1、己の才能
人は自分よりも下の人間がいることに安心する
友達と言いながら、自分よりも下の存在を側に置きたがる者もいる。
幸せは、幸せの上には成り立たない。
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「レオン。やっぱドキドキするもんだな」
そう言ったのは、レオンの前に立っているトーマスだ。
レオンとトーマスは親同士の付き合いがあり、幼いころからの親友である。
「僕も。昨日はあまり寝れなかったよ。目が痛い」
レオン、トーマスの前後には今年で10歳になる、もしくは10歳になっている同年代の子どもが教会に列をなして並んでいた。
しばらくして、レオンとトーマスが教会の目の前まで来た時、前方で大きな歓声が聞こえた。
「あちゃー、もう出たかー」
「今年はどんな上位才能が出たんだろな」
毎年、この「女神祭」では10歳になる子どもたちが女神から授けられた才能を近くの教会で鑑定しに行く。
近くと言っても、教会は都市にしかないため、田舎から来るものは2~3日かけてくる者もいる。
そんな「女神祭」だが、一つの都市に毎年1~2人の確率で「上位才能」を授かった子どもが現れる。
そして、トーマスの番がきた。
「トーマス・レイリーです!」
「ほほほ、元気があってよろしい。どれ、おぬしの才能は、、、おぉ!」
剣、炎魔法、身体強化魔法
ワッと教会が沸いた。
「3つ持ち、しかもすべて上位才能か、、、!」
「今年は豊作年だな、、、」
周りがざわつく。
トーマスは後ろにいるレオンに対してニカッと歯を出し、親指を立てた。
トーマスはそのまま複数人の大人に囲まれ、奥へと姿を消し、すぐにトーマスの両親もそれに続いて奥へと案内された。
「次、名前は?」
「レ、レオン・ロバーツです」
先ほど奥へと案内されていたトーマスの両親の顔は、誇らしげだったな。とレオンはふと思った。
「おぬしの才能は、、、『ステップ』じゃな」
また周りがざわざわする。
しかし、先ほどのトーマスの時とは違い、嘲笑がほとんどだとすぐに分かった。
「さすがに笑ったら悪いだろ」
「いや、だって、、、3つ持ちの後に最下級才能だぜ、、、プププ」
「次、名前は」
「—————!」
レオンは村へ帰る途中両親の顔をまともに見ることが出来なかった。
トーマスは良い才能を、自分は、、、それにくらべて、、、その現実が10歳の少年に重くのしかかる。
時々思い出すのは、トーマスの嬉しそうな顔と、普段は寡黙なトーマスのお父さんの嬉しそうな顔。
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レイリー一家が村に帰ってきたのは、レオンが村に帰ってきて2日後の昼のことだった。
「あ、トーマスだ!」
誰かのこの一声を皮切りに、皆はトーマスを囲むように群がった。
そこに、レオンの姿もあった。
「みんな、ただいま!」
「おいトーマス!3つ持ち、しかも全部上位才能ってすごいな!」
「うちの娘がお前のこと気になってたらしいんだがどうだ?」
村中の、特に大人が将来有望なトーマスを囲んで、すり寄っていく。
「あー、みんなすまないが、我々は近々トーマスが王都学校に通うために王都に引っ越すことになった」
「そこに従者の方が待ってくれているの~。家の整理とかもあるからちょっとごめんなさいね~」
トーマスの両親はそう言って、トーマスを村の大人から引きはがして実家の方へと進んでいった。
「あ、レオン。お前に話したいことがあるんだ。父ちゃんと母ちゃん連れて家で話しできないか?」
突然、トーマスがレオンのほうを向いてそう言った。




