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ヴィクター・フランケンシュタイン、ロボット工学を始めます

そう、有機体はね、腐るし匂うし、ちょっとねえ。やはりメタリックの美学!

「どや?翡翠さん、かっこええやろ?」


「かっこいいけど、とりあえず昼間からビール飲むの止めろ。」


「かっこよすぎて読者がドン引きするほどだ!」


「それって自慢できるのか?」


「いや、できん。なのでビール飲んでる。」


「悲しみのヤケ酒か。典型的な敗者の姿だ。おまえに似合ってる。」


「こ、これから挽回するんだ!」


「ふ、またディズニーっぽい星空のデートでもぶっ込むか?」


「いや、それはさすがに....そもそもデートさせる2人がいないし。」


「じゃあ、チャンバラ。」


「それも無理。戦闘ロボットが出てこない。」


「出せば良かろう。」


「え~!無理だよお。現代のマンガやアニメから参戦させると著作権に引っかかるし。」


「創作すれば良かろう。」


「今の流れで入れる余地ないよ。」


「仕方がない。私が一肌脱ごう!」


挿絵(By みてみん)


「どうだ?これで読者の気持ちを鷲掴みよ!」


「あのー、女神様、なんですか、そのとってつけたような戦闘シーンは?」


「読者が大好き戦闘シーンじゃ。今回は私が特別出演、黒いアンドロイドと一騎打ち。どうじゃ、かっこいいだろう?」


「黒いアンドロイドはサイバーSFでたしかにかっこいい。女神はちょっとね、角が付いているのにラムちゃんみたいにかわいくないし、小ジワがあるような顔してるし。」


「な、なんだと!貴様、言わせておけば!角なんか付いておらん、これはティアラだ。」


「悪い!かわいくないは許されるとしても、小ジワがあるような顔はマジ悪かった。ラックス・スーパーリッチっぽい、輝けるアラフォー感、美容液無限投下で、そう、かかってこい、ダメージ!」


「...」(口あんぐり)


「はい、マシュマロ、ポン!怒るとお肌にダメージが来るから甘味で笑顔!」





 翡翠たちはインゴルシュタットに戻った。


「ジャディー、ありがとう、いろいろ考えさせられたよ。」


「当初の計画を変更しますか?」


「ああ、まず死体から作るのは止める。今回の探訪で有機物と無機物の根本的な違いを理解した。腐敗を生成の過程に組み込むのはいけない。パラケルススのホムンクルスはその典型だ。あんなものに手を出してはいけない。ゲーテの結晶化、これには心が引かれるが、原理が全く想像できない。」


「ゲーテ自然学は独特な体系をなしていますからね。とりあえず結晶化は無機物における形成概念です。」


「機械人形、あのオリンピアはあきらかに未完成だが、機械人形をもっと開発して進化させられれば、私が理想とする被造物が作れるかも知れない。」


「はい、それはとても良い着眼点です。有機物ベースですと、どうしても腐敗と臭気が付いてきます。人間にとって不快で嫌悪を喚起するものです。」


「できれば表面が金属ではなくて人間のような皮膚であって欲しい。」


「不可能ではありませんね。呼気と体温も付与することができるでしょう。」


「私の現在の研究状況では全く届きそうもない。」


「まず研究室の体制を一変しなければなりません。死体などの有機物をすべて廃棄して、機器も新たに揃えなければなりません。フランケンシュタイン・ロボティックスラボ、それが新しい研究室の名前になるでしょう。」


「研究は何から手を付けるべきだろう?」


「代数幾何学の物理学への応用、材料工学、電気工学、医療工学、とくに義肢工学、やるべきことはたくさんあります。これまで有機物研究に傾注してきた方向性を180度転換しなければなりません。有機形成の分野で下等哺乳類の生成まで成し遂げたあなたです。集中して取り組めば、すぐ最先端までたどり着くことが可能でしょう。私はいったんおいとまして、1年後にまた来ます。進捗を楽しみにしていますよ。」


「ジャディー、何から何までホントにありがとう。次に会うときまで、ロボット工学の最先端まで到達してみせるよ。」



 翡翠は女神の元に戻った。


「女神様、どうなさいました?なんだか怒ってらっしゃるみたいですけど。」


「いや、何でもない。それよりヴィクター・フランケンシュタインはどうなった?」


挿絵(By みてみん)


「有機構成の疑似生物製造からロボット工学へのシフト、完了しました。彼は超人的な集中力と解析能力があるので、1年後にはあの時代で最先端のロボット工学者に成長しているでしょう。」


「ロボット工学にはかなりの資金が必要だと思うが、その点は大丈夫なのか?」


「ご実家が素封家ですので問題ないかと。」


「いや、個人の資産では足りないだろう。たぶん三ヶ月後に資金不足に陥っておるはずじゃ。どうにか....そうだ、ヴィクターがいる時代は1790年代じゃな?」


「はい、森の中の家でアラビア娘にフランス語を教えるのを怪物が覗いている記述があって、そのとき使った書物がコンスタン・ド・ヴォルネーの『諸帝国の盛衰』、出版年が1791年ですから、1790年代で間違いありません。」


「バイエルン王国がフランス革命を眺めながら現実路線を模索しているころじゃ。政治思想的には保守だが、産業および軍事の強化のために積極的に啓蒙思想を受け入れているはず。よし、ミュンヘンに赴いてアカデミーにヴィクターへの資金援助を要請するのじゃ。ロボット工学は富国強兵策にとって要となる技術、必ずや色よい返事が聞けるじゃろう。」


「あのお、女神様、1790年代はまだ選帝侯国で、王国昇格は1806年です。王立アカデミーはまだ設立されていません。」


「そうであったか。ならば選帝侯直々に要請するしかないな。頼んだぞ。」


「さすがに無理です、女神様。選帝侯カール・テオドールは無能な領主、継承者のマクシミリアン4世ならともかく、科学技術に興味を抱くとは思えません。」


「ならばどうするか...そうじゃ、まだ北アメリカでゴールドラッシュが起こる前じゃ。よし、翡翠、北アメリカ西部へ行って砂金を取ってこい。」


「え...?私がザルで砂金を掬うのですか?」


「おう、頼んだぞ。」




女神よ、翡翠さんにザルで砂金を掬えって...あまりにも酷い絵面なので...ここで強制終了です。

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