、それ以降の行程を速めてしまえばいいだけだ。炉の温度を調整するために最初は30分ほどかかるが、あとは平均10分もあればインゴットは3つくらいは出来る。そういった意味ではまあ、できなくはない、といったところか。
「……リリオラもミミンもさ。もうソラさんに突っかかるのやめなよ。差をはっきりと見せられて、落ち込む一方だろ?」
「俺としてはそこまで歴然たる差はないと思っているんだが。お前はチャレンジしないのか?」
「チャレンジしたい気持ちはあるけど、遠慮しておきますよ。それよりも、今は時間がかかってもいいからきちんとしたものを作れと親方に言われてますから」
ミミンと同じように出るタイミングを伺っていたのか。同年代でも比較すべくもなく良い体格をしたラージがひょっこりと姿を現す。
「まあ、あの人ならそういうだろうな。……驚くと言ったことに対して、やれとも出来るべきとも言わないから安心しろ」
途端に引きつった表情をするミミン。挑戦しようと思っていたのか、それとも出来るはずがないといったものを俺がやろうとしたことに対し改めて引いているのか。
「よし。3人とも揃ったな。じゃ、今日の研修は、そうだな。折角鉄鉱石と塊鉄炉があるんだし、解説と実技を一緒にするか。……リリオラ、暇かもしれんが、開始前から寝ようとするな」
「寝てないっすよ?! や、やだなあ、ソラさん。あたしがそんな寝るわけないじゃないっすか」
いきなり船を漕ぎ始めるリリオラを起こし、塊鉄炉を使って出来ること、向いていること。あとは注意事項なんかを説明し、実習に移る。
炉自体は幾つかあるが、流石に高炉や反射炉はない。そもそも塊鉄炉といったが、似たようなものではあるが、俺が昔朧気に調べた記憶のあるそれとも若干異なるようだ。
そもそも魔術やスキルがあるような世界のそれと全く同じであるわけもないとは思うんだが。
実習自体は恙なく進む。これが体験実習なんかならそうはいかないだろうが、3人とも見習いとはいえ、鍛冶師だ。仕事に関して手を抜くことないだろう。
とはいえ、それぞれが所属する工房が異なるため、使う素材の種類や大きさは異なる。
リリオラの実家は防具を扱い、ミミンが見習いとなったのは白風の丘という中規模だがアクセサリや軽装備などを扱う店、そしてラージが所属するのはアンドグラシオン。つまり、おやっさんの店だ。そういった意味ではこの3人ではラージと顔を合わせることが一番多い。
リリオラの居るバーギングスや白風の丘にも足を運ぶことはあるが、大抵は工房主から依頼された魔術品やポーションの納品、あるいは素材の融通をしあう、ということが主で俺よりもジェシィさんやお姉さんが行くことが多い。
それはともかく。俺は必要に応じて様々なものを作るため、インゴットを作って問題ないが、ラージはともかく、ミミンは使って板鉄だし、リリオラは鉄よりも軽い合金なんかを使うことが多い。ただ、仕事で特定の素材を使うのは当然だが、それしか使えなくなるのでは先がない。それが鍛冶師ギルドの意見らしい。おやっさんも今は大型の武器を打つのがメインではあるが、昔はそれこそ多くの武具を作っていたと聞いている。その結果、王都の貴族の目に留まり、有名な鍛冶師となっただけあって説得力は高い。
それに、幼馴染でかつ、ジャンルが違うとはいえ、それぞれがライバルらしい。工房の金属の配合比や工程など、秘密にしたいものはあるんだろう。そういったこともあり、普段は使わない素材で、どれだけ適したものを作れるか、という研究もさせているというのが実情だ。
「そういえば、ソラさん。王都に行かれたって話を親方から聞いたんですけど、本当ですか?」
「ああ。まあ、行ったは行ったが鍛冶師としてじゃないぞ。鍛冶師ギルドにはギルド長とベディさんだって聞いてるだろ?」
「鍛冶師で、魔術職人で、錬金術師。相変わらず多芸っすねぇ」
