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翡翠さん、変なミッションに駆り出されたのでいろいろ巻き込みました

はい、今回はいつもと違うやつです。中休みですね。


「どうした、女神、和服など着て?」


挿絵(By みてみん)


「和の世界でも輝きたい。」


「だったらその青髪を何とかしろ。」


「これは私のアイデンティティだ。」


「和の世界にそんなカタカナ言葉はねえよ。」


「むう、ともかく和の世界に翡翠を介入させたい。」


「和の世界に介入って言ったって、もう義経は助け出したし、かぐや姫と帝は星空デートしたし、もうあんまり残ってない。」


「いるじゃないか、忘れ去られた悲劇の武将が。」


「ん?誰だ?」


「明智光秀だよ。『織田家のアナザー・ジャパン』には登場する余地がなかった。なにしろ本能寺の変が回避されて、信長による天下統一が史実よりずっと早まったから。」


「ああ、それでめでたく解決だ。まさか、これからさらに改変して本能寺の変を起こさせようっていうんじゃないだおるな?」


「さすがにそれはない。『織田家のアナザー・ジャパン』はおかげさまでランキング入りの人気作に育った。それを覆すことはできない。」


「だったらどうするつもりだ?」


「光秀を励ます。」


「はあ?何だ、それ?励ましてどう改変するつもりだ?」


「だってかわいそうなんだもん。せめて翡翠に夜伽を...」


「やめいっ!何をふざけたことを。翡翠は巫女だぞ。」


「ならばこの私が自ら...」


「だからやめろって。そんなもので慰めになるか!そもそもおまえは女神だろ、そんなことは許されない!」


「えー、だってアフロディーテはたくさんつまみ食いしてたよ。」


「痴女女神を引き合いに出すな!あいつは例外だ!」


「まあ、いいや。夜伽は諦めるとして、翡翠に差し飲みを突き合ってもらって、溜まりにたまった不満を吐き出してもらう。ゲロになっても介抱してやるぞ(翡翠が)。」


「そんな過酷なミッションを....」


「翡翠の励ましできっと心が澄んで、アナザー・ジャパンでも有用な男として信長に仕え、その才能を認めてもらえるだろう。」


「まあ、たしかに天下統一したあとは武闘派武将はもう用済みで有能な官吏が必要だからな。」


「だろう?だから励ましてあげたいの。女神、とっても励ましてあげたいの。」


「うううう、何とも気色悪い。良いだろう、やってみるか。」







「なんか嫌な役目を仰せつかってしまいました。救出ではなくて励ます?やったことがないので皆目見当が付きません。」


「おい、巫女さん、どこの神社の巫女さんだい?」通りがかりの行商人が声をかけた。


「私は全国津々浦々を回る流れ巫女でございます。」


「そりゃご苦労なこった。で、どこに行くんだ?」


「大津へ行ってみようかと。琵琶湖のほとりに坂本城というお城がありますよね?」


「ああ、明智光秀様のお城だな。立派な殿様だ。」


「領民に愛されているのですか?」


「善政を敷いているからな。」


「ぜひ会ってお話を伺いたい。」


「お堅いお人柄だから、女の色香に惑うことはなかろう。」


「私は巫女ですよ。色香などと...」


「いやあ、すまねえ、あんまり別嬪さんだったからよ。」



 翡翠は潜入方法を考えた。正面から巫女だと名乗っても入れてもらえそうもない。白拍子に変装しても、女の色香は有効ではない。となると...やはり善意の第三者作戦。分身を犠牲にして突破しよう。翡翠は分身壱をくノ一姿で召喚した。


挿絵(By みてみん)


「ミナルナさんたちの衣装イメージがあったので、なかなかのできに仕上がりました。それでは分身壱、坂本城に潜入して攪乱工作をしたあと、城門付近で私に討たれてください。確保される前に自爆して爆散。残骸が残らないようにすぐさま収束します。」


「了解しました。」



「曲者だ!出会え、出会え!」


「ふふ、そのような立ち回りでは。」


 分身壱は煙玉を投げた。


「刃物を振り回すと危険ですよ。」


 分身壱は忍具、鋼の蜘蛛糸を投げ、侍たちの刀を絡め取った。


「鉄砲隊、前へ!」


「火縄銃ですか、ふふふ、全部ピースメーカーで弾き飛ばしてあげましょう。」


挿絵(By みてみん)


 銃器の製造年が300年も違うので、鉄砲隊の火縄銃は簡単に破壊されて吹き飛んだ。


「分身壱、状況はどうですか?オーバー。」


「攪乱に成功しました。城門まで退却します。オーバー。」


「OK、私は城門で待ち受け、あなたを討ちます。アウト。」



「出でよ、サラマンダー&シルフェ!炎を風で増力し敵を燃やせ!」


 攻撃が翡翠分身壱に当たると同時に分身は自爆し、翡翠はすぐさま収束した。



「おお、なんと見事な!」


 不思議そうな、しかし称賛を隠さぬ顔で、侍たちが翡翠の周りに集まってきた。


「曲者が逃亡しようとしていたので討伐いたしました。出過ぎた真似をして申し訳ありません。」


「いや、とんでもない。こちらとしてはふがいないばかりですが、あやうく取り逃がすところでござった。」


「私は流れ巫女で、神託を届けるため全国を行脚しております。」


「神託とは?」


「神々のお言葉です。しばしばそれは預言になります。」


「おお、しばしお待ち願えるか?殿にこのことを報告してきますゆえ。」



 侍が去ったので、翡翠は式神を城内に放った。城内の地図情報は潜入において必須だ。数分後に戻ってきた式神から翡翠は城内情報を得た。脱出劇につながることはないはずだが、危機管理は重要だ。



