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翡翠さん、ルイスの妹と長女と長男を迎えに行くためウィーンに転移する

女神の力で転移って本当に便利ですね。これがないとこの小説は成り立ちません。


「なあ青水、おめでただってよ、オメデタ!」


「嬉しいからってカタカナとひらがなで2回言うな。」


「名前、どうしよ?ねえパパ、赤ちゃんの名前どうしよ?」


「は?パパじゃねーし、そもそもおまえの赤ちゃんじゃねーんだよ!」


「そうだったか。ならやはり私も赤ちゃんを産もう。」


「まだそのネタを引っ張るのか?産むっていうより、おまえの場合は身体から出芽して分離するんだろ?人が寄りつかない絶壁の谷底に湧き出る青い泉のなかで1万年ほど漂ってから...」


「伝説の魔人みたいに言うな!」


「だって女神って曖昧すぎてどうなっているのかわからんから。」


「女神はだな、分析の対象ではなくて信仰の対象だ。とりあえず拝め!」


「シ・レ・ン!シ・レ・ン!酸っぱい匂いのメ・ガ・ミ!」


「それは拝むと言うよりコールじゃないか、それもディスり気味の。」


「いつも爽やか、サワー・ガッデス!」


「それ、褒めてるよな?おまえの言葉にはいつも裏がある。」


「はてさて、裏がない表だけの言葉なんてあるんですか、女神さん?」


「いや、裏表だけではなく幾重にも屈折して手に負えない。」


「そうですね。だから余計な詮索をしても無駄なんですよ。サワー、良いじゃないですか。ふっふっふ、だけどこれをsour にするとカタカナのサワーでは伝わらないいろいろがありますからね。Hey You! Sour Goddess! 」


「おう、クールな酸味の爽やか女神だ。」


「くっくっく...」


「何だ?含み笑いなどして。」


「大きめの英語の辞書で Sour の項を隅々まで読みたまえ。それではまた。」






「ねえ、メアリ・アン、事業も軌道に乗ったことだし、新しい命も生まれるので、ハプスブルク家に預けていた子どもたちもアメリカに引き取ったらどうかしら?」


「ええ、ずっと考えていたの。古い宮廷社会ではなくて新しい社会で育って欲しいわ。」



挿絵(By みてみん)


「ウィーンに預けた子どもたちは何人?」


「2人。4人生まれたけど2人は病気で死んだので、預けたのは長女のマリー・テレーズと次男のルイ・シャルルだけよ。マリー・テレーズは14歳、ルイ・シャルルは7歳になってるわ。」


「私が連れてきてあげましょう。もう気づいていると思うけど、私、時空を自由に超えられるのです。今すぐウィーンへ転移できます。」


「え?今すぐ子どもたちに会えるの?」


「いえ、転移できるのは私だけなので、お子様たちは船と馬車で旅してもらわなければなりませんから、数ヶ月かかります。ですが、私がついているので安全にここへ連れて参りましょう。」


「ありがとう、ジャディー。お世話になるわ。」


 ウィーン郊外のシェーンブルンに翡翠は来た。ここにメアリ・アンの子どもたちとその叔母、ルイスの妹のエリザベートが匿われている。


「こんにちは。アメリカに亡命したマリー・アントワネット様からの依頼で参りました。パリ脱出からアメリカ亡命まで手引きしたジャディーです。」


「おお、その節は本当にお世話になりました。どうぞ、こちらへ。エリザベート様がお喜びになるでしょう。」


挿絵(By みてみん)


「まあ、ジャディー!突然のサプライズで驚きました。お元気?」


「はい、国王ご夫妻共々元気一杯です。きょうはその国王ご夫妻からの伝言を承って参りました。アメリカ合衆国での事業が軌道に乗ったので、皆様を迎え入れたいとのことです。」


「まあ、何て素晴らしい!」


「パパとママに会えるのね!」


「ぼく、船に乗りたい!」


「アメリカは遠い国ですから、子連れですし旅程の計画が重要です。できるだけ水路を行きましょう。私たちはまずドナウ川を西に上ります。終点は水源付近の町ウルム、そこから馬車でカールスルーエを目指します。この町はライン川の岸辺なので、そこからまた船に乗ってロッテルダムへ行きます。ここまでの旅程で危険な場所はありません。ロッテルダムから船でロンドンに行き、ロンドンから大西洋を渡って新大陸を目指します。私が同行しますので、もし刺客が現れてもすぐに無力化いたしますのでご安心を。」


「ジャディーって強いの?」


 ルイ・シャルルは母親似の大きな青い目を見開いて翡翠を見つめた。


「はい、剣術の免許皆伝です。5人相手でも負けません(分身を出せばもっと多くても)。」



 その夜は皇帝主催の盛大な送別会が催された。皇帝レオポルド2世は翡翠を呼んで、何か褒美を取らせたいと申し出た。翡翠は一瞬考えて、ルイ・シャルルを連れてきた。


「皇帝陛下、ルイ・シャルル殿下はこれよりアメリカ合衆国へ参ります。そこはヨーロッパとは全く違う制度の社会です。ですが、国民の多くはヨーロッパからの移住者なので、心の奥底でヨーロッパへの淡い望郷感を抱いています。ルイ・シャルル殿下に爵位を与えてはいただけないでしょうか。アメリカ合衆国で爵位は何の実質的な効果を持ちませんが、それでも一定の尊敬を集める肩書きにはなります。貴族を鼻にかければもちろん嫌われます。アメリカは民主国家です。ですが、貴族なのに気さくな良い人という立ち位置なら一目置かれるはずです。」


「なるほど。かわいい私の甥だ。フランス王子としての地位も失った。ならば我がオーストリア帝国が爵位を与えよう。剣を持て!」


 皇帝は剣を抜き、ルイ・シャルルの両肩をそっと叩いた。


「元フランス国王ルイ・ブルボンの長子にして我が甥ルイ・シャルルよ。我レオポルド2世が汝を伯爵に叙する。謹んで受けるが良い。」





ルイスの息子が伯爵になりました。まあアメリカでは何の効力もないのですが、ないよりマシというものです。元フランス王の長男だから公爵でも良いのだけど、それだとフランスに対しての大きな挑発になりますからね。

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