呆れた様なうんざりとしたような目でこっちを見るな。
「たぶん、他の事も出来るでしょ。今すぐに立派なドレスを仕立ててお姫様に贈っても驚かないわよ」
ドレスだけで言えば作れなくはない。装備としてのもので、見栄えを追求すると随分と金銭が飛んでいくんだが、王族に献上するものとしてはむしろ適しているんだろうか。
「……あいつに今更ちゃんとしたドレスというのも必要ないだろうに」
「何か言いました?」
軽く首を振って否定する。マイアの存在は秘匿するものではないが、だからといって軽々しく口にしていいものでもないだろうから。
「それよりも、手が止まってるぞ? 今やってるのが終わったら休憩にするから、それまでは集中力を切らさずにな」
手順に間違いがないか、危険はないか。そういったところを見ながら、実習は進む。研修係といっても、大したことはしていない。こうやって新人を育てていくんだと、役員の1人は笑って言っていたが、俺は育てる側にいるらしい。……理解はできなくはないが、それでいいのか、といつも思う。
「ソラさま、ギルド長がお呼びです」
「……それは急ぎで?」
「出来るだけ、と。今日この後はマホトアさんが代わって研修を行うとのことでしたので、申し訳ございませんが、ご準備を」
ノルンさんがそこまで言うのであれば仕方ない。ノルンさん自身納得をしていなさそうなため、ノルンさんにももしかしたら言っていないのかもしれないな。
「わかりました。リリオラ、ミミン。それからラージ。悪いが、この通り用事が入った。火の始末をするかどうかはマホトアさんに聞いてくれ。……誰も見ていない間に、勝手に打つなよ?」
引き継ぐのは俺と同じ上級職人であり、入って5年で昇格したという秀才と呼ばれる人だ。物腰も柔らかく、我慢強く教えてくれるという鍛冶師よりも教師が向きそうな人なんだが、あまり見習いの研修は行わないらしい。そういった意味では普段会う機会の少ない人から学べるのは3人にとってもプラスになるだろう。
「いつも通り研修を行っていると聞いたときは、貴殿らしいとも思ったが、変わらないな」
「気にしたって仕方のないことについては気にしないことにしました。いつもやってることと今の所大きく変わることが見つからないので」
「貴殿は大物なのか、図太いのか。……昨日見せた迷子の子供のような様子は一体どこに行ったのか」
ギルド長が相変わらずな俺の態度に疲れたようにかぶりをふった。
「あの、クゥエンタさま? どういった?」
目配せをするギルド長に頷く。ギルド長の判断でなら、悪いことにもならないだろうし、ノルンさんなら話しても問題ないだろう。
「……確かにソラさまは天才という言葉すら足りない位の麒麟児であることはだれしも認めることではございますが、その、本当ですか?」
「実際に手続きを行ったのは私も含まれている。タイミング的には他から妨害のない今が一番だった。それに、臨時の代理で、代役が立てばその者が改めて任命されるはずだ」
「そう、ですか。代理でなければ、私たちも困ります。と、それでクゥエンタさま、ご用件はお済みでしょうか」
「いや、本題はこれからだ。あくまでも仮としてもギルド長代理。秘書の1人もいなければ中々動き辛いだろう。斡旋をするため、ギルドの仲介を」
「私がソラさまの秘書となりクゥエンタさまには新しい秘書を見つければいいということですね。これまでお世話になりました」
何か続けそうになったギルド長の発言を遮りほぼ一呼吸で言い終えるノルンさん。いや、何ていうか、急展開というか。
「そうすると色々勘ぐられるだろう。気持ちは分からないでもないが、少なくとも目立つような秘書を付けるつもりはないぞ」
「いや、そもそも俺は秘書とか必要ないんですけど」
どこまでどうなるかはわからないが、秘書を付けるというのはそもそもやりすぎとしか思えない。というか、ノルンさんは目立つ秘書なのか?
