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翡翠さん、マノンの様子を見に行く

マノンはすっかり勝ち組マダムになってます。

「青水よ、おまえにも爽やか煩悩消滅薬を飲ませたやりたいぞ。」


「は?俺はいつも爽やかコカコーラだぜ。」


「そうか?そこはかとなく非モテの欲求不満感を感じるのはなぜだろうな?」


「それは自己投影とやつだな。おまえ自身の欲求不満を俺に投影しているだけだ。アラサーフォーよ。」


「アラサーフォーだと!ふざけた新概念を作り出しおって。」


「サーもフォーも全部お任せの女神様だ。試練に耐えて小ジワが増えてもリンクルショットでドーン!」


「試練は私が与えておまえらが耐えるんだよ。」


「うむ、たしかにあの緑のおばさんは厳しい試練だった。」


「おばさん言うな。あれは完成された高級キャバ嬢だ。」


「女神様がキャバ嬢って設定がそもそもおかしいんだよ。安心して酒が飲めないだろ。すぐ怒って神罰ドカーンになりそうだし。」


「そんなことはないぞ。ほれ、安心して甘えるが良い。」



挿絵(By みてみん)



「これは....飲んでる間は大丈夫でもお会計のときに地獄になるやつだ。」


「そういえば翡翠がプロデュースしたチャールズタウンの店はどうなった?」


「マノン・レスコーの高級クラブか。あのあと町の名前がチャールストンになってますます栄えていたはずだが。」


「ちょっと翡翠に様子を見てこさせよう。フランス革命前夜あたりが良いかな。」






「ここがマノンのクラブですね。いかにも高そうなお店です。」


挿絵(By みてみん)


「こんばんは。マノン・レスコーさんいらっしゃいますか?」


「Jadie? C’est toi? Tu n'as pas changé du tout !」


挿絵(By みてみん)


「はい、違う時空にいたので齢を重ねることもなく。」


「ズルーイ!私なんかこんなおばあちゃんになったのに。」


「変わらないことは良いことばかりじゃありませんよ。」


「そうね。変わらなければ富も増えません。」


「お店は順調そうですね。」


「チャールストンはとても景気が良くて、しかも深刻な女不足。ほんと、ジャディーのおかげで良い町に店を出せました。」


「楽しかったですね、フランスからカリブ海を通って...」


「ええ、あの町で即興で営業したのは良い思い出です。」


「30分30リーブル!」


「ふふふ、すぐに長蛇の列ができて。」


「セットカードもあっという間に品切れ。」


「そのおかげでチャールストンに来てからもすぐ顧客が付いて助かりました。」


「取り合いになって大変ではありませんでしたか?」


「決闘騒ぎは良くありましたね。血を見るのはイヤなので、できるだけ穏便に済ますように駆けずり回りましたけど。」


「両方に満足してもらうということですか?」


「はい、そこは門外不出の天使の技ですね。恋するために生まれた天使ですから。」


「女の子はどうやって集めたんですか?」


「私のこだわりは、必ず生粋のフランス人であること。なかなか苦労しました。今でも苦労しています。」


「ではフランス領ルイジアナから?」


「いえ、あそこはダメです。湿地で病気が蔓延していて。ジャディーのおかげであの地獄に叩き込まれずに済みました。」


「ではフィラデルフィアやニューヨークなど大都市からですか?」


「全国紙に定期的に広告を出して募集しています。"Filles recherchées!" あえてフランス語の見出し語で注目を集めます。」


「なるほど、マノンは賢いですね。」


「フランスを前面に出すことで差異化を図っています。ドイツ系の業者がラインラントから組織的に女の子を集めて“ケルン・ガールズ”として売り出しているので、こちらは高級ブランドとして対抗しています。」


「シャンパンやコニャックなどのお酒は?」


「もちろん正規のルートから安定して供給を受けています。これがないとフランスのエタブリッスマンが成立しませんから。ところでジャディー、お腹が空いていませんか?良かったらお食事を一緒にしたいのですが。」


「ええ、喜んで。この土地の食べ物は初めてなので楽しみです。」





「これは何ですか?」


挿絵(By みてみん)


「羊の肉です。低脂肪で高カロリー、とても健康に良いので大人気です。」


「このお店もマノンの?」


「はい、レストランだけではなくて、羊の牧場も大々的に経営しています。」


「なぜ羊?」


「紳士淑女の衛生と健康のためです。うちは娼館ではないので、女の子とお客さんの関係は個人の問題です。30分30リーブル、開店当時から変わらないこのシステムでお客さんが女の子を口説き落とすことができれば大人の関係へ移行です。その場所を提供するのは法律的に微妙なので、知り合いの宿屋に設えてもらいました。で、そうした関係で一番の問題は性病です。ジャディー相手にそんな生々しい話はしたくないのですが、この問題を無視しては紳士の社交を語れません。うちの店は、羊の腸を使った衛生器具を女の子に持たせています。表立った宣伝はできませんが、女の子たちは"No pain after pleasure, secured by our trusted safeguards."といって紳士たちに安心を提供しているのです。羊の腸を使った衛生器具はヨーロッパからの輸入品だととても高価です。私はそれを自社製品として開発しました。それには大量の羊が必要になるので、羊牧場と羊肉レストランを作ったのです。」


「すごい経営手腕ですね、マノン。」


「羊は余すところなく利用できる優れた家畜です。保温性の高い毛織物が作れますので、軍の支給品として使ってもらっています。大統領も大の羊好きだと聞きました。」


「ここだけではなく全米で展開しているの?」


「はい、羊肉はアメリカ人の健康増進にも役立つと信じています。腸で性病予防、羊毛で暖かなセーター、肉でジンギスカン。Sheep help America!」


「マノンもアメリカ暮らしが長くなってすっかりアメリカ人ですね。」


「Jadie, Puis-je te revoir encore ?」


「もちろん、また来ますよ。フランスがキナ臭くなっているので、お願いすることがあるかも知れません。」


「Je te remercie de ta visite.」





「マノンも元気そうで何よりだったな、青水。」


「ああ、ビジュアルが金持ちマダムだった。」


「これからどこに介入するんだ?」


「同時代のパリ。」


「まさか革命か?」


「そうだ。いろいろあるから注意深く進むぞ。」



これから革命のフランスに突入するんですね。オスカル!薔薇よ薔薇よ薔薇よ...とうい耽美なOPは、実はヨーロッパ版では採用されていなくて、独自のお子様ヴァージョンが使われているようです。まあ、時代ということなのでしょうね。

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