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翡翠さん、先回りして予定を着々と進め、安全確保も抜かりない

元国王夫妻が英語とアメリカ人に慣れるため奮闘している間に、翡翠さんはあれこれ手を回して準備しています。

「青水よ、私も漫才やりたい。M1に出たい。」


「いつも冒頭にスベる芸をやってるようなものじゃないか。」


「相方が悪い。イケメンの相方を用意しろ。」


「あのなー、中途半端なアラサーフォーとイケメンのコンビなんて最悪の組み合わせだからな。裏を勘ぐってお客さんが笑えんわ。」


「そういやメアリ・アンって1789年....ちょっと待てい!おまえ、曖昧にしてたけど、元国王一家がパリを離れたのは、女たちのヴェルサイユ行進の数ヶ月後だったよな?カジノ作るとか言って奔走してたから時間が経っているはず。もう年が変わって1790年になってないか?おまえ、戻ってエピソードを検索して確認したほうが良いぞ。」


「はい、一カ所ありました。冒頭漫才のところで、1789年に太客がどうのこうのって。1790年に修正してきた。」


「チャールストンで接客と漫才やりながら英語修行してるうちに1791年になるからな、間違えるなよ。」


「うん、覚えておく。で、おまえさっき何て言おうとしてたの?メアリ・アンが...で途絶えたけど。」


「漫才やってた1790年に何歳かな、と。」


「ルイスが36歳、メアリ・アンが35歳だ。それぞれ1754年と1755年生まれだからな。」


「王族から芸人、芸人から実業家と、人生のジェットコースターだ。」





 メアリ・アンとルイスが接客をしながら英語の勉強をしている間に、翡翠は女神の転移でパリに戻っていた。彼らが実業家としての人生をスタートする前に、そのサポートの準備をしなければならない。翡翠はネッケルとジェルメーヌの親子を訪ねた。


「こんにちは、お久しぶりです。」


「え?アメリカに行ったのでは?」


「はい。元国王夫妻を送り届けてからすぐ戻ってきました。」


「すぐ戻ったって言っても、この日数では無理だと思うのだが。」


「無理な手段を使ったということで、そこはスルーしてください。それより、きょう伺ったのは、お願いがあるからなのです。元国王夫妻は無事にアメリカ合衆国に渡りました。そこで実業家としての人生を歩み出す予定です。」


「順調そうで何より。お二人には新天地で頑張っていただきたいですわ。」


「はい。ですが完全に安心というわけではないと思われます。英国経由で合衆国には定期便が出ていて、毎日たくさんの人々が行き来しています。暗殺者が紛れ込まれないという保障はないのです。」


「むう、たしかに。革命政府はどんどん過激になっています。逃げた国王夫妻を暗殺したいという動機はあります。」


「ですわね。元国王は王統派にとっての希望の星。これを旗印にして有志を募り反革命の狼煙を上げたい人はたくさんいるでしょう。潜在的な脅威は暗殺者を送り込んでも断ち切りたいと思うでしょうね。」


「そこで、早めに手を打って元国王夫妻の警護体制を整えるべきかと。傭兵といえば何といってもスイス。お二人はジュネーヴ出身ですから伝手があるのではと思い参上した次第です。」


「条件はどのような人物ですかな?」


「家族でアメリカ移住を考えている元傭兵。英語がそれなりにできること。できればフランス語圏スイス出身。」


「ジュネーヴで募集をかければ見つかりそうです。現在のヨーロッパで兵隊をやっているよりアメリカのほうが安全ですからね。」


「できればすでにチームとして活動実績がある人たちを5~6人。見つかり次第、チャールストンのマノン・レスコーさんの”Parisian Angels”に送り出してください。その後のことは現地で説明します。」


 傭兵の渡航費をネッケル親子に手渡すと、翡翠はまた女神の転移によって、今度はケンタッキーのルイヴィルに向かった。ここにルイスとメアリ・アンが起業する基盤を作っておかなければならない。ルイヴィルはケンタッキー州の州都である。Louisville という名前は、アメリカ独立戦争のときアメリカ側に味方して参戦し、ラファイエット将軍を始めとする義勇軍と多大な軍資金を送ったルイ16世に感謝と敬意を表して1778年に「ルイの町」という意味で命名されたものである。ルイスにとって会社を立ち上げるのにこれ以上の場所はなかった。翡翠は町の大きな不動産屋を回った。



「こんにちは。オハイオ川の河畔に工業用地を探しています。醸造業を始める予定です。」


「こんにちは。オハイオ河岸は便利だから人気が高いよ。船で運べば速いし安全だ。空いているのはこのあたりだけだね。早めに手を付けないと埋まってしまうよ。」


「とりあえず半額をお支払いして権利を確保したいと思います。それから高台に大きめの住宅用地は空いていないでしょうか?社長一家が住む予定なのです。」


「それならここだ。タイラー・パークの近所で見晴らしも良い。」


「残りの支払いは来月に、スイスの銀行から送金させて社長本人が持ってきます。」


「ありがとう、そうしてもらえると助かる。ちなみに醸造ってやはりウィスキーかい?」


「はい、バーボンを生産しようと考えています。ここで作られている競争相手のバーボンがどんなものなのか、社長にお土産に持って帰って飲んでもらおうと思っています。」


「ライバルを知ることから始めるのは良いことだ。この道を行った先を左に曲がると大きな酒屋があるのでそこで買うと良い。」


「まだ先の話になるかも知れませんが、このあたり、農園にできる土地は空いていますか?」


「アメリカは広いからね、土地はいくらでもあるぞ。ただ農地に適した土地はほとんど残っていないな。」


「ありがとうございました。またお目にかかるのを楽しみにしています。」



これで工場と住居の土地は確保できた。会社をスタートするころにはボディガードのスイス傭兵も到着するだろう。せっかくルイヴィルまで来たので、翡翠は酒場で情報収集をすることにした。



「やあ、見ない顔だね。何を飲む?」


「ケンタッキーに来たらバーボン一択かな。」


「あいよ。酔ったら、うちは宿屋もやってるので寝て行きな。」


「ちょっと聞きたいのだけど、もしこの町で商売することになったら、挨拶に行ったほうが良い人とかいる?」


「人というより団体だな。商工会議所に話を通さないと商売はできないよ。」


「なるほど。で、ここだけの話、商工会議所を牛耳ってるボスとかいる?」


「そんなことは俺の口からは言えねえな。商工会議所に頻繁に顔を出していれば自ずとわかるだろ。」


「そうだね。やはり社長本人が来ないことにはどうにもならないか。じゃあ、もう行くね。」


「何だよ、バーボン、ほとんど口付けてないじゃないか。」


「ワインに慣れた口にはちょっと刺激が強すぎたんだ。女にバーボンは敷居が高かったってことかな。」


「ははは、姉ちゃんは素直で良いや。」



スパロボを始めたら酒量が一気に減りました。ゲームは健康に良い?

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