「貴殿そのものとしては不要だろうが、ギルド長ともなると見栄も必要になってくる。必要な処置ではあるのだよ」
言っていること自体は分からなくはないが。その見栄も、外に出なきゃ見栄も何もない。というわけにはいかない口ぶりが気にはなるんだが。
「仮でも代理でも、全く仕事がないわけではありません。その時、どうしても一人で出来ることは限られてしまいます。ですからどうぞ、私をお雇い下さい」
ここまで念を押して必要だと言われるのであれば、必要なのかもしれないと思ってしまうのは、先人の教えに従うと思えばいいのか、意思が弱いと思えばいいのか。
これも保留にしたかったが、そういうわけにもいかず、人選はしかるべき人を紹介してもらえるようお願いをしておいた。
あとは受付などを行う職員を募集する必要があるが、こっちはむしろ国やギルド本部の仕事と思われる。
いや、人材を育てたり、揃うまでの判断をするのはギルド長の役目という気もしなくはないんだが。
ギルド長からある程度の仕事を聞き、俺はクリスタル保管庫に閉じこもることにした。俺の家ほどとはいかなくても最低限の防衛機構はほしい。
人目に付かないことをいいことに、大量に触媒やゴーレムをスキルで一気に作り上げる。そして出来上がったそれを納品する。
ちなみに、通常のギルドがどうなっているかはわからないが、納品されたアイテムは全て消えてギルドを構成するためのエネルギーに変換されているようだ。そのためか、魔力を含むアイテムの方が貢献度が高く設定されている。
鍛冶師ギルドではどうか聞こうと思ったんだが、ギルドのシステムは秘儀中の秘儀のため、ギルド長同士でも言ってはならないらしい。
だから勝手に改造などをしてはならない、と堅く言われてしまったが、まあまあバレなければいいだろう。
既にある程度してしまったし、進化はできても退化はできない。やってしまった以上、やりつくすしかないだろう。
そんなわけで多少ギルドの防御を強化した上で、隠蔽工作を行っておく。流石に危険があるものや記憶の混濁をまねくようなものは使わないが、軽い認識の阻害やデコイの設置。それにダミーの宝など用意できるものは用意して、本当に必要なものを念入りに、そして自然に隠す。
高レベルプレイヤーの目からも隠せるだけの隠蔽作業だ。それで見つかるのであれば、俺がどうしたって見つかるだろう。工数と手間に見返り。それを考えるとまあ、この辺りが上限といったところだろう。
行っている手段も、一部鍛冶師としてのスキルはあるがほとんどが錬金術師としての技法だ。文句を言われる謂れもない。
2時間ほどギルドに立てこもり、改めて出たのは既に日も暮れかけている夕焼け空だ。サンパーニャに帰る前に寄り、連絡事項がないか確認した上で家路に就く。
「おかえり、なさい?」
「あ、う、うん。お兄ちゃんが帰って来たぞ? レニ」
何か少しおっかなびっくりとしたレニに少し警戒される。……人見知りが割と激しい子だが、何故俺が警戒される。
「お兄ちゃんだよ、レニ。いつも通りちゃんと挨拶しなさい」
苦笑しながら母に軽く押されると、その勢いのまま俺に抱き着き、ぎゅっと抱きしめられる。
首元に顔を埋め、ぐりぐりしてくるんだが、何だ、この可愛いのは。いや、俺の妹なんだが。
「おにーちゃん、もういるの?」
「……ああ」
この言葉が嘘にならないことを、今は願うしかないが。
そのまますうすうと寝息を立てたレニを抱っこして寝室に運ぶ。少し見ないうちに多少大きくなったが、まだまだ運べないほどの大きさでもない。
子供の成長は早いな。……きっと、俺もそのうち大きくなるだろうし。多分。
見上げる先にあるのは鬱陶しいばかりの星、星、星。町の中でさえこれだけの星が見られるのは、世界がそれだけ暗いから。
夜は色々なことを思い出して少し嫌になる。寝てしまえばいいんだが、今日は何故か寝つきが良くない。
