表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/53

第16話。遭遇。

読んでいただきありがとうございます。



「作戦会議って何をするの?」


「俺が今考えてるのは短期的な目標と、長期的なものを何処に置くべきかってことかな。

 特に商品のラインナップとかは考えなくても良いとは思うけど、主軸は何処に置くべきかだと思う。役割や、今後人を入れるかも含めてね」


「うん。それは決めないといけないと思うけど、人を増やすかどうかはもっと後でも良いと思うんだ。今は無理に増やしても困るし、今は私がどれだけ力を伸ばせるか、かな」


「そこが現状の最優先なんだよな。それで、随分と頑張ってたみたいだけど、どう?」


 客、スコットたちがやって来たため顔や髪についていた煤は取ったみたいだけど、着替えもないみたいだし服は煤塗れ。

 掃除をしていたという可能性もあるけど、ハンマーで叩く音も聞こえたし、幾つかアクセも見えるし仕事をしていたんだと思う。


「うん。材料足りなくなってきたから熔かして再利用しようと思ったんだけど、ボロボロになっちゃって……」


 バツの悪そうに視線を逸らす。そのボロボロになったというものを見せてもらうと、表面が気泡が入ったかのようなでこぼこなもの。厚みも均一じゃないし、一部は向こう側すら見える。


「もう一度作り直そう。お姉さんが使う分を先に確保してたらそれで後の分は俺が加工するから。それでいい?」


 全部を俺がしてしまうとお姉さんの成長にも影響がでかねない。それだけやっていても手は足りないんだからアクセ作りも時間をとってもらう予定だ。


「うん。それでね、ソラくん。予約の分なんだけど」



 お姉さんは先日の露店でも種類を限定してだが予約を取ったそうだ。

 今までと同じ状態で予約を取っていれば俺しか作れないものの方が多いし、まあ当然といえば当然か。

 それで作れて何とか渡せそうなものが2つ、後は3つだがこれも少し時間をもらえるそうだからお姉さんでも何とか作れそうと考えている。

 が、1つは素材が思ったよりも加工が難しいものでどうすれば良いかと聞かれた。


「これはまだ板金はあるから、あとは成形っていうより彫金かな。彫金は結構難しいし、成形する前に刻んでみたら?

 それも一気にするんじゃなくてまずは全体に下書きして、その時点で正しく出来てるか確認出来るからさ。

 それから浅めに掘ってみて力加減を確かめながらやっていけば良いんじゃない?」


 俺は完成図が頭にあるからそのまま引くが、それはまだお姉さんには難しいかもしれない。

 無骨というかシンプルなものもあるが、プレゼント用も多く華奢なものや繊細なものの方が受けが良い。

 実際露店で並んでいるものもそういったものが大半だし。

 とはいえシンプルなものも需要はあるためそこの見極めは必要だとは思う。


「うん。そうしてみるね。あと、ソラくんの働く時間なんだけど、やっぱり少し減らせないかな?」


「お姉さんも働く時間を減らせればね。俺だけが短く働くのもおかしいでしょ」


 極端な話、露店さえしなければそれでも問題ない。けど、まだ知名度低い。現状はサンパーニャとしてのものではなく『良いポーションを売る露店』程度だ。

 店に客足を誘うには『魔術工房』の側面を見てもらうための工夫が必要だろう。


「うん。それは分かってるんだけど、何かしてないと不安だよ」


 だから働き続ける。それに関しては根本を解決するのが一番なんだが、どうすべきか。


「でも、いざとなったときに疲れ切ってて動けなかったら元も子もない。だから、もっとメリハリつけてさ。休みの日には何処かに気分転換に出歩くとか、遊びに行くとか。

 1人で悩むのも大切だけど、お姉さんは1人じゃないだろ?」


 前にも言った言葉。お姉さんの中にはきっとまだ足りないもの。そして求めているもの。

 それが刺さった棘のようにじくじくと傷めているんだろう。

 けど、それを抜けるのはお姉さんだけだと思う。周りが与えられるのはきっときっかけだけ。

 後は信じて行動するしかないんだと思う。


「うん。……ごめんね」


「だから謝らなくて良いって。それで、お姉さんは働く時間削れそう?」


 お姉さんは暫く考え込んだ後で小さく頷く。

 話し合った結果、決まったのが偶数週の3日目が俺の休み、奇数週の3日目がお姉さんの休み。5週目は2人とも休み。

 5週目も俺が休むよう言ってきたが、此処は妥協してもらった。普通に働いても良かったんだが、この際、最初に多めに休みを取っておこう。もしそれで回らないようだったら休みを半休にしたりと変化させれば良い。



