翡翠さん、ヴァイキングと浦島太助と桃太郎たちを連れて異世界へ行く。
悪ガキだらけの昔話の男子たち、翡翠さんは女神さまに頼んで異世界に転移させます。
「悪ガキばかりの日本昔話。おまえ悪意全開だな、青水。」
「浦島太助は自分で造形しておきながら笑ってしまったよ。15歳で常時ナンパモードって、いったいどんな人間になるんだ?」
「ドン・ジョヴァンニ...になるには喧嘩が弱いな。」
「このままではどう転んでも、短い生涯を終えた、になりそう。」
「だな。実力もないのに女という資源を食い散らかそうとすれば必然的にそうなる。」
「ホストという手もないでもないが、ホストだって喧嘩の強さは必要だろう。」
「うん、そのあたりは全く知識がないが、夜の繁華街での仕事だし、女がらみで厄介なことに巻き込まれるかもしれないし。」
「浦島太助よ、早く更生するんだ。父ちゃんが嘆いているぞ。」
「翡翠はどうやって調律するんだろうな?」
「楽しみだな。」
翡翠はその日のうちに竜宮城へ出向いた。
「こんにちは、乙姫さん。きょうヴァイキングさんは来てますか?」
「あら翡翠さん、来てるわよ、ヴァイキングのエリクソンさん。翡翠さんが会ったエリックさんの息子さんよ。」
「こんにちは、初めまして。御巫翡翠です。」
「おお、美しい。エリクソンと申します。どうぞよろしく。」
「ニットヴィンランドの様子はどうですか?」
「はい、交易も安定していますし、徐々に人口も増えています。手狭になったらまだまだアリューシャン諸島がありますから入植できます。」
「そう、それは良かった。ところで、ダンジョンにモンスターを狩りに行きませんか?」
「え、何それ?面白そう。」
「女神さまにお願いすればダンジョンに連れて行ってもらえるのです。ニットヴィンランドへ行って冒険者を募集しましょう。そうですね、4人いれば良いかな。」
「おっし、わかった。すぐ行こう。」
「はい、亀に乗って出発しましょう。」
「翡翠さん、竜宮城を出ると俺たちの言葉がわかるかな?」
「ノルド語はわかりませんが、英語とドイツ語ができるので、そこから判断していただけますか?」
「おお、それならなんとなくわかるぞ。」
「翡翠さん、着いたぞ。ここが俺たちのニットヴィンランドだ。」
「それではさっそく募集しましょう。求む、冒険者。」
「いっぱい来たぞ。みんな冒険に飢えているんだ。この平和な島では争いがないからな。」
「募集定員は4名です。役割はタンク、アタッカー、シューター、ヒーラー。タンクというのは前衛で盾を構えて敵からの攻撃を防ぐ役目。打たれ強い人向けです。アタッカーは文字通り攻撃役。シューターは背後から矢を放ちます。一撃必殺の弓矢使いですね。そしてヒーラーは仲間の怪我を治療する役目です。」
「身体が一番でかいのはエリクソンだからタンクが良いだろう。」
「良し、俺がみんなを守る!」
「アタッカーは俺だな。武器はこの斧だ。」精悍な青年が手を挙げた。
「シューターは私ね。百発百中よ。」キリっとした美女が手を挙げた。
「なら私がヒーラーを務めるわ。いつも村の診療所で包帯を巻いてるから。」優しそうな女性が手を挙げた。
「ではみなさん、武装を調えたら村の広場に集まってください。異世界へ送ります。」
「らじゃー!」
みんなが武装して集まったところで翡翠は女神回線を開いた。
「女神様、ヴァイキングのパーティーが揃いました。転移をお願いします。」
「わかった。直接ダンジョンへ送っても良いか?」
「いいえ今夜は宿屋で一泊してもらって、明日攻略を開始します。」
「OK、ならば宿屋へ送ってやろう。準備は良いか?」
「はい、女神様。」