色々とありすぎて精神だけが疲れていてバランスが取れていないんだろう。と思うが、今は家を抜け出して、誰もいない公園でただ佇むだけだ。
家の敷地内ならともかく、それ以外の所で何かをする気にもなれず、設置してあるベンチに座り、ぼんやりと空を眺めると、傍目から見たら恐らく不審者だが、ドブ坂の住人はここまで来ないし、他の住人も既に寝ている時間だ。朝が起きれるか少し怖いが、寝足りなくても寝すぎて遅刻するということもないだろう。
相変わらず密偵や隠密は俺に張り付いているが、彼らはいつ寝るんだろうか。交代しているのは知っているが、全員が同じタイミングで交代しているわけではない。随分と変則的なタイミングのため、そう体力も持たないと思うんだが、俺の基準を当てはめるべきでもないんだろう。
いい加減眠気を待つのにも飽きて、さっさと家に戻る。こういう時のモノ作りはろくなことにならないと過去の経験で学んでいるため、ベッドにもぐりこんだ。眠れなくても、その内眠れるかもしれない、という期待感を持って、だ。
ようやく眠気が訪れたのは普段起きる時間。流石に今日はそのまま眠ってしまうべきかとも思ったが、そうもいかない。眠気覚ましに状態異常回復ポーションを飲み、熱いシャワーを浴びて眠気を飛ばす。すきっ腹に行動するのはよくないが、だからといって今食事を摂ると恐らく眠気が勝ってしまうため、軽く飲み物だけで済ませる。母には怒られたが、謝り出掛ける。
今日も今日とてまず向かうのはサンパーニャだ。いつも通り、お姉さんとメレスさんに挨拶をして、仕事を始める。
今日のノルマ、といわずあるものはひたすらに作っていく。そうしないと眠気がいつ来るかわからないのと、ここでいつまで仕事が出来るかわからないからだ。
お姉さんもある程度物は作れるようになったし、あともう少ししたらジェシィさんもある程度仕事が出来るようになるだろう。
メレスさんもポーション作りでだいぶ腕を伸ばしているらしいし、サンパーニャの売り上げも右肩上がりだ。
帳簿は俺はつけていないから憶測も混じるものにはどうしてもなってしまうが、俺が居なくてもどうとでもなる、というのはそうでなければならないんだからむしろいいことだ。
まあ、あっさりと後釜が見つかって、ある程度元の位置に納まる可能性もなくはないんだが。
「……それは、俺がやるべきではないと思うんだが」
「そういうなって。俺も、そう思わなくはないんだけど、フィアがな」
「フィアの料理の味見に比べたら楽だと思うよ?」
アンジェ。それは単なる罰ゲーム、もとい罰だ。昼になり、外に出てみた所トールとアンジェに捕まった。
捕まったのは、俺を探していたからだそうだ。そろそろ終わる収穫祭のメインイベントの1つ、それぞれの村の特産品から作ったものの審査会があり、その手伝いをしてほしいらしい。
手伝いだけなら出来なくはないが、それはあくまでも裏方として。決して鍛冶師としての立場からの評価なんて俺はしない。
おやっさんがいればおやっさんに投げてしまえばいいんだが、まだ帰ってきていない。ギルド長でもいいんだが、見た目は割とあれだから華がない。そうなると、他の職人になるが、立場と腕と時間を考えるとわりと適役がいない。
そういうわけであれば新人か中堅辺りを引っ張ってきてくれ。複数でなら何とか見栄えも出てくるだろうに。
それこそ、期待の新人なり絶賛売込中の中堅は割と多い。中には自分を売り込みたい連中も居て、そういうのに与えられている機会というのも少なくはない。
この町は特に小規模から中規模の工房が多く、そのほとんどで後継者は決まっている。中には一生工房主や一定の役職を求めない者もいるが、それこそ少数派のようだ。
そんなわけで、ある程度安全が保障されている村に工房を構えたり、他の町で新しい工房を自力で立てる、のは無理だとしてもそこそこの待遇で引き抜きをされることを期待する中堅は少なくない。