「じゃ、今日はそろそろ帰るよ」


「今日は早いんだね。いつもはもう少し居るのに」


「まだ休みなんじゃないの? 少なくともお姉さんから許してもらってないよ」


 冗談交じりにそう言い笑ってみせる。


「あっ。そ、そうだね。えっと、ソラくんのご両親が良いって言ってくれたら出て欲しいんだけど」


 恐らくそれ自体父が出した条件か何かなんだろう。まあ、説得するべきか。


「じゃあ、それが終わったら復帰ってことで。あと、これ」


 お姉さんが普段メモしている紙の束から何も書かれていないものを一枚取り、レシピを書き込んで渡す。


「うん? これ、何かな」


「パンのレシピ。『ユグドラシルの葉先』で作ってるものとは違うから、商品じゃないんだけど作ってみてよ」


 あくまで俺が伝えたのはパンズとスコーンのレシピだけ。裏技というか反則だけど露見しないなら問題にはならないはず。

 今回は所謂丸パンとコッペパン。お姉さんが不器用でもこれならきっと作れるだろう。


「じゃ、じゃあ。えっと、どのくらいお金必要なのかな? 新しいものだからきっと高いんだよね」


「お姉さんが成功させたら食べさせてよ。報酬はそれでいいよ。今回のは俺の挑戦だから」


 慌ててお金を取り出そうとするお姉さんを制する。これでもし別のものが出来る様だったら考えなきゃいけないし、成功するようだったら外に広げられる可能性が出てくる。


「う、うん。でも、次からはちゃんと受け取ってね?」


「料理はレシピだけだったらお金にはならないよ。誰かに広く売るんじゃ無かったらね。だから、あまり気にしなくて良いと思うけど」


 これを幾つも纏めたものを食堂なんかに売ったり、作る工程全てを教えるなら多少は取れるんだろうけど。


「そういうのがやなの! ソラくんはもっと職人であることを自覚しなきゃダメっ!」


 怒られてしまった。確かに職業としている以上慈善だけでするのは難しいけど、本業ですらないものでお金を貰うのは良しとしないんだけど。


「うーん。何でもお金を貰ってっていうのはどうも合わなくてさ。パンそのものなんて毎日食べるものだからバリエーション欲しいと思うんだけど。中にレーズンや胡桃とか混ぜたりさ。

 これまで売り始めたら俺個人というよりも、またサンパーニャの商品かって思われたら大変だと思うんだけど」


「そ、それはそうなんだけど。でも、ソラくんっていつもいつもいつもいつも利益なんて考えないでお仕事しちゃうから心配になるの」


 職人が利益だけを優先させるようになったらそっちの方が問題だとは思うんだけど。


「市場の適正価格はそれなりに調べてるつもりなんだけど、そんなに利益度外視かな? 出来れば他の露店との衝突はしたくないし」


 時間があるときは露店を見回っている。あまり見回っていると、それはそれで他のアクセ売りからは睨まれるし、ポーション売りからは製法を聞かれるから、この状態のままではあまりしないようにはしているけど。


「他の露店と衝突したくないっていうのは私も一緒なんだけどね。ソラくんのやってるのはもっと大きな工房がお得意様相手にしてる限定的なものなんだよ?

 普通はもっと簡単にするみたいだし、魔術品でもそこまで手の込んだことはしないよ」


「長時間身に着けるものだし、魔術品ならよりそういった事に気を使わないと実用的じゃないと思うんだけど。

 というか、お姉さんそれ誰から聞いたの?」


 なんというか、お姉さんがそういうことを言い出すときは決まって他の誰かからの忠告の場合が多い気がする。もちろんそれはいいんだけど、そういった時間が何時あったんだろうか。


「昨日、露店に顔を出してくれたベディおじさんから教えてもらったの。その分凄く怒られちゃった」


 詳しく話を聞くと、おやっさんが顔を出すと俺がいないことに対し聞いたらしい。

 その内容に思うことがあったらしく、露店を途中で切り上げさせ、改めて事情を聞いた上で自分の工房で魔術品がどういったものか見せ、聞かせたとのこと。


「まあ、それもそっか。と、そろそろ帰らないと。じゃあ、説得終わったら」


 俺は荷物を回収し、工房を後にする。

 帰ったら何故か父が母に叱られていたのは秘密だ。俺は何も見ていない。



 夕食にはまだ時間があったため、地下にある俺の工房に入る事にした。

 目的は剣の手入れ。戦闘後、何もしていなかったため状況すらまともに把握していない。


 鞘から引き抜いてみると乾いた血と油でくすんでいる。刃も少し欠けているみたいだし、耐久も【411/500】と減っている。

 変形して鞘から抜けなくならないだけましか。いや、若干変形もしているんだが。

 流石に重さで断ち切る代物でも骨を切るのは無理があったか。

 それにしても、どうやって修復したものか。

 刃こぼれは小さいものだから砥げばいいとして、変形は叩けば修復できるのだろうか?