一行とともに異世界へ帰還した翡翠は、彼らを宿屋へ案内し、ダンジョンに向かった。
「こんにちは。」
「お、翡翠ちゃんじゃないか。久しぶりだな。17年ぶりだったか。あのときは真っ赤な顔をして...」
「言わないでくださいっ!」
「はっはっは、ところで今日は何の用だい?」
「明日初心者パーティーが2組来ます。ゴブリンおよびホブゴブリン討伐のクエストはありますか?」
「おお、もちろんさ。あれは常時受け付けている。初心者はここからってな。」
「では翡翠の友人たちAとBで登録をお願いします。」
「オッケー。がんばってな。」
翌日、翡翠は昔話村の広場へ行って、桃太郎一行と浦島太助を待った。桃太郎一行は簡素な鎧で守備を固めていた。一方、浦島太助は鼻の穴を膨らませて興奮していた。
「集まりましたね。それでは目を閉じてください。転移の瞬間は激しい光に包まれますので目がやられてしまいます。」準備は良いですか?それでは、女神様、お願いします。」
まばゆい光が輝いて一行は異世界へ転移した。
「さあ、まず浦島さん、話は通してありますので、あのきれいなお店に入ってください。あなたの望むものが手に入りますよ。」
「マジっすか?俺、もう破裂しそうっす!。行ってくるっす。」
「あら、いらっしゃい、坊や。さ、奥へどうぞ。まだお子様だからお酒はダメね。」
「わ、ピチピチして美味しそう!」
「メロ、はしたないわよ。チョロチョロ舌を出さないの!」
「ふふっ、だって若い子は久しぶりなんだもん。」
「そうね、若い子、いやこれはもう若いを通り越して少年ね。」
「でしょ?私にピッタリ。」
「あら、こういう子にはお姉さんが教えてあげるものなのよ。」
「どうせ二人がかりになるんだからどうでも良いか!」
「そうね、楽しみましょう。さあ、座ってね。」
「お姉さんたち本当にきれいっすね?」
「ふふ、赤くなっちゃってカワイイ。」
「みなぎりすぎて爆発しそうね。少し吸って楽にしてあげようか?」
「え?吸ってもらえるんんですか?」
「ちょっと、何で服を脱ごうとしているの?そんなことしなくても大丈夫なのよ。」
「そうそう、まかせてね。はい、アブソ~ブ!」
「ヴァイタル・アブソーブ、手加減!」
「うわ、急に力が抜けて萎えて行く。」
「うわあ、若い精気って濃いわね。」
「ええ、濃厚すぎてむせそう。」
「あまり吸いすぎると廃人になっちゃうわよ。」
「そうね、適当なところで切り上げて客室のベッドに放り込んでおきましょう。」
翡翠は桃太郎一行を連れてダンジョンに入った。受付で「翡翠の友人たちA」と記入し、洞窟の中へ入る。
「これから戦闘になります。たぶん怪我をすると思うのでポーションを3本ずつ渡しておきます。傷ついたらこれを飲んでください。回復します。この洞窟はゴブリンという小さな鬼が出ます。小さいと言っても魔物で数が多いので油断しないでください。そして、この洞窟を抜けるとホブゴブリンという上位種が出ます。敵が強くなるので気を付けてください。私はここまでです。頑張ってください。」
桃太郎一行を残して翡翠は受付に戻った。受付にはヴァイキングの一行が到着して待っていた。
「お待たせしました。翡翠の友人たちBが到着したので、前のパーティーとかち合わないように5分待ってから入ります。ヒーラーの方にはこのポーションを10本渡しておきます。状況をよく見て使ってください。リソースの管理は大事です。」
桃太郎一行の前に10体のゴブリンが現れた。桃太郎たちは抜刀してこれを迎え撃った。しかし連携が取れていない。全員が太刀を振り回すので狭いダンジョン内で効率的に敵をせん滅できない。ゴブリンたちは前衛がこん棒やナイフ、公営が投石で攻撃してきた。攻撃自体は弱かったが手数が多い。少しづつ傷がついて血が滴った。そして何よりも初めての戦闘なので痛みへの耐性がない。傷がつくと戦意が失われ浮足立つ。