大規模な工房では工房主の他に、部門長ともいえるようなまとめ役が何人かいるようだが、この町でも鍛冶師の大店は3店舗だけだ。
おやっさんのアンドグラシオンは元より、ギルド長の一番弟子が率いるリリエリアン、それに鍛冶工房トーガッファ。
50人近い規模の工房を大店と呼ぶかどうかは分からないが、少なくともこの町では通常は5名程度、多くても20人程度の工房が多いため、それ以上の規模をそう定義しているらしい。
そういった意味ではサンパーニャは零細もいい所だが、魔術工房と鍛冶工房では扱うものも必要な人数も違うため一概に同じとは言えない。
そんなわけで、俺からの紹介状を持たせるとブツブツと愚痴りながらもトールは大人しく鍛冶師ギルドへ向かう。
「で、アンジェ。お前は行かないのか?」
「……だってあそこ人多いし、危ないのも多いから」
苦笑いをするアンジェ。まあ、分からなくはない。少なくとも、野菜を扱っている店にある鍛冶に関連するものといえば、包丁やハサミ、あとは精々農具といったものが中心だろう。
少なくとも最近扱っている武具の類や一応は鍛冶に分類される魔術品類は見ることはあっても取り扱うことはないだろう。
一応アンジェにもネックレスをプレゼントしているが、仕事中につけることは流石に出来ない。
たまに遊んだりする時には付けていることを見たこともあるが、身を守るための魔術品であるため、いつでもつけていた方がいいとは思うんだが。折角の贈り物だし、汚れたりしたら嫌だからというのは可愛げがあるというのか、本末転倒というのか。
ともかく。アンジェは鍛冶師ギルドに行くつもりがないらしいため、ひとまず店に送ることにした。
そろそろ昼の時間も終わるし、この後は素材を受け取りに銀の風という工房に向かう必要がある。少しずつ減っている素材を持ってくるのは外に出る傭兵や冒険者達が主だ。サンパーニャでも買い取りはしているが、大量の買い取りもできず、そもそもあまり高価な買い取り額を設定することもできない。
そんなわけで、商業ギルドの他に、中規模以上の工房では独自の買い取りルールを設けて素材などの買い取りをしているところもある。
それぞれが必要としている素材は異なり、余裕ができたものやあるいは不要な素材は他の工房にも分ける。そうやって今を何とか乗り切ろうとしているのが現状だ。
俺の錬金術の触媒はほとんどがダブついているものを使っているため、それこそ大量に作っても保管場所を空けることになっても余剰になるわけではないため例外的ではあるんだが。
だからといって、今後何に使うかわからないため、無駄に作るといったことは勿論しない。
「ソラくん、家の子がいつもすまないねえ。アンジェ、まだ仕事は残ってるんだよ。早く戻りなさい」
「はぁい。ソラ、送ってくれてありがとね」
「おう。じゃ、またな」
アンジェの店を出ると、そのまま元の予定通り銀の風に向かった。
「ソラちゃん、いらっしゃい。いつものだよね、用意できてるよ」
「ええ。ありがとうございます。それと、追加で銀鉱石とかあります?」
「うーん。さっき大口で仕入れられちゃったんだよね。少しは残ってるんだけど、うちでも使うから、ごめんね」
受付兼中堅のアクセサリ職人でもあるアレッタさんは少し困ったように眉を下げる。
「うちも材料は若干あるんですけど、注文分ギリギリなんですよね。……俺が外に出て取りに行くか」
「その時はうちの分も取ってきてくれるとありがたいかな。勿論買い取りの時は上増しするよ」
対魔物用となるような素材はやはり需要が高い。少し離れた場所に銀鉱山もあるが、最近魔物の出現率が上がったようだ。
ただ、そこまで強力な個体は出現していないらしく、経験不足のパーティーを強制レベリングすることくらいは可能な程度のものらしい。
であれば、色々と鈍っているものを鍛えなおすために1人で籠っても問題ないだろう。
ただ、物の流通量を考えると1人で奥まで進んで大量の鉱石を持ち帰ると色々勘ぐられそうなため、護衛は必要となるんだろうが。
