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翡翠さんはいったん帰還して、ルイスとメアリ・アンがそれぞれの事業でがんばる

はい、安全が確保されたので、しばらく翡翠さんは用済みなので、帰還して女神とお茶を飲んだりサウナに行ったりすることでしょう。サウナの挿絵は載せませんがね。どうしても見たい人は、「巫女とサキュバスと異世界と」の中を探してください。

「元国王夫妻は上手くいってるみたいじゃないか、青水よ。」


「すべてはカネを持ち出してスイスの銀行に預けることができたからだ。世界中の指導者や偉い人はすべてそうやって資産を守って再スタートに備えている。」


「スイスの銀行は大儲けだな。」


「昔はな。今はマネーロンダリングや犯罪マネー、さらには脱税目的の資産隠しについては国際的なルールを守らなければならなくなった。ルイスの資産も、現代ならフランス政府の開示要求に従わなければならない。つまり税金をガッポリ持って行かれるというわけだ。」


「ではスイスに代わって私が銀行を作ってやろう。異世界銀行。これなら国際ルールに縛られないからやりたい放題だ。」


「誰が預けに来るんだ?」


「う、たしかに。」


「しかも預かった金を運用もできない。おまえ、まさか銀行が貯金するだけの場所だと思っていたのか?」


「うん。預かったお金で好き勝手できると思ってた。ギャンブルとか。」


「そういう奴もいたけどな、それは犯罪なのでムショ送りだ。」


「何だ、つまらんな、銀行って。」


「おまえの求める面白さがお子様過ぎてびっくりだわ。何万年生きてるんだ?」


「よ、余計なお世話だ。永遠の18歳だ、バーカ!」


「へいへい。ところで試練ちゃん、さっきからパンツ丸見えだよ。」


「えっ?」


「はっはっは、ひっかってやんの、バーカ、バーカ!」


「おまえも同じ穴の狢だ、このお子様中年が!」






「では、レンチンさんとスイス人ガードも到着して安全面も確保できたので、私はいったん帰還します。多角経営の事業、頑張ってくださいね。」


「ありがとう、ジャディー。今度会えるときまで、しっかり事業を軌道に乗せておくよ。」




「メアリ・アン、工場に機材も揃ったので、しばらくあっちに籠もって仕事の準備をするよ。明日はスタッフの面接なので、できれば同席してくれると助かる。ぼくはほら、口下手だし、英語がいまいちだし。」


「わかったわ。私はスイーツのお店でスタッフに調理指導をします。店の名前は”Tartes et Brioche”にしようと思ったけれど、きっと“タルト・ゼ・ブリオッシュ”って読めないから、もっとアメリカ人に寄せてシンプルに”Mary Anne’s French Sweets”にしました。フランス語の異質性よりフレンチという言葉の響きがきっと女性客に受け入れられるわ。」


「羊事業の出向スタッフとはもう会ったのかい?」


「はい、昨日到着したので、宿舎に案内してから牧場と工場用地を見てもらいました。私たちのお酒を提供する店でラムチョップなども出せるようにします。」


「リンゴの果樹園は?」


「けっこうな広さで十分な収穫が望めます。あなたのカルヴァドスの材料にもできるし、できればアップルワインも作ってくださる?」


「簡単にできそうだ。」


「マイン川沿いのフランケン地方で作られていて、そこではビール代わりに食事のお供として飲まれているそうよ。以前、その地方出身の女官が言っていたわ。」


「うむ、ライトな飲み物は食事とともに消費されるから売れ行きも望めるな。よし、作ろう。」


「頼りにしていますよ。」


「こちらこそだよ、メアリ・アン。」


 2人は少し盛り上がってしまって久しぶりに長い口づけを交わした。



「ルイスさん....あっ、失礼!」


「何だいレンチン、別に問題ないよ、夫婦なんだから。」


「あ。その、外に馬車の準備ができました。奥様用の豪華馬車。」


「ありがとう、レンチン。馬車はみんなの注目を集めるため、つまり広告塔の役目があるのよ。じゃあ、あなた、行ってくるわね。」



 ルイスは白馬に跨がって工場へやってきた。工場の近くにはスタッフ用の住居が建っている。醸造業はしばしば過程の様子を確認しなければならないので、スタッフたちは工場に隣接した住居に住んでいるのだ。


「注文していたトウモロコシは届いたかい?」


「はい、樽とトウモロコシはさっき届きました。」


「そうか、いよいよウィスキーの仕込みに入るぞ。」


「イエッサー!」


「それが終わったらリンゴの処理だ。カルヴァドスとアップルワインを作る。処理をしながら作り方の説明をするので、ノートとペンを用意するように。」


「イエッサー!」



 メアリ・アンは”Mary Anne’s French Sweets”の前で馬車から降りた。


挿絵(By みてみん)


「ご苦労様。夕方6時に迎えに来て頂戴。」


「イエス、マム!」


 店内では5人の女性スタッフが開店の準備をしていた。


「ボンジュール!このお店ではお客様にもボンジュールとご挨拶するのよ。」


「ウィ、マダム!」


「よろしい。ではこれからブリオッシュとタルト・オ・ポムを焼きます。材料は揃っているわね?」


「ウィ、マダム!」


「皆さんの中でフランスからの移民はいますか?」


「はい、私の母がフランス人でした。ルイジアナに送られて、かなり苦労したそうですが、父と知り合ってメンフィスへ引っ越し、そこで私が生まれて、それから新聞の人材募集の広告を見てルイヴィルへ移りました。父はコックなんです。」


「そうだったのね。ルイジアナは過酷な場所だと聞いています。さぞかしご苦労なさったのでしょう。お母様は家でブリオッシュやタルトを焼いたことは?」


「はい、何度もあります。父がコックだったので食べ物は大好きなんです。」


「それは良いわ。あなた、お名前は?」


「ジョリー・スミスです。父はドイツ系で本来はシュミットだったのですが、アメリカで生きて行くためにスミスに変えました。ファーストネームは...あの...母が。」


「ふふ、美人という意味だからって恥ずかしがることはないわ。ここじゃだれも気にしないもの。ジョリー、あなたにこの店のリーダーを任せます。まずスタッフ全員に綺麗な発音のボンジュールと夕方用のボンソワールを教えてください。」


「ウィ、マダム!」


はい、順調に事業が滑り出しました。農園関係の人材がまだまだ足りていません。インディアンの襲撃はないのでしょうか?暗殺組織はもう諦めたのでしょうか?

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