 鍛冶師が修理も出来ないものおかしいだろう。本来なら『耐久度回復』を使うんだが、今回は出来る範囲で修理をしてみよう。



 色々としてみた結果、修復は完了した。

 といっても、俺がやった修復だと完全には耐久度が戻らなかったため、結局最後はスキルを使ってしまったんだが。

 今後の改善点としておこう。



 夕食を済ませ、その後は説得というか交渉になるはずだったんだが、何故か母から明後日から工房に行って良いと許可が下りた。

 どうやら父は母に話さないまま事態を進めたらしく、それで旅をしている間に父がどれだけ無理を重ねたかを父自らに話させた上で反省を促すというSっぷりを聞いた時は思わず戦慄を覚えたが、それはともかくとして2人を無事に町に帰還させたことを褒めず、叱っただけなことにご立腹なようだ。

 その上で改めて俺も怒られた。戦うならもっと自分の長所を活かせるような場所で戦うべきだ、とか外に出るなら何があっても良いようにもっと回復手段を持つべきだ、とか何故か戦闘時の心得がほとんどだったが。

 とりあえず、母をあまり怒らせないようにすることは確定した。

 あと、休みのことも伝えておいた。さらに生活費というか、貰った給料のうち金貨1枚を渡しておいた。

 母も父も受け取らないと言っていたが無理に受け取ってもらった。

 一月金貨1枚でも多分余りそうだ。残りは銀行システムを使えるようになったら預金するようにして、それまではアイテムボックスにでも放り込んでおけば良いだろう。


 その後、母から1つ頼まれごとをされたので、それを果たすために2階の倉庫代わりの部屋を漁る。

 その頼まれ事は来客に関してだ。

 現状、防犯のため俺が設定した人以外の自由な行き来は出来ない、というか門を開けられないようにしている。

 それだと気付かなければずっと門の前で待つ羽目になる。それをどうにかして欲しいとのことだそうだ。

 確かに村長も雨の中門を開けようとしていたし、人を余り待たせるのも良い感情は決して持たせないだろう。

 そんなわけでチャイムなんて当然付けるわけには行かないし、応用できそうなものがないかを探している。

 元々享楽者の主人が持っていた館だし、何かそういったものがあってもおかしくない。

 実際、魔術品は幾つか見つかっているし、危なさそうなものは一箇所にまとめ普段は入らないようにしている。

 そのうちのほんの一部のものは以前見つけた日記によってどういった効果のものかも分かっていたりするが、どうも日記の保管状況がよくなかったのか滲んでいたりして読めない部分も多かった。

 鑑定をしても、スイッチだとかパーツだとか何をどうするものか要領を得ないものがほとんど。

 そんな中でも単なる置物、らしき小さな水晶が数個見つかったのでそれを利用することにした。

 門扉の前に5秒以上立ち止まっていたら水晶の色が変わる、それだけの簡単なもの。

 本当は魔力感応式のものにしたかったんだがそれだと母が使えないため魔法陣を転写(エディット)し、防犯用の魔法陣とリンクさせるようにした。

 後は遠見でもできるようにしたかったんだが、それだと他の人が居るときに面倒なことになりそうだったから付けないようにした。

 それを父と母が持つようにして、あとは厨房に食堂と居間、両親の部屋に置くことにした。

 2人が持っているだけで構わないと思うが念のため。どうせ館の魔法陣を基礎としているから外に出たら効果は為さないんだし幾つか設置しても問題ないだろう。

 俺は基本的に客の対応をすることはあまりないし、家族が俺を除いて外出しているのなら居間にでもいれば良い。


 というわけでさっさと作ってしまってそれを説明する。稼働テストも行い、上手くいったから問題はないだろう。

 そんなことをしながらその日は終わり、眠った。



 朝はやはり起きる時間はいつもと変わらず。今日も休みだからやることはない。

 暇だから採掘にでも出てみるか。そう父に話すと、父の同行であれば許可を出すとの事。

 まあ、無駄な心配をかけるわけにも行かないし頷き、母から魔術品を借りて『耐久度回復』を施した上で装備したんだがやはり使いづらい。自分用の装備も少しだけ作ることにしよう。

 父は服の上から胸当て、篭手、弓に矢筒と何処に出しても恥ずかしくない典型的な弓使いの格好。

 俺は普段着に『シールド』が使える腕輪とファルシオン、あとは特製ポーションを合計10個。

 家にある防具は俺の身体に合わないから装備できない。町で買うにしても俺のサイズはないから特注になるらしいからすぐには用意できない。

 とりあえず今日はシールドもあるから、とそのままで出かけることにする。


 で、町を出ようとしたときに騎士に呼び止められた。

 先日の平地でモンスターが見つかった件が問題になり、町から出るのに制限が出ているらしい。

 といっても、戦闘の可能な人間が2人以上であることとモンスターが出現したら報告すること、それと何があっても責任は取れないということ。

 後者の2つは問題がないというか、当然だけれど最初の1つが問題になった。

 俺が幾ら戦闘を出来ると言っても信じてもらえない。まあ、戦闘をできるといっても普通はそのレベルを疑われるだろう。

 話の流れから言えば俺の剣が戦闘を容易にしただけだと思われてるっぽいし。

 確かにスキルやら何やらで一撃で敵を葬っているという事実、それを考えればそう思われても仕方が無いのかもしれない。

 むしろ本当にそう思われているならそれは僥倖といえる。もしそれ以外を疑われていても、あえて自分から言う意味はない。


 そんなわけでどうしようと悩んでいるとハッフル氏が釣れた。いや、釣れたというのは表現としておかしいがふらふらと歩いているのかそれとも実は浮いているのか良く分からないがふわふわしながら近づいてくる怪しげな人物がハッフル氏だった。