「……そんなのは鉱夫を雇っておけばいいのではないのか?」
「それだと貴重な鉱石や宝石を逃す可能性が高い。見逃すだけならまだしも、壊しても気づかないものも案外多いんでな。
この町だけじゃなく、物資の不足はそろそろ表面に出てくるっぽいぞ? 街道整備に必要な水晶もそろそろ在庫が切れそうだし」
とはいえ、全体に必要なうちの7割がたはもう既に確保している。そういう意味では主要な街道の整備を今すぐ始めても問題はないんだが。
それこそ利権の関係上でどこをまず一番最初に始めるかは揉めているそうだが、王も興味があるらしくそろそろ決まる予定らしい。
王族が関わることにより貴族からの注目度も高く、目の前にある危機ということもあり思ったよりもハイペースで事は進みそうだ。
急いては事を仕損じるともいうため、地盤固めはしっかりとしてほしいんだが、多くの人の手が介入する以上、平民たる俺に出来ることはないんだが。
「……仕方ない。私はナギサが帰って来るまであまり動くことは出来ん。何人か護衛を付ける。お主も使える手段は多く取っておいてくれ」
「といってもな。まあ、わかった。幾つかの所に話を持っていく。とりあえず、1セトラくらいはここを離れる必要があるから、父と母にはまず報告する必要があるか。
……準備もあるから今日明日で出るってことはないな」
軽く自分の言ったことに頷くマイアが口の中で何かつぶやく。何を言ったのかは気になるが、聞いても教えてくれないだろう。
あと幾つかマイアと相談をし、サンパーニャに戻ったのは閉店する少し前。随分と時間がかかったんだね、と不思議そうにするお姉さんに軽く事情を伝える。
また空けるの? と不安そうに言うお姉さんに、方法は考えてみると答える。そもそもすぐに家を空けるのはレニの約束を破ってしまうことになる。
そういう意味では、気晴らし、もとい新人の育成のためにひと肌脱いだ方がいいのかもしれない。
そう決めると、工房を借りることにした。俺の地下工房で作ってもいいんだが、今回は魔術職人としてのスキルを使うもの。かつ、大勢の目に触れるものだ。そうなると、秘密裏に作る必要も一切ないため、サンパーニャで作る方がいいだろう。
興味がある、と帰らずに残っているお姉さんのためにもさっさと作ってしまった方がいいだろう。
使う材料はどこにでもある何の変哲もない砂の山。砂鉄すら含んでいないそれは、補助的な意味での役割があるためある程度の量はどこの工房にもあるが、それこそ大量に使える素材の1つだ。
それを薬剤で溶かし、珪砂に変える。この時点で通常のやり方とは大きくずれているが、時間短縮にもなるからまあいいだろう。
それをさらに特殊な溶剤に漬け、溶剤ごと煮る。それで自然と玉になって浮き上がってきたものを取り出せば完成だ。
……まるで料理をしているような作り方だが、これはれっきとした錬金術で作った品物だ。街道整備に使うものほどではないが、一時的に退魔及び滅魔、といった魔を寄せ付けない力を出す。1つにつき、精々10mもないくらいの範囲でしかないが、特殊な配置をして魔法陣としてしまえばその効果は劇的に向上する。
その結果、ある程度の時間までしか持たないため、交換用に大量のそれが必要となってくる。そんなわけで大鍋を使ってどんどん作っているんだが、それ以外することはないため、お姉さんは暇そうだ。常に大量の魔力を注ぐ必要があり、1人に対して作れる数量はあまり多くないため、一気に俺が作っていくしかないというのが面倒なんだが。
出来上がったものを置かせてもらい、お姉さんを送って帰り着いたころには日が沈みきった後。父が待っていてくれていたようで、軽い夕食と今日の話をしておく。またしばらく外に出るのは現状の予定で、うまく行けば数日日帰りで出る位で済むが、どうなるかはわからないと伝えておいた。
「……貴殿が野外での宿泊をするということについて、認めることができるわけないだろう」
