翡翠さん、あまり気乗りしないけれど西部開拓時代へ行く
更新が、いやこれって更新なんですか、投稿では?投稿が滞りました。火曜の夜に大学時代の友だちと飲んだらけっこう深酒になってしまい、水曜日は呆けていました。
「青水よ、更新が滞っていないか?」
「うん、なんか気力が高まらない。夏休みが終わっちゃう悲しみに押しつぶされそうで。」
「小学校以来積み重ねられてきたからな。」
「あと...ネタが尽きてきた。」
「80話過ぎまで引っ張ったからな。私が提案してやろうか?」
「怪獣とか扱いにくいのはやめろよ。」
「ドラキュラはどうだ?」
「それはもう『織田家のアナザー・ジャパン』で解決済みなんだよ。第75章“ドラキュラ・カプリッチョ”。https://ncode.syosetu.com/n7138kh/75/」
「うわっ、ニンニクだらけでエグいな。」
「カーミラとドラキュラはもう済んだので、この他のヴァンパイアとなると、とたんに知名度が落ちる。」
「ゾンビは?なあ、ゾンビは?」
「あれは伝染病みたいなものだから手の出しようがないだろ。翡翠も噛まれて生ける屍になるわ。」
「あ、そうだ!宝塚ミュージカルで大ヒットの“エリザベート”はどうだ?」
「なぜ名前がフランス語読みになったのかわからんあれだな。本来のドイツ語読みならエリーザベトだがね。ありゃダメだ。擬人化した死に魅入られた女だから助けたらお話にならない。宮廷のドロドロ劇でつけいる隙がない。落日のハプスブルク家と絡み合った滅びの美だからな。」
「じゃあ、そうだな。西部劇は?」
「ずいぶんとアバウトな括りで提案してきたな。」
「ほれ、ガンマンの女神!」
「おまえ、それがやりたかっただけじゃないのか?具体的にどの作品とか考えていないだろ?」
「だってわかんないんだもん。もう流行らないだろ、西部劇なんて。」
「いろいろ人種問題とかで微妙だからな。」
「その人種問題の微妙なところが試練の女神の好物かもしれない。私を行かせろ。この腰のピースメーカーが火を吹くぞ。」
「人殺しに行きたいのか?介入は人助けだぞ。」
「だって西部劇だし、西部劇と言えば撃ち合いだし、硝煙と馬糞の世界だろ?あ、牛糞もたっぷりあるか。」
「とりあえずおまえはおとなしく待ってろ。少しセンシティヴな話だ。行き先は1960年の映画『The Unforgiven』だ。」
翡翠は1870年のテキサスにやってきた。この町で牧場を経営しているザッカリー家が今回のミッションの介入先になる。父はいなくて長男のベンが仕切っている。家族は他に母親で未亡人のマチルダ、次男のキャッシュ、三男のアンディ、そして養女のレイチェルだ。この地区にはカイオワ族というインディアンが住んでいる。この牧場一家とカイオワ族の間にコンフリクトがあり、何人か死ぬ。ザッカリー家の近所ではローリンズ家がもっと大規模な牧場を営んでいて、ザッカリー家とは良好な関係を育んでいた。翡翠は白馬に乗った美しい娘と出会う。
「こんにちは、このあたりじゃ見ない顔ね。」
「こんにちは。私はジェイディと申します。ハーヴァード大学の学生で、この土地の先住民の習俗や歴史を調べています。」
「まあ、遠くから来たのね。インディアンは危険だから近づかないほうが良いわよ。」
「はい、でも近づいてお話を聞かないことには研究になりませんので。」
「東部のエリートさんは妙なことに興味を持つのね。」
ワイルドウェストでは馬がないとどこにも行けないので、翡翠は馬牧場に馬を買いに行った。
「こんにちは。馬を買いに来ました。」
「どんなのが欲しいんだ?」
「私、今はこんな格好をしていますが、元々は赤白の衣装が基本なので、それに似合うのが良いかなと。」
