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翡翠さん、この書き出しでタイトルを書くために最後に久しぶりに登場してくれた

防衛の準備は大事です。フロンティアで丸腰、襲えと言ってるようなものです。

「フレンチ・スイーツ、私も食べたいぞ。」


「酸っぱいものしか食わないと思っていたぞ、女神よ。」


「人を妊婦みたいに言うな。」


「おまえが母になる...いや、全く想像できないわ。」


「私だってやることやれば子どもぐらい産めると思うぞ。」


「数万年間ずっと処女だった奴がそんなことを言ってもねえ。そもそも作り方を知らないだろうが。」


「え?それはだな...こっちが知らなくても殿方のリードでどうにでもなる。」


「パンツ脱げ!」


「は?何をたわけたことを!」


「パンツ脱ぐのが子作りの第一歩だ。はよ脱げ!」


「子どもはいらん。パンツを脱ぐくらいなら子どもはいらん!」


「ほらな?だから全く想像が付かんと言ったんだよ。」


「パンツを脱がないで子どもを作れる裏技はないのか?」


「ないことはない。真ん中に穴の空いたパンツを最初から履いていれば、あえて脱がなくても子作りはできる。」


「そうか...」


「おい、何を迷っている?そこは突っ込むポイントだろうが!」


「いや、ちょっと考えてみても良いかなと思って。」


「あのな、そんなことより、子どもは母親だけで作れるものではないんだよ。わかってたか?」


「いや、知らんかった。」


「切れ気味に説明しそうになったが、考えてみれば人間じゃないからな。見かけから勝手に有性生殖だと決めつけていたが、単為生殖や無性生殖の可能性もある.前者は蟻や蜂の女王、後者はゾウリムシやヒドラ。ふふ、ふっふっふ。」


「どうした?嬉しそうだな。」


「いや、試練ちゃんの誕生を想像していたら、ふふ、ふっふっふ、自然と笑いがこみ上げるのよ、これが。」


「そうか。前にヴィーナスの誕生の活人画で鮮烈なヌードを披露したことを思い出して至福に酔いしれているのか。うむ、わかるぞ。」


「いや、違うんだけど、まあイメージに酔いしれているので、そういうことにしておこう。」


「希望があればいつでも見せるよ。読者の皆さんも遠慮せずにリクエストしてね。」


「おい、勝手に読者にリクエストをねだるな。」







 農場も羊事業も上手く行って、事業は軌道に乗ってきた。ルイスの工場ではウィスキーの熟成が始まった。アップルワインはもう完成して瓶詰めされている。羊肉レストランで提供される。カルヴァドスが完成するまであと1ヶ月。ジャガイモを原料にしたシュナップスはもう市場に出ている。ルイスはフランスのワイン業者に手紙を書いて、使用済みのワイン樽やブランディー樽を買い付ける約束をした。ワイン樽でウィスキーを熟成させると独特の香りが付くのではないかと考えたからである。初期投資がだんだん収益となって戻ってくる手応えを感じて、ルイスは満足していた。白馬で工場と自宅を往復するルイスをルイヴィルの人々は“白馬の王子”と呼んでいた。中年で少し腹が出てきた自分がそんなあだ名で呼ばれて、ルイスは少し面はゆい思いがしていた。そんなある日、事件は起こった。いつものように白馬で帰宅しようとしていたルイスを呼び止めた3人組がいたのである。


「護衛も連れずに単騎でお通りとは、大胆すぎませんか、Votre Majesté?」


 ルイスは踵を返して白馬に拍車をかけて離脱しようとしたが、族の一団は暗器で馬を仕留め、ルイスは地面に投げ出された。


「ふふふ、逃げ出そうなんて思わないでくださいね、王様、いや元王様。何も命を奪おうというわけじゃないんですよ。私たちに誘拐されてくれれば良い。身代金を要求する材料になっていただきます。われわれはアサシンだったのですが、フランス政府が手を引いてしまったので、干上がってしまいました。カネがないんです。」


「カネが必要なら雇ってやる。まだまだ人手不足なんだ。ルイヴィルで犯罪を犯すと簡単に縛り首になる。ギロチンと違って死ぬまで苦しむことになる。」


「はは、ご親切にどうも。だけど、私たちはもう社会の暗闇に沈んだ存在なので、いまさらお天道様の下で働けるなんて思っちゃいないんですよ。」


「私が定刻に戻らないと家の者たちが捜索を始めるだろう。工場の近所で白馬の死体が発見されたら、保安官に報告が届いて大捜索が始まる。無事では済まないぞ。」


「そのときはあんたを盾にして逃げるから大丈夫だ。」


「アメリカの保安官をなめないほうが良いな。たとえ人質がいてもやつらは躊躇なく撃つぞ。私も死ぬかも知れないがおまえたちは確実に死ぬ。それで良いのか?」


「....うるさい...黙れ!」


「今なら、暴漢に襲われた私を助けた勇敢な3人組ということにしてやろう。そしてうちのセイフティ・ガードに雇い入れてやる。同じ革命期のフランスを生き抜いたフランス人だ、無下にはしない。」


