翡翠さん、レンチンと協力してアサシンを撃退した
タイトルのレンチンが謎ですが、すぐ種明かしされます。
「青水~!なんだか翡翠がスーパーエージェントみたいになってきてないか?」
「何か問題でも?」
「いや、ラノベだからその、魔法とかチャンバラとか...」
「今回は歴史介入だから、そういう超人的な技は枠組みを壊すだろ。」
「ラノベってチートでスッキリするものじゃないのか?」
「死ねって言ったら必ず相手が死ぬスキルとか?いや、逆にスッキリしないだろ、そういうの。いろいろモヤッとするわ。倫理観はどうなってるのとか。」
「そういうことなら良いんだけどな。PVが激減してるから。」
「更新が少ないとそうなるよ。ゲームのせいだ。」
「ゲームか.....」
「おい、その沈黙が怖いんだが。」
「女神、行きまーす!」
「おい、それはもうコスプレの範疇を超えた悪ふざけだぞ!」
「クエン酸ビ~ム!梅ファンネル!」
「ふ、遅い!墜ちろ!墜ちろ!墜ちろ!」
「あひゃ!」
「スパロボ歴20年以上の俺にかなうと思うなよ!」
「あ~ん、瞬殺するなよ。もっと台詞を言いたかったのに。」
「場違いすぎるものを持ち込んだからだ。読者の皆さんは怒っているぞ。」
「え~、そうかなあ?ヌードもやればMSパイロットもやる試練さん大好きになってるぞ、きっと。」
「ああ、撃墜されてしょんぼりした顔はきっと大ウケだ。しょんぼりで若返り、というか幼児退行。おまえ、本当に百面相女神だな。」
「何だか知らないけど、ちょうど良い塩梅のところに落ち着かないんだよ。」
ルイヴィルからチャールストンは1000kmぐらい離れているので馬車だと40日ぐらいかかってしまう。翡翠は再び女神頼みの転移で瞬間移動した。
「マノンさん!ルイヴィルへ行ってきました。」
「あらまあ、着々と準備してるのね。」
「順調な滑り出しのためには入念な準備が欠かせませんから。」
「ねえ...」マノンは声を潜めた。「変な客が来るようになったの。」
「え?怪しい客ですか?」
「そうなの。ガールズのダンスにも興味を示さないし、30分30リーヴルのお話し券も買ったことがなくって、ワイン1杯でずっと店内を眺め回してルイスとメアリ・アンを観察しているの。」
「それ、暗殺者かも知れませんね。そばを通るときに小声で l’assassinat とか言って反応を見たらどうでしょう。」
「そうね。店内は屈強なセキュリティーガードを配置しているので何もできないと思うけど、外に出たときが危ないわ。」
「罠にかけて警察に突き出すのも悪くないですね。お店のガードの仲にルイスに似た背格好の男性はいませんか?」
「ひとりいます。似ているのでルイスとも仲良しになりました。うちのセキュリティガードは、あまり体格が良くて強そうなのを並べると店の雰囲気が悪くなるので、できるだけふつうの体格で、でも戦えば強いという基準で選んでるんです。」
「ではその人と私で元国王夫婦に変装して狙われやすそうなところをうろついて、襲撃されたら返り討ちで捕らえて警察に引き渡します。」
「大丈夫なの?」
「私、こう見えても荒事も得意なんですよ。ただ、変装してもあまりメアリ・アンに似てないと思うのですが、暗殺者が狙う本命はルイス、私の顔なんてあまり注意しないでしょう。暗殺者は何人ですか?」
「店に来ているのは3人よ。他に司令塔がいるかも知れないけど。」
「じゃあ、そのルイスに似ているガードを呼んできてください。」
「やあ、ジェイディ。ごめん、俺はアメリカ人だからフランス語の名前は呼びづらい。」
「ノー・プロブレムよ。It makes no difference. Call me Jady. And your name?」
「みんな俺のことをレンチンって呼んでる。French King に似てるからレンチン。ひどくないか?」
「響きはともかく由来は素晴らしいので誇って良いですよ、レンチン。あなたにお願いしたいことがあるの。」
「なんだい、ジェイディ。」
「この短い棍棒を使って、襲ってくる暗殺者を無力化して頂戴。刃物だと殺してしまうかもしれないので安全な木の棒。これ、日本製ですりこぎっていうのよ。短くて扱いやすいでしょ。ちょっと練習してみましょう。ちょっと待ってね。動きやすい格好になるから。”マーズ・クリスタルパワー!メークアップ!” はい、できた。じゃあ始めましょう。背後から首の付け根に当てたら1本よ。」
「はい、1本!レンチンは間合いを意識して。敵は刃物を持ってるから、まずは武器を叩き落とすべきね。今度は相手の武器を叩き落としたら1本よ。行くわよ!」
「はい1本!でもレンチンはなかなか筋が良いわ。あと5セットやれば完全に仕上がるわね。期待してるわよ。」
閉店後に翡翠は通常式神を4体放った。暗殺者たちの配置と数を知るためである。メアリ・アンに変装してしばらく待つと式神たちは戻ってきた。式神の報告によれが暗殺者は4名。両手にダガーを装着しているらしい。場所は店を出て右の路地に入ったところ。ふつうは通らない場所だが、おそらく引きずり込んで殺害するつもりだろう。だが敵の計画を事前に知ってしまえば、その攻撃は急襲ではなく罠への転落である。
「止まれ!」
暗殺者2人が道を阻んだ。おそらくこの時点で彼らは、暗殺対象者がパニックになって震え出すと予想していただろう。だが、攻撃計画を知っていた2人は入念に準備してその実行を待っていた。
「ふん、素人がそんな棒きれを振り回しても無駄だ。」
暗殺者は素早く翡翠に襲いかかった。女を先に殺して、本命はゆっくり始末しようという魂胆だったのだろう。だが奴らが襲いかかったのは、桃影流免許皆伝の太刀の使い手だった。あっという間に武器を叩き落とされ、こめかみに一撃を食らって倒れた。控えていた2人もレンチンに無力化されて地べたに転がった。翡翠は4人を縛り上げ、月煌を放ってマノンに顛末を知らせた。マノンはセキュリティーガードを警察に走らせ、やがて暗殺者たちは留置場に行くことになった。
「あ、おまえ、レンチンじゃねえか!」
駆けつけた警察官のひとりがレンチンに声をかけた。
「おまえがパリジアン・エンジェルズで用心棒やってるのは知っていたけど、まさか暗殺者を捕まえるなんてな。こいつらどうやらフランス人みたいなんだが、何かフランス語で言ってやれよ、レンチンなんだから。」
「メルシー・ボークーしか言えねえわ。」
暗殺者は厳しい取り締まりを受けるのでしょうが、たぶんフランス政府が手を回して...どう転ぶのかまるで見当が付きません。