#0-2 自信が持てない子
勉強 。勉強 。勉強 。
これ以外 、やる事はない 。
否 、やらなくてはいけない 。
家にいる時は 、ずっと勉強 。
そうじゃないと 、また怒られる 。
まぁ 、勉強してても 、怒られるんだけどね 笑
最近は 、お母さんがすごく遅くに寝てるから 、あまねも睡眠不足 。
お母さんより睡眠不足 。
学校 、お母さんが起きるより早く行かなきゃ 、また怒られる 。
いつからこうなったかな 。
... そっか 。
あまねの存在価値に気づいた時からか 。
「 出来損ない 」と言われたこと 。
お父さんもお母さんも賢いのに 、あまねはその真逆に生まれてきてしまった 。
みんなに追い付くように 、毎日努力してる 。
だけど 、ずっと学年 2 位だった 。
どんどん怒られる 。
努力してるのに 。
そんな毎日に 、あまねはもう懲り懲りだった 。
いつしか 、勉強をしているふりを始めた 。
成績も 、努力していた頃と 、ほとんど変わりはない 。
あまねには 、勉強するにはこれが必要 。
「 薬 」という幸せになれる道具を 、見つけちゃったんだ 。
「 お母さん 。参考書 、買ってくるね 。 」
「 ... 最近いくつも買ってるじゃん 。あんまり高いのは買うなよ 。 」
「 分かってる 。 」
この誤魔化しも 、そろそろ効かなくなるだろう 。
2 日に 1 回も参考書を買いに行く学生 、見たことある ? 笑
でも 、誤魔化しはずっと続けないと 。
お母さんに 、「 オーバードーズ 」をしていることなんて 、絶対に言えない 。
あまねには 、もっとたくさんの薬が 、必要なんだから 。
こんな人生 、辞めたかった 。
薬しか 、生き甲斐がなかった 。
ずっと 、「 死にたい 」を考える毎日 。
いつでも 、自殺して良かった 。
だけど 、せめて最後は 、誰かにあまねのことを聞いてほしかった 。
あまねは 、いつも 1 人だった 。
今まで作ったことがない 、友達を作ってから死ぬ 。
心に決めていた 。
「 薬で死ねるんかな 。 」
授業中にも関わらず 、急に隣から聞こえた言葉 。
その時隣の席だったのは 、百魔くんという 、ヤンキーらしい見た目をした子 。
そんな見た目の子が 、まさか自殺をほのめかす発言をするなんて 。
驚いたから 、百魔くんの表情を覗いて見たんだ 。
彼は 、容姿とは真逆で 、今すぐに消えてしまいそうな 、暗い表情をしていた 。
「 ねぇ 、今からさ 、あまねと屋上に行こうよ 。
あ 、もし良かったら 、鞄も持ってきてくんない ? 」
授業なんて 、どうでもよく思えた 。
彼は 、ほとんどの授業をサボっていたから 、
あまねがこんなことを言ったって 、別に何も思わなかっただろう 。
... 今しかないって思ったんだ 。
あまねについて 、話せるのは 。
百魔くんはすぐに頷いて 、鞄を持って 、2 人で教室を抜け出した 。
あまねがオーバードーズをしていること 、伝えた 。
話した瞬間 、彼は表情が一気に明るくなった 。
あまねも 、百魔くんとなら仲良くできるって 、初めて人を信用できたんだよね 。
百魔くんも 、同じなんじゃないかな 。
その後 、よろしくの挨拶として 、持っていた薬の瓶で乾杯をした 。
一緒に 、鞄の中に入っていた 1 瓶を 、全部飲み干した 。
どうせ 、百魔くんも学校に持ってきてると思ったから 、鞄を持ってきてって頼んだんだよね 。
あまねの予感は 、大正解だった 。
家族の事は話せなかったけど 、いつか話せると思った 。
新たに 、陽翠っていう仲間もできたし 。
でも 、こんなに頼って良いのかな 。
こんな出来損ないと 、一緒に居て楽しいのかな 。
夜は 、不安ばっかりが 、頭の中を支配する 。
こんなことを考えながら 、さっきドラッグストアで買った薬を一気飲み 。
大丈夫 、5 種類は買ったから 、多分 3 日は耐えられる 。
この量 、今はもう慣れてしまって 、フラフラもなくなってきた 。
帰り道だけど 、感じるのは 、薬を飲んだ気持ち良さだけ 。
薬を飲んだすぐのこの時間が 、あまねの 1 番幸せな時間 。
堪らない 。
大好きな時間 。
やっぱり生き甲斐だ 。
そうだ 。
参考書が買える本屋さんはまだまだ遠いし 、もうちょっと遅く帰ってもバレない 。
まだ一昨日お邪魔させてもらったばっかりだけど 、近くの陽翠の家に行こうかな 。
陽翠は 、あまねのお母さん的な存在だから 。
... あーあ 、また人に頼ってる 。
「 出来損ないなんだから 、もう死んでも良いかもな 、笑 」




