翡翠さんの知らないうちに女神がいろいろ勝手なことをしました
女神がついに青水資金を勝手に使い始めました。作者なので造幣局ですね。
「おい、くせの強い女神、ちゃんと転移させたか?」
「させたよ。ワンダーウーマンのコスで付き添ってやった。かわいい男の子はいつだって邪な欲望の餌食になりかねないからな。」
「アマゾネスはアドニスをどうするのかな?」
「何もルールを作らなければ取り合いの争いになって国が滅ぶから、いろいろ考えたのではないか?たとえば年に1度開催される槍投げ大会に優勝したら1日だけ独占できるとか。」
「アドニスは受け入れるかな?」
「ヴィーナスのようなエロエロ女ではなくて、自分を狩人として、男として育ててくれる女戦士たちだから、尊敬するだろ。」
「女神さん、そういう単純なものではないと思うぞ。尊敬で勃起できるか?」
「う、そういうはしたないことを堂々と私に言うな。」
「まあ優勝者は1日独占できるのだから、見せびらかす喜びで満足できるかもしれん。」
「アドネイアという祭りがあるらしいな。アドニスの死を嘆く女の祭り。」
「鉢植えをたくさん作って、枯れた植物を海に投げて、それから悲嘆に暮れる。今でも行われる地中海のイベント。」
「美少年は儚いからな。儚くて尊い。死んでアネモネになったんだよ。そして亡骸を見たヴィーナスが流した涙が薔薇になったとか。地中海の耽美だ。上質な妄想のご馳走だ。」
「やめい!特殊なレディコミみたいに消費するんじゃないよ!」
「ところで、ちっともご新規様が増えていないじゃないか。努力が足りないのではないのか?」
「努力はそれなりにしているんだけど、どんどん特殊な世界に沈み込んでいるかもしれない。」
「いっそのこと俺TUeeeで爽快感をプレゼントにしてみるとか。」
「主人公が翡翠だから、そのあとのハーレム自動製造が成立しない。」
「乙女ゲーみたいに攻略対象を複数用意するとか?」
「そんな無茶苦茶やったらもう戻れなくなるよ。」
「だな。まああきらめて新企画を思いつくまで頑張るんだな。私はいつでも出撃する用意はあるぞ。」
「あんた魔法が使えねえじゃん。わりと弱いんじゃね?」
「あ、そうだ。青水よ、無限に作り出せるゴールドくれ。」
「何するんだ?」
「魔法屋に行って適性調べてくる。適性があればお買い上げだからゴールドが必要だ。余ったら返すから500万ゴールドくれ。」
「まあ良いけど。俺が造幣局みたいなみたいなものだからな。」
「おい、魔法屋!試練の女神である。今日は私自身の試練に来た。魔法の適性を測定してくれ。適性があればすべてお買い上げだ。」
「では、こちらへ。」
「おお、さすがは女神様!治癒と闇以外のすべての適性があります。」
「ふふふ、女神だから当然よ。すべてお買い上げだ。」
「ただいま。治癒と闇以外はすべて適性があったぞ。ついでに道具屋でアイテムボックスも買ってきた。」
「好き勝手してくれたな。余ったゴールドを返せ。」
「やだね。式神がいちいち金をせびるのでゴールドが必要なんだ。どうせおまえは無尽蔵に作り出せるのだからかまわないだろ。」
「ちっ、まあ良いけどさ、あんた、闇はともかく治癒がないって女神としてどうなの?怪我人を助けられないね。無慈悲の女神。」
「そんなこともあろうかと治癒ポーションをたんまり買ってアイテムボックスに入れておいた。治癒など金で何とでもなる。」
「何だか出撃したくてたまらないようだな。まるでヴィーナスがアドニスを手込めにしたくてたまらないのと同じ熱量を感じるわ。」
「変なたとえをするな!」
「どこか行きたいところがあるのか?」
「私も美少年を助けたい。ナルキッソスかヒアキントスか。」
「両方行けるだろ。簡単だ。」