 父は当然の如く怪しげな人物を見る表情だったが何故か名前を聞くと納得し、同行を依頼した。

 ハッフル氏も暇だったらしく、快諾してもらった。てっきりもっとゴネられると思ったのだが今日は屋敷に居たくないから良い暇つぶしになるから構わない、だそうだ。


 そんなわけで騎士にも許可を得られ、外に出ることになった。

 ハッフル氏は自衛団に紹介状を書けるほどだし、実力もある魔術師なんだろう。

 騎士がやけにハッフル氏に低姿勢だったのが若干気になるが、何処かそれを探るのは躊躇われる。

 前に服を貰ったりしたし、怪しいというだけで何かと探るのも失礼な話だろう。



 採掘を始めて2時間ほど。鞄だけは持ってきていたもののハッフル氏が居る状況でアイテムボックスに放り込むといういつもの手段は使えない。

 幾つかの宝石の原石と鉱石、それと果物。あと父が獲物を狩るということなので俺とハッフル氏で協力することになった。

 俺が前衛で囮役、単なる獣相手なのでそれで十分だ。わざわざスキルを使う必要はない。

 それに父が主に仕留める役でハッフル氏がバックアップ。ハッフル氏の使う魔術では下手したら獣を蒸発させてしまうほどのエネルギーを持つためだそうだ。

 蒸発させるということはレールガンでも放つのだろうか? あるいはレーザー砲か。

 どちらにせよ森で使うようなものじゃないな。


 そんなことを考えながら採取を続けていると、イノシシらしき獣を発見。父に誘導を頼まれたため石を投げつけたりして怒らせ、おびき寄せる。

 罠を張った方が楽そうだが、罠を張るにはどんなものが出没するかはある程度聞いていて分かってもいつ何が出るかは分からない。

 獣狩りの檻やトラバサミでもあればそれでもいいんだが、そういうわけにもいかない。

 特にトラバサミなんて間違って人が引っ掛かると大変だろうし。

 というわけでちまちまと石を投げつけおびき寄せ、父が矢で仕留める。

 イノシシモドキは毛皮が高く売れるそうだから剣を使って仕留めるには不適切なのだそうだ。

 ハッフル氏も興味深く見ているだけで特に加勢はしてこない。危険はないと判断したんだろう。


 眉間に刺さった矢がとどめになったのか、そう苦労することも無く仕留めた後、その場で父は解体し、血抜きを始めた。

 正直エグいが、直視しないのと臭いを嗅がなければ平気だ。つまり全く慣れてない訳だが。

 本来イノシシは毛皮は硬く、油も多いため毛皮はあまり価値がないそうだが、このイノシシモドキは毛が長く防水性と保温性能も高いため外套などによく使われるそうだ。


「君は猟師の息子なのに慣れていないのかな?」


「猟には参加したことはないので。ハッフル氏は経験でも?」


 飄々としすぎていて俺でも全くこの人は掴めない。むしろ過去にどんなことをしていても、きっと驚かないだろう。


「狩りはさすがにないねぇ。それにしても、狩りたての動物は美味しいのかな?」


 流石にその発言は引く。前後と全く整合性がないとかそういう問題じゃない。

 切り引かれたその状態のものを見ながら言うのは流石に違うと思うんだ。


 魚を活き絞めしたものとは流石に違うと思う。普通、原型を保っているものに対してあまり美味しいかどうかなんて思わないはずだ。

 とはいっても煮魚などに関しては原型を保ったままで美味しそうと思うからそれが正しいかどうかは分かりかねるが。


「焼いて食べますか? 血抜きしたばかりなので少し臭みは残っていますが」


 父も苦笑しながら、何故か頷く。そろそろ昼にしても良い時間なのだが。これに関しては俺の方がおかしいのだろうか。



 焼いて食べれるキノコやそのままで食べれる果物を見繕って昼にすることにした。

 今日はそんなに時間をかけない予定だったので昼食は持ってきていない。ハッフル氏に関しては何も持って来ているようには見えない。ローブの中に何かを隠し持っている可能性は高いが、わざわざ手伝ってもらっている人に要求するのもおかしいし聞かないことに。

 適当に探してくるといって、鳥を何頭か狩って戻ってきた姿を見てそれもぐらついたが。


 急遽鳥も処理をしてハーブを詰め込み丸焼きにしたりで随分と豪華な昼食になったが、半分以上をハッフル氏が食べきったため少し多めの昼食になっただけだった。ハッフル氏の分だけでも軽く見積もっても3人前はあったと思ったんだがどんな胃をしているんだろうか?