「なら白馬一択だな。映えるぜ。」
「それにします。ありがとう。」
「さて、どうしましょう?まずはカイオワ族の村に行って話を聞いてきましょうか。何かお土産を持って行くと喜ばれますね。マシュマロと梅干しと、すぐ手に入るのはこの2つなんだけど、ここはあえて、わかりやすいマシュマロではなく梅干しで攻めてみましょう。女神様!梅干しの壺を送ってください!」
「こんにちは。私はジェイディといいます。東から来ました。」
「おまえは白人ではないな。」
「はい、これお土産です。日本の梅干しといいます。」
「すごく酸っぱい匂いがする。」
「そのおかげですごく長持ちする食べ物です。そのまま食べると唾液が止まらなくなるので、味が薄い何かといっしょに食べたらどうでしょう。」
「なるほど。ありがとう。」
「カイオワ族と白人の関係はどうですか?」
「あいつらが増えたおかげでバッファローが減った。集落から追い出して保留地に移り住むように圧力をかけられている。以前、襲撃されてたくさんの村人が死んだ。もっと銃があれば負けなかった。」
「なるほど。状況は理解しました。」
翡翠は情報を得るために酒場(Saloon)に行った。
「よお姉ちゃん、見慣れねえ顔だな。何飲む?」
「ガキなのでミルクでお願いします。」
「はいよ。ガキは無理しちゃいけねえな。」
「この界隈は平和ですか?」
「エイブ・ケルシーという爺さんが、ザッカリー家の末娘がインディアンだと触れ回って、みんなと悶着を起こしている。」
「まあ、何か深いわけでもあるのでしょうか?」
「わからん。やつは昔、死んだザッカリーの旦那の相棒だった。何かインディアンがらみの問題があったのかもな。そういやザッカリー家に押しかけるって息巻いていたな。」
「まあ大変。撃ち合いになる前に止めないと。ごちそうさま、これで失礼します。」
ザッカリー牧場の前で老人が怒鳴っていた。
「レイチェルはインディアン娘だぞ!白人じゃねえ!」
牧場の中から2人の男が銃を手にして出てきた。
「家族の名誉を傷つけたな。生きては帰さんぞ。」
翡翠が割って入った。
「はい、ストップ!撃ってはいけません。カームダウン、プリーズ!トラブルは言論で解決するのが文明人です。皆さん、文明人ですよね?Are you civilized?」
「何だ、おまえは?インディアンの女か?」
「いえ、ジャパニーズですけれど、言ってもわからないでしょう。私のことはともかく、このケルビーさんの言い分が本当かどうか解明しないと先へ進めません。ケルビーさん、この家であなたの顔を知っているのは?」
「ウィルのかみさんのマチルダだ。古い付き合いだから良く知ってる。俺の家内とも仲良くしていた。」
「ではマチルダさんに出てきていただきましょう。顔を合わせれば、少なくとも知り合いか否かはわかります。素人に知らんぷりの演技はできませんからね。」
「良いだろう。キャッシュ、母さんを呼んでこい。」
キャッシュに連れられて出てきたマチルダは、ケルビーの顔を見ると顔面が蒼白になった。明らかに過去に因縁があった様子だ。
「マチルダ、久しぶりだな。お互い、歳を取ったな、おい。」
「エイブ、あんたなぜここにいるの?うちの人がインディアンに殺されたとき、あんたもそばにいたんだろ?なんで1人だけ逃げてきた?」
「1人だけ?いや、いっしょに逃げたさ。たまたまインディアンが投げたトマホークがウィルに当たって俺には当たらなかった、それだけのことだ。」
西部劇ですが、女神と違って翡翠さんは銃をぶっ放したりはしませんよ。なぜ気乗りしないかというと、西部劇の世界って、話が通じなさすぎる。すぐ銃を抜くし。