#2-3 周りに合わせる技術
「 久しぶり 、もう大丈夫そう ? 」
「 うん 、なんとか 。」
なんて 、本当は嘘なのかもしれない 。
本当は死にたい 。
本当は楽しみたい 。
本当は生きたい 。
自分の気持ちがわからないのは 、すごく困るし 、他の奴らと比べてもそうとうハンデ 。
それも 、全部病気のせいだった 。
ただ 、病気のことは 、まだクラスメイトに言っていない 。
だから 、バレたら終わる 。
隠すんだ 、絶対に 。
本当の気持ちがわからないのなら 、全てを適当に 、話を相手に合わせればいいんだ 。
「 うわ 、1 限から数学じゃん … 。 」
「 朝から 、頭回んねぇよな 。 」
「 それな 。頭使うやつ 、超嫌い 。 」
俺ら文系にとって 、理系代表の数学は 、とてつもなくでかい敵だ 。
小学校の範囲でもイマイチなのに 、高 2 とかマジで意味わからん 。
数の学習って漢字だけど 、実際は記号ばっかり出てきて 。
覚える必要のある公式なんて 、似たようなアルファベット並べただけ 。
だましやがって 。
特にもとからやる気のない俺は 、頭を使ってくっそ長い計算・証明なんてできっこない 。
出題者からのパワハラだ 。
うったえて勝てるくらいの 。
テンション上がんねぇな 。
なんで学校なんてあるんだろ 。
そもそもなんで生きてるんだろ 。
死にたい 。
「 おま 、大丈夫か ? さっきからぼーっとしてるけど 。 」
「 … あ 、ごめん 。 」
会話を理解することに時間がかかり 、ワンテンポずれる 。
中枢神経が障害でも起こしてんのかってくらい 、判断機能がにぶいんだろうな 。
なんだか 、動くのもゆっくりな気がする 。
舌がまめらなかったから 。
どうなってんだよ、俺の身体 。
もっとテンション上げてくれよ 。
「 ちょっとトイレ行ってくる 。 」
「 いや 、後 1 分で授業始まるぞ ? 」
うわ 、全然時計見てなかった 。
でも 、数学の先生は 、優しい先生だから 、多分許してくれる 。
しかも 、おじいちゃんだから 、頻尿には理解あるだろ 。
まぁ 、違うけどな 。
俺が 、頻尿なわけないじゃん 。
「 しゃーないから 。先生に言っといて 。 」
「 了解 。なるべく急げよ 。 」
「 頭に入れとく 、 」
鞄から黒いポーチを取り出し 、それを持ってトイレへダッシュ 。
授業が始まる直前だったから 、誰もトイレには居なかった 。
ラッキー 。
ちょっと安心したわ 。
じゃあ個室でこそこそやる必要はない。
鏡の前で堂々としよう 。
個室に入ってたら 、こいつめっちゃ大便してんなって思われるから 、嫌なんだよな 。
ポーチの中に入っているのは 、オーバードーズ用の薬 。
これをすると 、ハイなテンションを楽に作れる 。
薬は 、俺を楽にしてくれる植物 。
大切な宝物だ 。
すごく便利だから 、いつも忘れずに学校に持ってきている 。
バレても 、病気の薬ですって誤魔化せる 。
さっそく薬を飲もうとするけど 、教室に水が入った水筒を置いてきたことに気付く 。
もう既にチャイムはなっていて 、授業中だから 、取りに戻るのは気まずすぎてできない 。
… 仕方ない 、蛇口からの水を使おう 。
こういうごじせいだから 、飲めるように管理してるかもしれないけど 、汚いかもしれないし 。
汚いほうが 、体に悪いから 、ありがたいけどな 。
オーバードーズには 、向いている 。
まずは 20 t 、口の中に入れる 。
さすがにこの量は飲み込めない 。
だから 、蛇口からの水を両手に貯めて 、薬たちと一緒に 、一気に飲み干す 。
あぁ 、おいしい 。
すぐには聞かないけど 、授業終わりには 、そうとうハイになっているはず 。
休み時間 、友達らしき奴と 、テンションぶち上げでエンジョイするんだ 。
はは 、これこそが望んでいた青春だよ 。
楽しまなきゃ 、いい青春にはならない 。
やっぱり 、依存するよな 、
先生 、俺はしょおきに戻るんですか 笑