「まあまあだったね。味はいいとして、量は」


 と食べ終わった後、不満そうに言い放ったのは聞かないことにした。



「今日はありがとうございました」


「私も久しぶりに運動できたから構わないよ。機会があればまた声をかけて欲しいね」


 その後、特に必要そうなものも見つからなかったため町に戻り、ハッフル氏に礼を言って別れた。

 父は狩った獲物を売りに行くとのことでそこで父とも別れ、適当に町を散策することにした。


 いつもなら中央広場をうろつくだけで何かと声をかけられるが、今日に関しては目が合い、近づいて来るのだが途中でそそくさと去っていく。何故かと思えば、腰に引っ掛けている剣が理由だと顔見知りの露店の売り子に言われた。

 顔とそれがあまりに不一致すぎて何かやだ、だそうだ。

 失礼な。都市伝説では帯刀したまま接客を行うところだってあるそうだし、そこまでアンバランスではないはずだ。

 とはいえ、町にサンパーニャの売り子が帯刀して歩いていたというのが変に拗れた噂になっても困る。とりあえず父が猟師で、それについていくために持っていたとだけ説明はしておいたが。

 そんなわけで一度家に帰り、置いてから広場に戻ることにした。


 多少面倒だが親の手伝いをしていたと説明して回れば問題ないだろう。

 それで済むのであれば、メリットの方が何とか上回るわけだし。


 そんなわけで、説明がてら何か掘り出し物が無いかを見回る。

 ポーションはやはり変わらず赤色ポーションのみ、出店のパンは固く、そのあたりに変化はない。

 ポーション売りの露店で時折ポーションベルトやその亜種がちらほらと見かける位か。

 ただ、アクセ売りが一部変化している。今までは作ったものを並べているだけだったのが一部は素材を変えて作ることが可能と謳っている店が出てきた。

 アレは正直、素材ごとの加工の違いの理解が必要で、かつ多くの種類から選択できないと上手くは行かないと思う。

 俺の意図は客層を広げることとともに、お姉さんのスキルアップも含まれている。

 だからそういった目的を持たない限り何処かで綻びが出かねないと思うんだけど。

 そう言ったところで聞いてくれないだろうし、それで成功してくれるのであればそれに越したことはないんだけど。


 そうやって見ていった中で購入したものは1つ。

 フリマのような雑多な商品を並べる露店にあったビスクドールと言えば良いのか?

