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翡翠さん、タイトルが変わってもやることはしっかりと

前のタイトルだとご新規さんに伝わりにくいので、わかりやすくしました。


「おい、青水、やっぱり翡翠は手際が良いな。」


「主役だからな。おまえとは違う。」


「私は私で良い味出していたと思うんだが。」


「おまえは暴力的に力でねじ伏せただけだ。調律になっていない。」


「力なき正義は無能とパスカルが言った。」


「正義なき力は暴力だ、と続くな、その格言は。」


「私は暴力を振るってないぞ。」


「いや、振るったな。罪のないゴールデン・アルラウネを金のために狩り尽くした。」


「だって魔物なんだもん、みんなやってるじゃん、金策やレベル上げのために。」


「はい、出た。“みんなやってるじゃん”。さらに“だって魔物なんだもん”も。」


「何だよ?」


「女神のくせに人間臭いな、それも凡人だ。そんなんで良いのか?」


「だって目立たないんだもん。」


「そんな君に朗報だ。何と“女神”が作品タイトルに入ったぞ!」


「何?本当か?」


「前のタイトルだとご新規さんが入りづらいので変えた。新しいタイトルは...ジャーン!『翡翠さんタイムトラベル――巫女が女神に送り込まれた歴史や物語に介入して胸くそを潰します』。」


「何だかラノベ感を出そうと必死だな。」


「読まれてナンボだからな。」


「まあ女神の二文字がタイトルに入って満足だ。これでもっと本編にも登場できる。」


「できねーよ。読者が怒る。」


「そうかな?読者アンケートを実施して訊いてみ。試練ちゃんがもっと本編でも活躍したほうが良いですか?って。」


「そんな機能は実装されていない。」


「ちぇっ、青水ワールド人気投票したら、翡翠には負けても、2位は確実なのにな。」


「どうだかな。まあ思うのは勝手だ。」






「ところで皇帝陛下、新しいお召し物を発注なさったそうですね。」


「おお、そうなのじゃ。外国から来た流れの仕立屋、たしかオートクチュールと言っておったが、贅の限りを尽くした材料で作ってくれる。」


「素晴らしい計画ですね。製造工程を見学したいのですがよろしいですか?」


「おう、あの者たちが言うには、自分の地位にふさわしくない者や手におえない馬鹿者には布が見えないそうだ。」


「それって危なくないですか?それを着てパレードをすると、今言ったような者たちにその布地で作った服が見えないのですから、裸になってしまいますよ。私が提供したサイバー・アンダーウェアを着た状態に見えるはずです。まあそれでも十分にかっこいいですけど。」


「そうだな、あのサイバー・アンダーウェアを着た姿だと未来の戦士みたいでかっこいいな。」


「ともかく行って見学してきます。」


「そなたは賢者だから見えるはずじゃ。頼んだぞ。」




 指定された部屋へ行くと、仕立屋を自称する男たちが談笑しながら機織り機を動かしている。いや、動かしているように見せている。音を出さないと仕事をしていないように思われるからだ。


「こんにちは、みなさん。」


「あ、このあいだのイモ姉ちゃんか。きょうはずいぶん派手な格好だな。」


「これはドラゴンをクエストする者の伝統的な衣装です。みなさん、仕事ははかどっていますか?」


「おう、見てみな、この美しい光沢。」


「あれ、何も見えませんが。」


「ああ。言いにくいけど姉ちゃん、あんたは手に負えない馬鹿だわ。そういう奴らには見えないんだよ、この布は。」


「でもほら」翡翠は機織り機に手を突っ込んで布があるはずの場所を引っかき回した。「手に何も触れませんよ。馬鹿でも触れるんですよね?」


「い、いや、馬鹿には見えないし触れないんだ。手をどけろ。布地がめちゃくちゃだ。」


「そうですか。あ、そうそう、皇帝陛下がおっしゃってましたよ。めったにない機会なので3着作って欲しいって。材料費は惜しみなく払うそうです。」


「何?そうか、それは良かった。商売が3倍に膨れ上がる。」


「おめでとうございます。それでは私はこれで。」



 翡翠は皇帝の元に馳せ参じると今の観察結果を報告した。


「陛下、布地は目に見えないだけではなく触れることもできません。さすがに詐欺ではないかと疑うべきかと。そこで罠を仕掛けてきました。材料費は出すから3着作れと陛下が命じたと。」


「何?3着だと?」


「はい、見ることも触ることもできない無の布地。これを詐欺師たちに着せて町をパレードさせるのです。全裸にすると町の環境に悪いので、そうですね、下着はこちらで支給しましょう。私にお任せください。」


「よし、任せたぞ。不埒な奴らめ。首をはねてやろうか!」



 翡翠は異世界のブティックで詐欺師たちに支給する下着を作らせた。上は“Piccolo“とロゴの入ったTシャツ、下は“Vanitas“とロゴが入ったゾウさんパンツだ。できあがった下着を持って翡翠は皇帝の元へ参上し、詐欺師たちに着せるものを見せた。


「これは...死ぬより辛いかもしれん。」


「はい、私をこの世界に遣わした女神様が大喜びする試練となりましょう。」


「パレードさせたあとはどうしてくれよう。」


「そうですね、町の大通りに晒し台を作って、そこに夜まで立たせましょう。そのあとで支払ったお金を回収して、町の外に追放するのが良いと思われます。下着姿で。」


「賢者よ....そちは顔に似合わずとことんやる女じゃのう。」


「女神様の思し召しです。」


今回のクエスト....いやコスチュームはクエストでしたが、違いますね、今回のミッションはとても簡単なものでした。休暇明けのリハビリですね。きょうはこれから友人たちと会食なので、リフレッシュしてきます。

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