「お待たせいたした。殿が面会を求めておられる。ささ、城内へ。」



 いよいよ激励対象の明智光秀と対面だ。激励...しかし何をすれば?侍たちに促されるまま、翡翠は城主が待つ奥の間に通された。


「面をあげい。まず名を名乗られよ。そして神託について説明してもらおう。」


「は、私は御巫翡翠。代々この国の魔を祓ってきた家系の末裔です。神託ですが、八百万の神は民草の未来を案じてさまざまなお言葉を発せられます。私たち巫女は、それを津々浦々の民に伝えるのが役目なのでございます。」


「余の未来もわかるのか?」


「はっきりとではありませんが薄々と。と申しますのも、未来はそれぞれの人々が自らの力で切り開くもの。その行動如何で未来も大きく変化いたします。」


「では、その薄々と見える未来は何だ?」


「明智様は天下人にはなりません。しかし、信長様の左腕としてこの国をまとめる重要な役目を果たすことになりましょう。」


「左腕?右腕ではないのか?」


「右腕は前面に出て目立つ存在。方や左腕は、それなしでは信長様も右腕も活躍できない非常に重要な役回りでございます。」


「ふむ、言い得て妙かも知れぬ。余は目立たぬからな。」


「まもなく信長様は天下をお取りになるでしょう。天下太平になった暁には、武闘に優れた武将の出番はもうありません。重要なのは支配の構造を構築し、国の安定化を成し遂げる人材です。そして、それこそが光秀様の強みではないでしょうか。」


「なるほどな。でも今、秀吉が派手に活躍して、殿も秀吉ばかりを頼りにしておる。余には笑顔さえ見せたことがない。」


「なるほど、そういう鬱憤は溜めておいてはなりません。私が溜めた鬱憤をすべて吐き出させてしんぜましょう。差し飲みです。」


「何?差し飲みとな?」


「一対一で酒を酌み交わすことです。その中で私は殿を...励まします!」


「わかった。ちょうど退屈していたところじゃ。よし、酒とつまみを持てい!」



挿絵(By みてみん)


 小一時間経って、光秀も結構回ってきたようだ。もう殿様口調ではない。


「だから翡翠よ、あのサルがな、調子良いんだわ。信長様のペットじゃな。クソ腹立たしい。」


「でもー、あの人そのうち信長様に怒られますよ。」


「本当か?」


「はい。天下統一してやることがなくなったものだから、朝鮮に出兵しようって進言したら、このうつけ者ってね。はりせんでしばかれると良いですね。」


「はっはっは、それは愉快。天下統一して朝鮮出兵など愚策中の愚策。まずは国内をしっかりまとめ上げ、スペインの来襲に備えなければならん。」


「ええ、信長様もそうお考えです。詳しくは『織田家のアナザー・ジャパン』をご一読ください。ここに複写したものを持参いたしました。」


「ずいぶんと長大であるな。」


「天下統一後400年の歴史ですからね。」


「余も出てくるのか?」


「いえ、それが出てこないのです。比叡山焼き討ちも起こりませんでしたから。」


「そうであったか。あなざーじゃぱんでも余は目立たぬのだなあ。」


「まあそう落ち込まずに、ささ、もう一献。そうだ、異世界の白拍子、呼べますよ。」


「何と!異世界じゃと?」


「はい、ちょっとお待ちを。」


 翡翠は席を立ち、廊下に出て女神通信を開いた。


「どうした、翡翠?私に登場して欲しいのか?」


「いえ、違います。これから座標を送るので、ステージ衣装のJK隊と伴奏音源を送ってください。」


「信長様、手配が済みました。ぜひお楽しみください。きっと元気マシマシになること請け合いですよ。」


挿絵(By みてみん)


「みなさん、こんにちは!」


「亜依です。」


「霧江です。」


「菫玲です。」


「天華です。」


「私たち、JK隊です!楽しんでいってくださーい!」



「おお、これは気持ちいい。吸い込まれて愛撫されているようじゃ。」


「それで良いんですよ、光秀様。身体と心を預けて思い切り楽しんでください。アイドルはそれが悦びなのです。」


 翡翠は状況を見定めて席を立ち、廊下で女神回線を開いた。


「どうした、翡翠。ようやく私の出番か?」


「いえ、最後の一押しに、水商売経験が最も長いエラさんを派遣してください。ドンペリとシャンパングラスも忘れずに。」



「光秀様、フランスの由緒正しい酒とベテランホステスを手配しました。ご堪能ください。」



挿絵(By みてみん)


「あら、光秀ちゃん、乾杯しましょ!ね、ちょっとだけ、ちょっとだけ吸って良い?」


「なんだ、かまわんぞ。」


「うふふ、怨念がたっぷり詰まった濃厚な精気ね。薄くな~れ、薄くな~れ!」


「あ、なんだか気持ちが丸くなってきた。エラちゃん、抱っこしてもらっても良いかな?」


「うふふ、良いわよ♡」




いろいろ懐かしい人々が出てきました。光秀も精気とともに怨念も消えてめでたしめでたしですね。さて、ぼくは明日から伊豆にダイビングに出かけるので2日ほど更新はお休みになります。必ずや生きて戻ってきますので、そのときはまたよろしくお願いします。

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