#2-1 普通じゃない人生
起きた時から なぜか視線を感じる
すごく小さい 畳の和室
ここは 俺だけの部屋のはず
寝る前には かぎもかけたきおくがある
誰も入れない
だけど 誰かが居る
この部屋をねらってる
今日は 家から出てはいけない気がする
付きまとわれて 最後には殺される
そんなみらいが見えた
だから 今日はだめ
部屋にこもる
お母さんに連絡を入れるため スマホを起動させる
ロック画面には 12:00 の文字
よく寝ていたようだ
こんな時間なら もうお母さんは学校に連絡入れてるよな
ならいっか
外から 誰かの怒鳴り声がする
昼にうるさいなぁ もっと俺を休ませろよ
段々と 音が 大きくなってきた
物を壊したり 皿が割れたり 悲鳴もセットで
それが なんで耳元まで
身体中が 痛い
小学生の いじめられてた時みたいだ
毎日殴られて 話しかけられても全部悪口
気持ち悪い
こんな俺も
「 開けなさいッッ 」
苦しい呼吸音に混ざって 小さくお母さんの叫ぶ声が聞こえる
お母さん 俺のために仕事休んだんかな
開けなさいって さっさと開けろよ
そっか
俺 部屋のかぎ 閉めっぱなしにしてたわ
だけど 今 1 番はなれたベッドの上に居るから 無理だ
こんなに苦しいのに すぐ動けるわけがない
とりあえず 動こうとはしてみるけど
あいつらの声が ずっと聞こえる
すぐそこにいる
なんで入ってきたのか
まだ俺を苦しませたいのか
そんなんなら 今すぐに死にてぇよ
立っても すぐに倒れてしまう
酸素が 少ない
全部 あいつらが 奪った
助けてよ お母さん
無理やり身体を動かし なんとかドアの前へ
握力のない白い手で かぎを開けた
「 呼吸が 荒いね
お母さんの真似 してみて 」
やっと 酸素が足りてる
だけど まだうまく立てない
お母さんの真似 できてるんかな
助けてくれてるけど ちゃんと期待通りにできてる気がしない
いじめられてるなんて 思ってなかった
お前らの言う通りに 良い奴にしてただけだった
ある時 俺は利用されてるって気付いた
もっと早く気付いて 反抗していたら
アザも 折れた骨も この病気だってなかった
普通に生きられたじゃないか
今の俺は 普通じゃない
気持ち悪い 迷惑をかけるだけの人間
価値は ない
でも なんとか生きてる
俺は 被害者
ずっとわかってる
それなのに 俺だけ 辛いのは なぜだろうか