「ええ。今の時期に長期間抜けられるのも困ります。街道整備に必要な物資は最優先で回されることも決まっています」
予想通りではある回答が来たため、街道整備だけではなく、鍛冶師のレベルアップのためのものであることを説明した。
まあ、追加で冒険者達に護衛の依頼を出したり、性能テストのため、リリオラ達も含めた見習いも参加できるようなものにしたいという要望を出した。
で、話は纏まるどころか大きくなりすぎた。見習いだけではなく、中堅や休業状態の鉱夫に冒険者、それに何故か幾つかの工房主なども参加することになった。
工房主は一応中堅や見習いの指導のため、という名目だが、やけに気合が入っていたところを見ると、単純に外に出たかったか思いっきり採掘をしたくなったかのどちらかなんだろうが。
それからたった3日後、幾つかの工房単位で採掘に向かうことが決まった。あまり大所帯過ぎても坑道は狭いし、だからといって小規模過ぎては大した成果にはならない。採掘場所を決めた上で掘っていけば効率よく採取が出来る。
鉱山でも世界の謎ルール、採りつくしてもしばらくしたらまた採取可能になる、というものがある以上、それは最も効率的な方法だろう。
4日の泊まり込みで、異なる商品を扱う店での合同となるため、これまでとは違う繋がりもできるだろう。というのも狙いの1つだ。
俺は泊まり込みを1日も許されなかったのは少し寂しい限りだが、事情を知らないはずの上級職人からも反対されたため、仕方なく従うことにした。
「さて、やるっすよ!」
「……知ってる人がいない」
「え、っと。何か、濃い人ばっかなんだけど……チェンジ駄目?」
「ソラくん、頑張ろうね」
引率がそれぞれのグループに就くことになったんだが、リリオラにソトラという彫金職人にメリフィンという冒険者見習い、それにお姉さん。
メリフィンは冒険者だが、手先が器用でそこそこ色々なことをこなすということもあり、採掘担当に回されたらしいんだが、そのためかあまりやる気はなさそうだ。
他にも冒険者や付きっきりになることのできない俺を補助する形で上級職人のライムントさんが居るためどうとでもなるだろう。
その辺りはともかく。リリオラはともかく、お姉さんが俺のグループになるとは思わなかった。
お姉さんも見習いなんだが、工房主。そして俺はその工房に所属する職人という関係上、俺がお姉さんに大っぴらに指導するというのは非常に体面が悪い。サンパーニャの中で色々する分には何とか目こぼしをされている状態だが、あまりしすぎると俺が工房主じゃないのか、とかいい加減店を持てと煩い連中が一定数いる。
そもそも俺が店を持っても無軌道な店になるのは分かっているし、そもそも一人で店を切り盛り出来るとは思っていないため、店員、場合によっては弟子を取る必要なんかもあるだろう。
……色々嫌な予感しかしないため、そうはするつもりはないが。
ともあれ。彫金職人と魔術職人という腕力はあまり必要のない、採掘にはあまり役立たないと思われる面々で、様子見ということもあり非常に浅い所が目的地となり採掘がはじまった。
その前に、あまり仕事を一緒にしない同士、軽く挨拶をすることにしたらしい。今後も考えると、まあ必要ではあるか。
「あたしはリリオラっす! バーギングス所属の、見習いでそこのソラさんが指導役っす」
リリオラ、何でお前はそんなドヤ顔をしている。そして何故お姉さんは羨ましそうな顔をするんだ。
「……ソトラ。バードフィッシュで見習いやってます」
人見知りなのか、ぶつぶつと俯くように言うソトラ。そういうキャラの方が集中力はあったりするから、採掘なんかにはあうかもしれない。
実際は動いてみないとわからないが。
「あの、冒険者9級のメリフィンです。今回は、皆さんと一緒ですけど、依頼があったら、よろしくです」
ソトラとは違うタイプの人見知りのようで、おっかなびっくりとした感じで挨拶をしてくる。