 磁器製の人形が銅貨30枚で売っていたので買ってみた。

 あまりリアル過ぎると怖いが、愛嬌があるというか可愛らしい人形のためレニにあげる分には問題ないだろう。

 買う前に一応鑑定はしていて呪われていないことは確認している。

 これは露店の人に聞く限りでは昔買ったものの飽きたから売ろうと思っただけなのだそうだ。

 そんなわけで妹へのプレゼントを手に入れ、帰宅。早速レニにあげてみた。


「レニ、これをあげよう」


「やっ!」


 何故か拒絶された。心が折れそうになった。


「ほ、ほら可愛い人形だよ?」


「やっ!」


 走って逃げられた。完全に心が打ち砕かれる音がした。

 良かれと思ってしたことが此処まで拒否されるのがこんなに辛いなんて。



「ソ、ソラどうしたの? 人形抱えて塞ぎこんでるなんて。ちょっと怖いよ?」


 母に引かれたが俺に返事をする気力はない。

 ふらふらと自室に戻るが精一杯だった。




 人形は俺の部屋に飾ることにした。きっと俺のセンスが壊滅的にダメなだけで人形に非なんてない。

 他の人に買われればきっと可愛がられたんだろうが、レニには少し合わなかっただけだ。

 まあ、部屋にまで誰かを招く予定もとりあえずはないし構わない。

 誰かを家に招いても部屋は幾らでもあるんだし。ただ、部屋は殺風景過ぎるし何か集めるのも良いかもしれない。

 と、そうやって自己防衛をしておかないと耐えられる自信がないだけだけれど。


 結局、食欲もわかず汗だけ流して寝た。



 空腹のためか、起きたのは恐らくいつもより早い時間。

 食事は用意されているわけも無く、適当にスープを作ってそれを飲み朝食は終わり。

 思いのほかダメージは残っていて、それ以上食べることも出来なかった。

 昨日の昼が重かったこともあってそうでなくてもほとんど食べられなかっただろう。

 この分だと昼を食べれるかも分からない。

 ひとまず食費とだけ考えても十分過ぎるほどの金額は持っているし、問題ない。


「おはよう、お姉さん」


「うん。おはよう、早かったんだね」


 いつも通りの挨拶を交わし、作業場へ。


「商品の用意は済んでる?」


「う、うん。一応ね。ソラくん、確認してくれる?」


 保管されていたアクセを見ると、合計5つのうち、2つは大丈夫、残りの2つは簡単な手直しが必要、最後1つは作り直しと言った具合。


「こっちは平気。他は俺が手直し入れようか? 一度運ぶだけ運んだらお姉さんは店番、俺が手直しして出来次第持っていくか、こっちに取りに来てもらうかって感じでさ」


 それでも以前に比べれば全体的に完成度は上がっている。

 元々ある程度は作れていたから、それからさらに安定度が上がったということなんだろう。


「うぅっ……、ごめんね。こっちはソラくんから見てちゃんと出来てる?」


「アクセとしてはね。魔術品としてはまだまだだけど。俺が作ったよりもそれぞれが違うからこっちの方が良いと思う」


 大量製造にはない手作り感が出ている。

 それが精密なものであれば問題だろうけど、身につけるものに関してはそういった差が出たほうが良いと思う。


「うん、分かったよ。なら悪いけど、手直しお願いします」


 ペコリと頭を下げるお姉さん。さて、どれだけの時間で作れるものか。



 さっさと荷物の運搬を終えると工房でアクセの手直しからまず始める。

 彫金で模様が上手く出来ていないものや歪み、曲がっているものはさっさと直す。

 その後は本格的に作り直しのもの。それは銀のネックレスでペンダントトップが割れてる。

 チェーンそのものは俺が前に作ったものを使ったみたいだけど、ペンダントトップは純銀な気がする。

 銀は他のものと違い銀塊を多く作っておいて合金をそのたび作っていた。

 効率は悪いものの、一番出る種類が多いためいちいち加工をしないと幾ら合っても足りない。

 お姉さんが合金の割合を把握しきっているかは正直危うい。何対何の配合でどうなるかは作りながら説明はしたものの、基本的に調合と合金のレシピはメモしないようお願いをしている。