「本当か?」


「本当だとも。王の言葉に二言はない。」


「わかりました、Votre Majesté、無礼をお許しくださっただけではなく、その寛大なご配慮、心痛みます。われら3人、命を賭して仕えましょう。」




 かなり定刻を過ぎて、馬にも乗らずに見知らぬ3人に付き添われて帰宅したルイスを見てメアリ・アンは顔色を変えた。


「あなた、服が泥だらけ、何があったの?」


「暴漢に襲われて馬がやられた。偶然通りかかったこの人たちに助けてもらった。Ils sommes français. 勇敢で忠義に厚い。彼らをガードとして雇いたい。」


「まあ、危ないところでしたわね。ではさっそくレンチンさんを呼んでガード部隊に入れていただきましょう。ガードは、うちではみなメイドと同じで屋敷に住んでいただきます。よろしいわね?」


「ウィ、マダム!」



 白馬で単独騎行はあまりにも危険なので、ルイスも馬車を購入し、出かけるときはガードを随行させることにした。メアリ・アンも同じく馬車に護衛を同乗させることになった。新しく3人が加わったので、レンチン部隊は9名になった。ルイスとメアリ・アンに2人ずつ付けても5名残る。屋敷の警備は万全だ。だが、工場と洋菓子店と羊肉レストラン、そして農場と果樹園の警備となるとまだまだ人手不足だ。ルイスは、殺された馬の件もあるので保安官に相談しに行った。


「やあ、ルイス、何か相談かい?」


「工場の近くで暴漢に襲われて馬が殺された。幸い通りかかった3人のフランス人に助けてもらったがね。」


「君は銃を携帯していなかったのか?」


「していないな。撃ったことがないし。」


「それではアメリカで生きてはいけないぞ。悪人だけじゃなくて猛獣も出るからな。」


「ならばガードだけではなく従業員たちにも銃を持たせて襲撃に備えさせたほうが良いのか?」


「そうだ。アメリカ人たる者、銃が扱えて初めて一人前だ。工場技師もメイドも店舗やレストランのスタッフも、銃は必需品だ。経営者の責任としてみんなに銃を配付して練習させるべきだろう。盗賊団の襲撃やインディアンの襲撃もあるかも知れない。オハイオ川の向こう岸に射撃場がある。」


「わかった。武器屋に相談に行くよ。」


「ガンスミスのジョニーはここから北に行ったところだ。看板が出ているからすぐわかる。」


「ありがとう、シェリフ!」


「どういたしまして、Your Majesty!」


「は?」


「町のみんなが言ってるんだ。ルイスはフランスの王様に似てるってな。この町はルイ16世にちなんでLouisville と名付けられたので、みんな王様が大好きなのさ。だからルイスのことを心の中で王様だと思ってありがたがっている。この俺もだがね。」


「はっはっは、そりゃあ光栄だ。良きに計らえ!はっはっはっは。」




「ハーイ、ジョニー!銃をたくさん買いたいんだ。」


「おう、旦那。景気の良い話だな。戦争でもおっぱじめるのか?」


「いや、工場や農園や店舗に自衛のための銃を配備したい。ここはフロンティアだからね。」


「それはとても大事なことだ。丸腰の工場や農場なんてここでは考えられない。今までそれがバレずに済んで良かったな。盗賊団の餌食になるところだった。」


「スイーツの店もやっているんだが、そこにライフルを並べるのは気まずい。何か良い案はないか?」


「あるさ。女性の護身用ピストルだ。」


「ではライフルを20丁とピストルを10丁だ。弾丸も含めて屋敷に届けてくれ。」


「へい、お買い上げありがとうよ。王様!」


「それはあだ名なのか?」


「ああ、町のみんなはそう呼んでるからな。」


「まあ、悪い気はしないな。くるしゅうないぞ。」




 メアリ・アンは護衛2人を付けて馬車でスイーツ店にやってきたら、そこで意外な人物がニコニコして待っていた。翡翠である。


挿絵(By みてみん)



「あら、ジャディー!お久しぶり!」


「しばらくぶりですね、メアリ・アン。」


「ささ、お店に入って。うちの自慢のタルトを食べて行きなさい。」


「はい、ありがとう。立派なお店ができたのですね。」


「小さなお店だけど、お客さんが毎日たくさん来てくれて大繁盛よ。」


「とても元気そうで安心しました。ルイスも元気?」


「とても元気で....その....できちゃったみたいなの。」


「え?できたって...その...赤ちゃんがですか?」


「そう。まだ誰にも喋ってないけど、ジャディーの顔を見たら言いたくなっちゃった。」


「おめでとう、メアリ・アン!本当におめでとう!」


翡翠さんが来たので、ついおめでたいことが起こってしまいました。翡翠サプライズです。

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