冒険者としてそういったもので大丈夫なのかとも思うが、俺の管轄でもないし、何もしようがないんだが。
「わ、私は。魔術工房サンパーニャの、ミランダです。えっと、皆さんと同じ見習いです」
「……サンパーニャって、ソラさんと同じ?」
「ああ。お姉さんと俺は同じ工房だな。まあ、俺はソラ。見習い、じゃなくて一応上級職人だ。俺は付き添いみたいなもんだから、あまり気にせずすべきことをやっておいてくれ」
怪訝そうな表情を浮かべるリリオラを無視して話を進める。お姉さんは自分が工房主と名乗るのはまだ抵抗があるようだ。
ジェシィさんも居るからといったところだろうか。
あくまでも採掘をするのは見習いだけで、ライムントさんが指導をしている。俺は何をしているかというと、何故か他の冒険者と一緒に護衛をしている。たまに発掘ポイントの指摘や鉱物の鑑定などを行っているが、採掘すらしていないのは何故だ。
ギルド長曰く、貴殿が手を出すと全体の力関係が崩れる、らしい。せめて採掘くらいはさせてほしいと訴えた所、無事に終わったら好きなだけ採掘を行えばいいと言われたためそうするつもりだ。……地形は変えない程度にはするつもりだ。多分。
散発的な魔物の出現はあったものの、設置してある魔術品により弱体化や消失していくものが多く、ほとんど冒険者の手を借りることもなく時間が過ぎていく。その間に採掘された鉱石類は以前作ったキャリーカートに積み上げられていく。いくらそれに『重量軽減+3』と『移動速度向上』を付けていても大量の鉱石を積載したものを運ぶのは手間なため、作っておいた触媒からゴーレムを精製し、運ばせる。
今回作ったのはウサギではなく、大きくてデフォルメされたまんまるなスズメだ。
空を飛べるには飛べるが、どちらかといえばパタパタと歩き回る姿を想定してみた。それなら陸上を走る動物でもいいと思ったんだが、うまくイメージが沸かず、昔みたアーカイブの中の1つを採用してみた。
お姉さんが居たから急遽変えたということでない。決して。
初日ということもあり、昼休憩を挟み、少しの時間で1日目の採掘は終了した。流石に護衛だけではなく、指導も少しはした。
流石にここで何か作るわけにもいかなかったため、行ったのは鉱石の保管方法や見分けの仕方、それに選り分け方などといった基本的な部分だが、職人がこうやって採取をすることはあまり多くないため、そういった意味では鉱夫を含めても見分ける目というものは俺が一歩先を行く。
まあ、運搬の担い手や誰かが倒れた時に抱えて運ぶということはできないため、そういったことしかできないとも言えなくはないんだが。
1日目の採掘が終わったからといって、あとは自由時間、というわけでもない。むしろある意味ではこれからが本番だ。
ある意味野営というべきか、野外工房を建てたというか。折角しばらく居るんだから、安全確保及び時間の短縮のため、数棟の家が建てられた。
休憩のための男女別の宿泊小屋に資材置き場を2つ、それに炉を3つ備えた工房。今後も定期的な研修を行えるように、ということで作ったものでそれぞれに魔除けの符を徹底的に付け、耐久力はさほどないが、魔物からは身を守れる。そんな施設になった。
ちなみに手掛けたのは俺以外の上級職人だ。俺に頼りすぎてもよくない、という当たり前のもので、かつ俺しか作れないようなものを作ってもあとの維持ができないためらしい。
とはいえ、俺が何もしないのも申し訳ないと思ったのか、歓談用の小屋を1つ作り、そこの防御に加え、耐久性などに関しては俺に任せて貰えた。
結果、そこだけ要塞のようになってしまったことは秘密だ。調べられればすぐに判明するだろうが、それまでは秘密だ。
遅くなりました。次の話は、6月中に投稿できれば、と。
感想、誤字報告ありがとうございます。
目を通して誤字や脱字などの修正はしていますが、言い回しなどは時間を取ってまとめてできればと思っています。