 基本的なものでもこの世界には厳密に言えばないような合成や調合は少なくない。盗難防止の意味もあるけどお姉さんの身を守る手段の一つだ。

 あれは今の技術では他で出回っているものと比較のしようがないため言わなければ分からないレベルでしかないわけだし。


 そんなわけで銀と銅を融解し、スターリングシルバーにする。

 注文として書かれているタグにはリング型のペンダントトップをダブル、装飾は無くて良いのでデザインは拘って欲しいという注意書きがあった。

 リング自体は連結する必要はなさそうなので熔かしたものを少し大きめに、男女それぞれの指に合いそうな大きさに加工する。もし違うのであれば手直ししたら良い。

 若干肉厚に、しかし不恰好にならないよう注意をしながら作り、形が決まった時点で冷やし固め、固まったら即研磨して光沢と出来合いを確かめる。

 あまり使いたくはないが、今回は時間がないから『促進』をほぼずっと使い続けている。異常に使い勝手が良すぎるから多用は本当に控えたいところだ。

 それでも1時間ほど費やして完成したそれらを包み、鞄に入れる。


 忘れ物がないか確認し、施錠をした上で工房を後にする。



「お姉さんっ。予約のお客さん、来た?」


「う、うん。もっとかかるかと思って夕方ごろ来て下さいって言っちゃったよ」


 思ったよりも早く終えたことに驚いているらしい。確かに急ぎすぎた。俺も少し焦っていたのか。


「そっか。ポーションはそろそろ終わりか。予約どれくらい取れた?」


 今回はポーションはいつも通り、アクセはお姉さんが間に合わなかったのか予約分のみ、ポーションベルトはなし、といった感じだ。

 ポーションベルトは工房や露店でも出回るようになったから、新作が出来ない限りうちで独占的に販売する必要もないと思うし。


「うん。予約は3件だよ。ソラくんも居るから今回は人気のあるやつも色々出してみたんだけど、平気だよね?」


「問題ないと思うよ。あとはそれをどれくらいお姉さんが作れるか、かな」


 リングに関しては人気のあるものは鋳型を作ろう。

 細かなディティールの差は彫金で出してあとは宝石を嵌めれるようなど工夫をするとして、細かいものでも早く正確に作れるはず。


 小声で今後のことを話し合う。客が来るたびに中断はしているが有意義な時間として使えたんじゃないかと思う。

 製法や具体的なことは流石に外だから話せないにしても、やっぱり言葉を重ねることには大切なんだと思う。

 今までも何度もしてきたけど、その度に今まで分からなかったことも分かった。

 例えばお姉さんの誕生日が春の1月の10日目だとか、リオナとの出会いだとか。


 と、それだけで済めばよかったんだが。

 みすぼらしい男が露店を訪れたことによって、それは叶わないものとなった。


「これを何処で手に入れたんですかっ!」


 お姉さんにも男の特徴は伝えていた。最初は諦めて貰おうと言葉を重ねていたのだが、男が魔術品を見せた時点でお姉さんの表情が変わった。

 焦り、不安、戸惑い、そんな切羽詰った表情で男に詰め寄る。


「ちょ、お姉さんどうしたのさっ。少し落ち着いてっ」


 慌てて後ろから抑える。だが、俺の筋力程度では逆に引き摺られるだけ。


「答えてくださいっ! それを作った人は何処に居るんですかっ! 無事なんですかっ?!」


 絶叫するような言葉で事情は把握できた。男もそれでまずいと思ったのか、走って逃げ出す。


「待って! ソラくん! 離してよっ!」


「少し落ち着いて、考えがある。今はそのまま泳がせる。あとは露店の撤退作業を」


 予約分を渡せていないが、緊急事態だ。そんなことを言っている場合じゃない。そっちは後で謝れば済むだけだ。


「で、でも!」


「あの男なら俺が場所を察知出来てる。だから、一度落ち着いて」


 正面に回りこみ、耳元で囁く。男が逃げた時点で『気配探知』を使って現在地は把握済み。何処に逃げたかも割り出せる。


「う、うん。分かった、けど……どうするの?」


「あの男の情報は俺が集める。お姉さんは使えるコネを全て使って人を集めて欲しい。出来れば戦闘を出来るような人を何人か。

 それと、お金は俺の方でもどうにか工面はするから冒険者ギルドにも依頼かけて。俺も住処を発見したら人を集めるから」


「わ、分かったよ。で、でも、無理しないでね?」


 少しは落ち着いてくれたのか。だが、少し震えた声で頷くのを確認すると、男が走り出した方向へ走り出す。



 人通りがなくなった時点で『隠密』のスキルを使い気配を消し、『強靭化』と『飛空』を使って空から男を追う。

 男はこの町にそれなりに精通しているのか、色々と裏道を抜けているが空を飛んでいる俺には無駄だ。

 俺にも気付いていないみたいだし、まずはこのまま泳がせる。



 着いた場所は案の定というべきか、流れ者たちが暮らす一角、通称ドロ板通り。

 以前スコットの魔具を拾って、くすねた流れ者たちが居た場所だ。

 さすがに前と同じ建物ではないが、少し離れた場所に根城を築いているらしく、コソコソと周りを探り建物の中に入っていくが、無意味だ。

 とはいえ、幾ら俺でも中に侵入するという愚行は起こさない。中にどんな罠や魔法陣が張り巡らされているか分かったものじゃない。

 スキルとしての『隠密』は覚えているが、それが使えない場合、気配を消すことは不可能だ。

 『気配探知』で探れるのはどれだけ集中しても中に何人の人間がいるか程度。

 中に居るのは2人だけ。不審な男がヒュウガを含めたとしても、2人しか俺は聞いていない。

 だから連絡要員だとまず判断する。断言は出来ないがある程度目星を立てた方が行動はしやすいだろう。

 残念ながら中の会話を盗聴するスキルはない。これが事前に設置可能であれば手段はあったけど、どうしたものか。


 ひとまず1時間ほど様子を見たり、中が見れないか建物の周りをうろついてみたが成果は無く。

 『気配探知』だけしてお姉さんと合流することにした。


 お姉さんと合流したのはサンパーニャでだった。お姉さんが言うには、ひとまず声をかけられそうな相手には掛け、その上でその人からも他の人に声をかけてもらえるようお願いをしているらしい。

 お姉さんには出せる道具に関しては用意してもらうことにして、あとは父と母に報告した上で少し街角を歩くことにした。



 話をすると、父は付いて来たそうにしていたが母が反対した。

 曰く、争いごとになる可能性があるなら後衛よりも前衛を重視したほうが良いそうだ。

 魔術を使っての支援ができるならともかく、父に魔術は使えない。

 そもそもバックアップの役割では悪いが父は俺に及ばない。広域での気配察知や探査に関しては父は得意ではないそうだし。

 そんなわけで父は留守番。母はいつも通り俺に魔術品を貸してくれた。

 今回は『シールド』と『加速』の2つだ。使い方次第では大いに役立ってくれるだろう。

 父は弓矢を持っていくようにしきりに薦めてきたが遠慮した。俺は弓矢の心得はない。

 弓道なら知り合いがしていたのを軽く見たことはあるが、あれとは原理は違うらしいし参考にならないだろう。使い慣れた武器でないと危なっかしくて仕方がない。

 そんなわけで俺はファルシオンとナイフだけ装備して町に出る。



 中央広場に戻ると、思った以上に俺に声をかけてきてくれる人が多かった。

 お姉さんの行動が常連の中で噂になっているらしい。娯楽の乏しい世界ならではの伝達速度ということか。

 それでサンパーニャの本来の工房主、お姉さんの父親は、居なくなってもちょくちょく常連客が確認してきたこともそれを裏付けできるだろう。元々町でも人気の合った鍛冶職人で人望も篤い。

