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スパイ翡翠、敦賀で情報収集――弁慶はしばらく追いつけない

敦賀は都に近い、そして琵琶湖にも近い。敦賀の魚を都へ運ぶ道は鯖街道ですね。


「おい、青水、前回は冒頭の会話なしに話が始まったぞ。」


「うん、何も解説要素もないし、それに早く狭霧を出したかった。」


「おまえ、12世紀だからってロリ逆不同意性交、あー、もう概念がこんがらがって舌を噛みそうだ!」


「良いんだよ、進化論的に正しい。強い雄の精子を得て強い子どもを産もうというのは高等哺乳類に共通する配偶行動だ。狭霧は社会規範とは別のルールで生きている。素直で清々しい。」


「まあ、読んでいて不思議と不快感は感じなかったのは確かだが。」


「結婚の意思はあったんだ。作中でも“夫婦めおとになろう”と言ってる。ただし、社会規範に縛られていないので、弁慶の意思を尊重した。潔い女だ。」


「潔い女でいられるだけの実力を確信しておるからな。」


「そういうことだ。そういう意味で新時代でも生きていける。」


「義経たちはどんどん南下してどこまで行くんだ?まさか対馬を経て朝鮮半島へ渡って、ラノベにありがちなヒャッホーをさせようというのではなかろうな?」


「ふふふ、それはこれからのお楽しみさ。たしかにこの時期の高麗は勃興した金との抗争が激化していたので軍務の需要は高かったが。」


「静御前もご懐妊だし、とっとと陸地に上がらないといろいろ大変なことになるぞ。」


「臨月までまだ7~8ヶ月ある。そう焦るな。」


「おまえは男だからそのあたりがいい加減だ。」


「女神は女なのか?」


「ぐぬぬ、私は女であるより前に神だ。」


「ですよねー。妊娠しそうにないもの。」


「おい、今のはあからさまなセクハラだぞ。」


「神に性はないのでセクハラも成立しませーん。」


「ぐぬぬ...貴様...」


「はい勝利!」青水は勝利のビールを開けた。





 義経たちを乗せた船は敦賀に寄港した。現在の情勢について情報収集するためである。ただし、鎧武者がうろつくのはあまりにも危険なので、情報収集は翡翠に任せ、身重の静と侍衆は敦賀湾の東側にそびえる天筒山の麓にある、修験者や山伏が暮らす隠れ里の湯治場に潜伏することにした。


 

一行を離れた翡翠は人目に付かない山奥で、この先の路銀や情報収集のための賄賂に使う銀を大気中から取り出した。


四七ししちの原子、疾く集まりて、我が身の周りに千の珠をなせ!急々如律令!」


翡翠の周りに集まったキラキラ輝く銀の珠を袋に詰め、翡翠はまず気比神宮へ向かった。気比神宮は越前国最大の神社で九条家の本家領であり、朝廷の動向に詳しい荘官がいる。九条家を通じて朝廷の動向を探れば正確な情報が得られる。さて、どう接近すれば荘官は口を滑らせるだろう?巫女の姿で接近しても、朝廷の話題に触れるだろうか。いや、警戒されるに違いない。神社で巫女姿。あまりにも目立たず、逆に間者であると疑われる。ここは色仕掛けも辞さないということで、翡翠は白拍子として接近することにした。


「九条家代官の斎藤実綱様、白拍子の翡翠と申します。舞を捧げたいのですが、お許しいただけますでしょうか?」


「おお、何と美しい白拍子だ。ささ、こちらへ。舞の席の準備をさせよう。」



「素晴らしい舞と歌であった。天晴れだ!」


「ささ、どうぞ一献。」


挿絵(By みてみん)


 実綱はすっかり上機嫌になった。翡翠の問いに何の疑いも抱かずペラペラと答え、後白河法皇が、頼朝の圧に負けて院宣を取り消し、逆に義経討伐の院宣を出したことが判明した。金子をちらつかせながら翡翠を引き止めようとする実綱を笑顔でいなして翡翠は外へ出た。


「重要な情報を得ました。次は鎌倉の情報です。港の役人に聞きましょう。役人に白拍子はいささか不釣り合いですね。次は賄賂で買収するので、商人姿が一番です。」



「お役人さん、お役目ご苦労様。」


「おう、別嬪さん、何か用事か?」


「毎日の検分、何かとご苦労が多いのでしょう?はい、これをお納めください。」


挿絵(By みてみん)


「な、何だ?賄賂か?」


「そんなたいしたもんじゃありませんよ。鎌倉に荷を送ったらけっこう儲かりましてね、お裾分けです。」


「ほう、おまえさんのところもかい。鎌倉はどっさり買ってくれるからなあ。」


「そんなに多いのですか、鎌倉行きの荷物?」


「おう、荷物だけじゃないぞ。あまり大きい声じゃ言えないが、侍衆もたくさん鎌倉へ集まっているらしい。戦でも始めるのかね。ついこの間までは平家の顔色をうかがっていた連中も、今はこぞって鎌倉様だ。」


「そうですか。良いお話を聞かせていただきました。もっと儲けられそうです。はい、これは情報料です。また儲かったらお話ししましょうね。」


「こりゃすまないな。」


「あ、そうそう、お役人さん、弁慶という身体の大きな僧兵をお見かけしたら、探してる人は西国の平戸にいるとお伝えください。」




 翡翠は変装を解き、義経たちが潜む隠れ里の湯治場へ戻った。


「義経様、朝廷は院宣を義経様討伐に変更しました。鎌倉では着々と戦の準備を進めています。ぐずぐずはしていられません。すぐさま出発しましょう。」



 酒田で義経一行が大型の船舶を手に入れ、南方へ旅立ったと聞いた弁慶は、そのころ船を乗り継いで敦賀を目指していた。


一行を乗せた船はいよいよ本州を離れて九州へ.さあ、平戸では何が待っているのでしょう?

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