試練の女神は古代ギリシャ神話世界のデルポイに来た。ここはアポロンの神殿があり、巫女によって神託が授けられる場所である。美少年ヒアキントスはスパルタ王家の一員とされる場合もあれば、歴史を司るムーサのクレイオーとベラ王ピエロスの間に生まれたとされる説もある。出生はどうでも良い。アポロンに愛された少年ということだけが重要だ。これはこれはオネショタならぬアニショタの関係とだと言っておこう。古代ギリシャなので全裸でスポーツに興じる。女神が目にしたのは、全裸の美青年と美少年が楽しそうに円盤投げをしている場面だった。女神は始めて見る男性の全裸に目が点になった。ただし、ギリシャ古典美学の影響で、女神が最も興味を抱いていた股間の一物は幼児のそれの形をしていた。女神の認識に刷り込まれた男性器の形は幼児のものになった。
「はっはっは、ヒアキントス、もっと腰を使って投げないと距離は出ないぞ。」
「アポロン兄さん、すごい!兄さん、すごいです!」
仲睦まじい二人の様子を歯ぎしりしながら上空から眺めている有翼の神がいた。風の神ゼフィロスである。
「くそお、ヒアキントスめ、アポロンとあんなに仲良くなって。俺のモヤモヤはどうしてくれよう。」
アポロンが投げた円盤をヒアキントスが拾いに行こうとしたとき、ゼフィロスは風を操って円盤の向きを変えた。その軌道ではヒアキントスの頭に激突するしてしまう。女神は人間には不可能な動体視力と跳躍力でヒアキントスの命を救った。
「キャッチ!危機一髪ね。」
「お姉さん、ありがとう!」
「どこのどなたか存じ上げないが、危ないところでした。ヒアキントスを助けていただいてありがとうございます。」
「円盤の軌道が妙な具合に曲がったわ。空に風の神ゼフィロスがいたみたいなので、彼の仕業ね。ヒアキントスくんに横恋慕で、かわいさ余って憎さ百倍ってやつかしら。しっかり話し合っておいたほうが良いわよ。注意しないとヒアシンスにされちゃうわ。きれいな花だけど猛毒を持っているので、できれば死んで花にならないで天寿を全うしてね。」
「何、ゼフィロスだと?鳥野郎のくせに大胆なことを。わかりました。しっかり落とし前を付けさせます。」
「じゃあ私は行くわね。」
「お名前を。」
「あ...名前...そうね、シレンよ、シレン。試練の女神と呼ばれているの。そうだ、せっかくだからアポロンさんに試練の覚悟を訊いておきましょう。アポロンさん、ヒアキントスくんがもう少し育ってムキムキになってきたら、きっと女の人を欲しがると思うの。そのときは笑って送り出してあげてね。」
「わかりました。神々の世界で白い歯と笑顔が似合うナイスガイのアポロンです。もちろん笑って送り出しますよ。」
女神はギリシャ神話の世界を抜けてローマ神話の世界へやってきた。ゼウスに相当するのがユピテル、ヘラに相当するのがユノーになる。この夫妻がトップに立つ世界だ。あるとき夫のユピテルが下品な質問を妻にした。
「なあ、やっぱ女のほうがあれやっているときの快感は男の何倍も大きいんだろ?羨ましいな、おい。」
「そんなことはありません。何を言い出すの?」
「ならば、男女両方の快感を知っているテイレシアスに訊いてみようじゃないか。」
テイレシアスは森の中で交尾している蛇を見つけたとき、邪魔したくなってつい杖で殴りつけたことがあった。すると、どういうわけか女体化してしまい、数年間女として暮らした。そしてまた森の中で交尾している蛇を見つけたので杖で殴りつけたら、今度は男に戻った。つまり彼は男の快楽も女の快楽も知っていたのである。
「テイレシアスよ、男と女、どっちが気持ちいい?」
「圧倒的に女です。あれは忘れられません。」
ユノーはどうでも良いこの質問に対するこの答えに不満で、神罰としてテイレシアスの視力を奪ってしまった。神罰は他の神によって覆すことはできないので、ユピテルは目が見えない代わりに未来が見える能力を授けた。それ以来、テイレシアスは占い師として有名になった。あるとき彼のもとにレイリオペというニンフがやってきて、彼女の息子ナルキッソスが天寿を全うできるか尋ねた。ナルキッソスは川の神が彼女を流れに巻き込んで幽閉して乱暴した結果生まれた少年だったが、この上ない美しさを備えていた。テイレシアスは答えて言った。