 サンパーニャに駆けつけるつもりだったという人も何人か居て、事情を聞くと慌てたように走っていく人まで居た。

 周りに少しだけ聞こえるかどうか程度の声で会話を何人かとして、サンパーニャに戻る。

 その時点で店の中には10数名の人が集まっていた。どれだけ人気があったか分かるというものだろう。


「お姉さん、道具は準備できた?」


「うん。店にあるだけのポーションはあるだけ詰めたよ。あと、これはどうしようか」


 お姉さんの手にはピンクシルバーのバングルがある。短距離転移が籠められたもの、か。


「これも持っていこう。お姉さんは守護の腕輪、持ってる?」


 シールドと同じ防御呪文であるプロテクトのかかっている腕輪はお姉さんを守る手段としてはうってつけだ。むしろそれがなければ危なくて同行を許可できない。


「うん。お父さんから貰ったものだし、ちゃんと持ってるよ」


 大事そうに自分の腕に嵌まっている腕輪を撫で、答える。


「うし。じゃあ、相手も移動を始めたみたいだし、まずは説明から始めようか」



 集まった人たちを前に説明をする。

 お姉さんのご両親に繋がる情報が見つかったこと、その情報を持っているであろう相手が今、外に向かって移動していること。

 その追跡ために力を貸して欲しいこと。ただ、あまり料金は払えず、その代わり今回のポーションは全てうちから出すこと。

 最悪力ずくで切り開く可能性があるのと、監視役や先行任務が必要になること。

 そんな必要な情報を出していくと質問が幾つか上がる。

 ポーションはどれだけの数量あるのか、相手が町の外に移動しているのをどうして知っているのか、そもそも今回の情報は正しいのか、など当然のことばかりだ。


 ポーションは普段の余剰分と仕入れて未使用の分、合計241本。

 相手が外に移動していることを知っているのは、俺が気配探知を使えるということを伝えた。

 あまりおおっぴらにはしたくないが、隠しておける事でもない。程度の差はあるだろうが同い年のトールにも使えるようなものだし、今回は隠すことでのメリットがない。

 最後はお姉さんが答えた。男が持っていた魔術品を作ったのはお父さんで間違いない。雑で全体的に荒さもあるけど、間違いない。と。


 話に納得できず、3人ほど辞退してしまったがこれ以上説得する材料を俺もお姉さんも持っていない。危険の可能性だって十分あるんだし、強制できない。

 けど、それでも10人を超える人は参加してくれる。その事実にお姉さんは軽く涙を浮かべている。

 と、感動するのは終わってからにして欲しいので準備をして、それぞれに持てるだけのポーションを持ってもらい、残りはお姉さんが露店への運搬用に用意していたらしいポーションの運搬箱に詰める。

 これはグルンダの工房に依頼して作ってもらったそうで、両側に大きな木の車輪が取り付けられている。

 また、前面に取ってを付けてさながら旅行用のキャスター付きバッグのようになっているがその分多少重くても運べるようになっているそうだ。

 そこに詰められるだけのポーションを全部詰め、出ることにした。



 今回集まってもらったのが軽戦士が2名、重戦士が3名、弓手が2名、槍使い、拳闘士、魔術師と密偵が1人ずつ。

 密偵というのが職業として確立しているのが妙だったが、都合が良い。

 俺とその彼女、あと拳闘士の男性を先行として、魔術師が俺たちを追うために、彼が追跡できるよう彼が普段身に付けているペンダントを借り、彼を中心に本隊として後を追う。



 役割を決めた上でサンパーニャから出発すると、さすがに町の出口で止められる。

 物々しい武装をした男女が10人以上で出かけるのは尋常じゃない。そんなわけで話を手短に済ませ、それと少し前に怪しい2人組みが出て行かなかったかを念のため聞いた。

 すると、1人は俺が知っている人相の男、そしてもう1人は全身を真っ黒いローブで隠した怪しげな人物が確かに町を出たらしい。

 まるでハッフル氏のようだが、ハッフル氏にしては背が高く、ローブもみすぼらしいため恐らく違うとのこと。


 そんな情報を仕入れ、一行もある程度俺の情報の信憑性が増したのか、緊張した表情を見せるが誰も降りようとしない。

 軽戦士と槍使い、弓手が1名ずつギルドの依頼を受けた人だそうだが、それ以外は純粋にサンパーニャを心配してきてくれた人だ。お姉さんにとっても心強いだろう。



 町を出て、改めて『気配探知』を行う。と、妙なことに気付く。まだ町を出て30分ほどしか経っていないのに、40kmは進んでいる。時速に換算すると約80kmだ。この世界で、そんなに早く走れる人も乗り物もないだろう。

 俺がスキルを組み合わせても届くかどうかと言った所だ。それも身体が持つかどうかを度外視した条件だ。現状であれば精々馬より早く走れる程度か。飛べばもっと速度は出るんだが、その手の魔術はない、はず。

 となるとどうやって移動しているかが気になるが、今は追いかけるのが優先だ。


「大地を駆け抜ける恩恵を、我に『加速』」


 特殊スキル『加速』は移動速度を+20%してくれるものだ。以前使った『軽量化』にも似ているが、こっちはVITを+5してくれる効果がある。

 のはずなんだが、思ったよりも筋肉が変化しているようには見えない。+5程度では肉体を大きく変えないのだろうか?


 まあ、そんなわけで俺を中心とした先行部隊の行動を開始する。

 目指すは不審な2人組み。ようやく手に入った情報だ。逃すわけにはいかないだろう。




ようやく怪しげな男が目の前に現れ、物語は次の局面を迎えることに?

色々小ネタをはさんでみましたが、レールガンは光というか物質を加速して発射するだと思います。あえて使っていますので突っ込みはご容赦を。


評価やつっこみ等ありましたらお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