「猿田、後退するな!前へ出ろ!犬田、ひとりで敵に囲まれるな!雉田!おまえ、今逃げようとしただろ!」
小さな負傷のたびにポーションを飲むので、ひとり3本のポーションはあっという間に尽きた。
「おい、敵はあと4体だ。タイマンで全部倒そう!」
戦闘が終わって、桃太郎たちはかなり疲弊した。HPは半分以下だ。このまま奥に進む気にはなれない。ゴブリンより上位のホブゴブリンと遭遇したら死んでしまう。
「撤退しよう!」
「おう、戦略的後退だ!」
逃げ帰る桃太郎一行とヴァイキングのパーティーが途中で出会った。ヴァイキングは翡翠に話を聞いていたので、兜を脱いでお辞儀した。桃太郎たちも気まずそうにお辞儀した。ヴァイキングたちはにこやかに肩をたたき奮闘をたたえた。奥から翡翠がやってきた。
「あら、ずいぶんとやられたようですね。もう戦闘は無理でしょう。私と一緒にこの人たちの戦いを見学しませんか?」
「わかった。でも後ろから見てるだけだけだからな。」
「もちろんですよ。これ以上戦ったら死んでしまいます。とりあえず軽く治癒魔法をかけておきましょう。」
ヴァイキングたちの戦闘が始まった。役割が決まっていて連携が取れているので殲滅速度が速い。あっという間に20体のゴブリンを屠った。桃太郎たちはその圧倒的な差を思い知らされた。
「良し、次はホブゴブリンだ。気合を入れていこう!」エリクソンが吠えた。
「おう!」
ホブゴブリン戦になってもヴァイキングパーティーは安定していた。タンクのエリクソンがしっかり守っているので被弾はほとんどない。ヒーラーは手持無沙汰そうだった。アタッカーの攻撃は良く敵を削っていたが、何よりも秀逸だったのはシューターの腕前だった。すべて急所に命中してホブゴブリンは即死である。アタッカーとシューターは戦闘中に笑顔で目配せしあっている。どうやら付き合っているカップルのようだ。
「翡翠さん、ミッションが終わりました。」
「はい、素材を回収しながら帰りましょう。何か珍しいものが落ちているといいですね。」
「お、なんかきれいな光る石がある。」
「あ、それほしい!」シューターの美女が嬉しそうに叫んだ。
「俺がこれでアクセサリーを作ってやるよ。」
「ホント?うれしい、ダーリン!」
ダンジョンで熱烈キス。桃太郎たちはそっと目を伏せた。
「翡翠さん、この人たちは歴戦の冒険者なんだろ?俺たちとは格が違いすぎる。」
「いいえ、普通の人たちですよ。狩りをして、魚を捕って、鉱石を掘って、それから船を操って遠い国へ行って交易をしている人々です。ヴァイキングといいます。」
「戦士ではなかったのか...」
「あなたたちも戦士になろうなんて考えは捨てて、家業を手伝い、平穏な日常を生きることです。たしなみとして剣術の稽古をするのは良いでしょう。でも、それを殺し合いの道具にするのは良くない。そこに正義はありません。」
「わかったよ、翡翠さん。俺、父ちゃんと母ちゃんの手伝いをするよ。年を取ってからできた子どもだから、もう爺さん婆さんだもんな。」
「はい、ぜひそうしてあげてください。それじゃあ元の世界に帰りましょうか。」
「おーい、置いていかないでくれえ!」
ダンジョンから出ると浦島太助が立っていた。髪の毛に白髪が混じっている。
「女は怖い、女は怖いんだぁああ。」
浦島太助はその場に崩れ落ちて号泣した。
みんな痛い目に合って更生の道を進みそうで良かったですね。ヴァイキングの村はまた人口が増えそうです。エリクソンさんも頑張って。