「自分自身を知るまでは長生きできるだろう。」
この預言は当たったのだろうか?ナルキッソスは誰もが目を向ける美しさを備えていたので、男女を問わず多くの人々が彼に恋をして告白したが、ナルキッソスは誰の言葉も聞こうとはしなかった。美しい姿形を持つ人間にありがちな思い上がりである。自分自身が最高なので自分より醜い相手に身を委ねる気持ちにはなれない。自分が美しいのでそれで満足だという美の自己充足は、どのような結果を招くだろう。女神はナルキッソスに尋ねてみた。
「ナルキッソスくん、誰の告白も聞こうとさえしないけれど、それってかなり傲慢ではないのか?」
「傲慢?誰でもそうなんじゃないのかな?自分より劣った者に身を委ねる気になれますか?女神さん、委ねたことあるの?」
「うぐ、いや...ないが。」
「でしょ?女神様程度でもそうなんだから、ぼくが身を委ねるわけがないじゃない。」
「そうだな...」
あるときエコーというニンフがナルキッソスの姿を見て一瞬で恋に落ちた。ただしエコーは、ユノーの呪いで声のほとんどを失っていた。ユノーがユピテルの浮気現場を押さえようとしたとき、エコーは無駄なおしゃべりで時間を奪い、結果としてユピテルを取り逃がしてしまったので、ユノーはエコーに呪いをかけ、相手の言った言葉の最後の部分だけを繰り返すだけになってしまった。ナルキッソスが友人たちとはぐれたとき、彼が仲間を呼ぶ声の末尾をエコーが繰り返し続けたので、ナルキッソスは少し興味を抱いた。
「どこにいるの?」
「どこにいるの?」
「ここで会おう!」
「ここで会おう!」
逢い引きの誘いのような言葉を口にしたことでエコーの欲望に火が付き、ナルキッソスに近づいて抱きついてしまった。するとナルキッソスは、とても悲しい拒絶の言葉を吐いた。
「触るな。死んだほうがましだ。君の好きにされるなら。」
「君の好きにされるなら...」
拒絶された彼女は森の洞窟に身を隠し、身体が衰え、やがて声だけ残して消えてしまった。木霊になってしまったのである。彼女のように手酷い拒絶によって恥辱を与えられた男女は数知れず、多くの人々が復讐の女神に呪いを託した。ナルキッソスも恋に焦がれるようになり、そしてその相手からは受け入れられませんように、と。
女神は誰とも遊んでもらえなくなったナルキッソスに再び声をかけた。
「ねえ、断るにしてももっと言い方があったんじゃない?ぼくは外見が美しいかもしれないけれど中身がちょっとアレなので、別の人を探したほうが幸せになれますよ、とか。威張って蔑むような言葉を吐くのは、女神として許せないな。罰して良い?」
「え?神罰ですか?」
「神罰というわけじゃないけれど、あなたこのままだと自分以外を愛せなくなっちゃう、いやもうなってるね。それってどうなるかわかる?」
「いえ、わかりません。」
「永遠に自分だけを見つめて、でも決して手に入れられない。どう?イヤでしょ?」
「はい、さすがに困ります。」
「だったら、愛だの恋だのと難しく考えないで、どんどんナンパして快楽にひたりなさい。そうすれば美の理想なんてありそうでなさそうなものがどうでもよくなっちゃうと思うわよ、たぶん。私は女神なのでそういうことできないけど。」
「そうでしょうか?」
「そうよ。あなたのビジュアルならナンパ成功率が90%を超えるわね。子どもがいっぱいできるかもしれないけれど、美の遺伝子がばらまかれるのは世界にとって良いことよ。はい、これ、マイ梅干し。性病にならないように毎日食べなさい。味が独特なのでプラセヴォ効果はあると思うの。あと...お願いだからティンティン見せて。」
「イヤですよ。」
「ちっ、まあ良いわ。それじゃさよなら。鏡は見ないほうが良いわよ。」
女神は始めて全裸男性、それもとびっきりの美形を堪能できました。ところでギリシャ彫刻の股間にちんまりと鎮座するあれ、なぜそうなっているかご存じですか?現実の場でも露出した亀頭は忌み嫌われたのでキュノデスメという革紐で包皮を結び成長を止めていたのです。