翡翠さん....ではなくてオフィーリアが川に落ちた
オフィーリアが川に落ちたのでミレーもホッとしていますね。
「青水よ、オフィーリアをキャバ嬢に例えたあげくに、ハムレットを超絶オゲレツ野郎にしてくれたな。ツチノコがピンピンって何だ!」
「いや、そのくらいやらないと狂っていると思ってもらえないかなと思って。」
「いや、あれは狂っているというより現実には許されない赤裸々な本音の吐露だ。リミッターが外れた正気であって狂気ではない。」
「お、女神のくせにかっこいいようなことを言ってる。」
「女神のくせにとは何だ!女神様だけあって、だろうが。」
「へいへい。」
「青水はキャバクラに行ったことがあるのか?」
「えーと、札幌に仕事で行ったとき、ずいぶん昔だけど、ススキノの店に連れて行ってもらったんだが、連れて行ってくれた人も単に粋がってみたかっただけみたいで、良くわかってなかったっぽい。20分ぐらいで出てきた。」
「しゃばいな。」
「え?しょぼいな、ではなく?」
「ふふふ、しゃばいがわからないなんてしゃばすぎだな。」
「その言葉、どこで覚えたんだ?」
「そんなの...生まれつき知ってたに決まってる。」
「へー、女神って生まれるんだ。ママがいるの?」
「ちょ、それ、ちが...」
「どうせヤンキーマンガでも読んだんだろ。」
「だーれがヤンキーだ、ちょっとこっち来いや!」
「うわっ!想像の斜め上で一挙にスケバンに行っちゃったよ!」
「なんだかかんだかマッポの手先。」
「覚えてない台詞を言おうとすんな。」
「ところでさ、その...ツチノコって...ティンティンに似ているのか?」
「はぁあああ!何を言うてくれますの?」
「いや、どっちも見たことがないので。」
「どっちも見たことがないなら似てるも似てないもないだろうが!」
「あ、そうか、てへ!」
「はい、そこでツチノコのコスプレ、どうぞ!」
「できるか、ボケ!」
「オフィーリア!オフィーリア!」
「あ、父上、どうされました?」
「いや、おまえの顔を見たくなってな。」
「私、すっかり夢中になって家に帰るのも忘れていましたわ。」
「研究はそんなに楽しいのか?」
「はい、様々な植物のエキスを調合して、さまざまな処置を施して...」
「ハムレット様に会いたくはならないのか?」
「研究に夢中になってすっかり忘れていました。言われてみれば会いたいような...あ、でも今はまだ良いです。」
「そうか。あまり根を詰める出ないぞ。たまには外の空気も吸ってだな...」
「あ、そうだ、外に行かなければなりませんでした。調合の材料となる植物の採集です。」
「それは良いことだ。日光を浴びないと動物も植物も死んでしまうからな。」
「わかりました。これからは1日に3回は外に出ることにします。では、父上、植物採集に行って参りますので、また後ほど。」
「わしも付き合おう。娘と久々の散歩は格別じゃ。」
「この川辺にはたくさんの花が咲いています。お父様、川に落ちないようにお気をつけ...きゃあっ!」
オフィーリアは足を滑らせて川に転落してしまった。ポローニアスは助けを呼んだが誰も来ない。そしてポローニアスは全く泳げなかった。
「もう...ずぶ濡れですわ。」
川は膝ぐらいまでしかなく、オフィーリアは自力で立ち上がって河岸へ戻った。
「肝を冷やしたぞ、オフィーリア!」
「植物採集で川に落ちることもあるでしょうから、水泳を覚えないと危険ですわね。暴漢に襲われたときのために剣術も学ぼうかしら。そうだ、ハムレット様に教えていただこう。」
「ずいぶんと気丈になったな、我が娘よ。」
「だって、もしハムレット様の妻になれないときは自分の力で生きていかなければなりませんもの。」
「うん...オフィーリアよ、父は今心を決めたぞ。」
「何でしょう?....ヘクション!」
「おまえとハムレット様の結婚を心から応援する。それが王に敵対することになってもだ。」
「まあ、あまり無理をなさらないで。でも嬉しいですわ。ヘッヘッヘークショイ!」
「ともかく帰ろう。このままでは風邪を引く。」
「ちょっとお待ち!」
帰ろうとしたポローニアス親子を黒いローブの老婆が呼び止めた。
「すぐ近くに私の庵がある。そこで服を乾かすと良い。その間は毛布にくるまって、温かいミルクを飲みなさい。」
「あなたは?」
「私かい?ヘバノンの魔女、と呼ぶ者も昔はいたが、ただの薬屋さ。ここで植物を採集して薬を作り、町で行商している。」
「まあ、薬屋さん。憧れますわ。私も新米の薬師ですの。」
「おう、そりゃ奇遇だ。さあ、入った、入った!」
「私の名はオフィーリア、こちらは父のポローニアスです。あなたは?お名前はあるのでしょう?」
「ザーミア、と子どものころは呼ばれていたが、今は誰も呼んではくれないね。」
「ザーミアさん、どうしてここに住んでらっしゃるの?不便ではありませんの?」
「人目に付くわけにはいかなかったんだ。私は今の王クローディアスに頼まれてヘバノンの毒を作ってしまった。息子がいてね、外国の大学で学びたいというものだから金が必要だったのさ。ヘバノンの毒は人も殺せるが、それはあまり知られていない。建物のネズミを一掃できる薬として有名だったんだ。だが、クローディアスはそれを使って先王を殺めてしまった。私は口封じのためい殺されそうになったんだ。だけど、クローディアスも臑に傷持つ身。そう大々的に捜索することもできない。というのも刺客の数を増やしたりすれば逆に脅される可能性もあるだろう?というわけで私の存在はうやむやになってしまったのさ。」
「まあ、何と言うことでしょう!ハムレット様のご様子が奇妙だったのはそういう事情があったのですね。お父様!お父様はご存じだったのですか?」
「いや、わしとお妃様もさっき知ったばかりじゃ。そして、このまま先王殺しを王位に付けておくべきではないと覚悟を決めたばかりだ。」
「お父様、微力ながらこのオフィーリア、ハムレット様のお力になりとうございます。」
「うむ、ことがことだけに慎重に動かなければな。」
なんか真実を知る仲間が増えてきて、RPGならこれからラスボスを倒しに行く流れでしょうか?